未来の約束、その後に
その後の二人編最終話『未来の約束』直後のお話です。
「よし、これで大丈夫」
「ありがとう」
今度こそ素直にお礼を言って、胸元で輝く幸運と約束の印を眺める。
正直明らかなブランドものだったし、ものすごく高いんだろうなっていうのは分かるんだけど。流石に値段を聞く気にはならなかった。
と、いうか。
これに込められているのは、きっと値段よりもずっと重くて大切なもの。
だから今回だけは、ちょっとじゃなく高いものでも素直に受け取っておくことにした。
「にしても、そっか…四つ葉のクローバーの意味って、幸運とか愛情とかだけじゃなかったんだね」
「クローバーは特にかもね。葉っぱの枚数で意味が変わったりしちゃうから」
「そうなんだねー。すごいね愛ちゃん。よく知ってたね?」
「前に気になったから調べてみたことがあったの。花じゃないけど意味あるのかなぁって思って」
「確かにクローバーは花じゃなくて葉っぱの方を言うことが多いもんね。花はシロツメクサだし」
なるほどなーなんて、一人納得してる聖也くんに見えないように、少しだけ苦笑を零す。
本当はね?初恋の人に贈るのにも向いてるらしいよ?なんて。言葉にはできないけど。実は復讐なんていう意味さえなければ、私もしおりか何かを渡そうと思ってたし。
そう思いながらつけてもらったペンダントトップを眺めていて、ふと気づく。
「あれ…?」
これ、よく見るとチェーンの形もなんか普通と違う…?
小さくて気づかなかったけど、もしかしてこれって……
「ハート…?」
「あ、うん、そう。ペンダントトップと同じピンクゴールドの、小さいハートチェーン」
「…………かわいい……」
遠目からだと分からないくらいのそれは、実際につけているからこそ分かるもので。でもだからこそ、私が付けていてもきっと違和感がない。
「こういう可愛いもの、愛ちゃん好きでしょ?」
「うん、好き」
「だと思った。それにこれならトップを変えるだけで使いまわせるし。いいかなって」
純粋に私が喜ぶだろうと思って選んでくれたんだと、何の下心も打算もない笑顔を向けられているからこそわかる。
あぁ、うん、もう…ホント……
「聖也くんのそういうとこ、ホント大好きっ…!!」
「わっ…」
私から抱き着いても、何の苦もなく支えて抱きしめ返してくれる。
こんな日常が、これからもずっと続いていくんだな、なんて思ったら。
「私、聖也くんと一緒にいるだけで幸せだよ?」
素直に言葉が口からするりと出てきて。
けどもしかしたら、言うべきは今じゃなかったのかもしれない。
だって。
「……ねぇ、愛ちゃん?俺も今、幸せすぎるくらいなんだけどね?」
「ん…?」
「でもちょっと…愛ちゃんが可愛すぎて我慢できないかも」
「ふ、ぇ…!?」
ようやくちゃんと喋れるようになって、頭も体も普段通り元通りだって、思ってたのに。
「ごめんね?」
「なっ…ぁんむぅっ…!!」
本日二回目。
今度は押し倒されたりはしなかったけれど、結局聖也くんが帰る直前まで、私はその腕の中から解放されることはなかった。
本当は最後に入れようかとも思ったのですが、あのほうが"この先"を連想させられるいい終わり方かなと思ったので、番外編としてUPすることにしました。