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新たな金策手段④

 ロナさんは畑の方へと移動しようとしていた。僕もついて行こう。おそらくヒルデさんの事で聞きたいことがあるのだろう。


「わかりました。それじゃあ、凛姉はここで話を聞いていてね」

「え、あ……。うん」


 僕は凛姉の返事を聞く前に、ロナさんの元へと駆けて行く。宿の時とは違い、今回は溝田以外にも周りには、たくさんの知り合いがいる。凛姉には溝田に、徐々に心を開いてもらおう。今がその第一歩だ。


 といっても、ここから畑まではそんなに距離はない。少し大きな声で話していたら、内容までは理解できないだろうが、何か喋っているのに気が付くことができるくらいの距離だ。凛姉の様子を観察しながら、いつでも助け舟を出せるようにしておこう。もちろん溝田が困っていたら溝田の方にも出す予定だ。


 けれどこちらも、もしかしたらそんな余裕はないかもしれない。


 ヒルデさんと粉雪さんは仲直りできたようだ。それについては何も言われないだろう。というより、それについては褒められるだろう。しかし、ロナさんが僕に望んでいたことを、僕は達成できたのか心配だ。


「今行きます」

 だが、くよくよしてもしょうがない。一度は開き直って、間違っていたらロナさんが悪い、と思ったのだ。今さら考えを改めてもしょうがない。

 僕は腹を括って、ロナさんの元へと向かった。だがそれは取り越し苦労だった。


「ツヨシさん。あの果実を見たことはありますか?」

 ロナさんは真剣な表情で聞いてくる。


「いえ、似た物なら見たことがありますが……。それがどうしました?」

 そんなことを聞くだけなら、皆から離れなくても良いのにと僕は思った。けれどロナさんの真剣な顔つきを見て、まだ質問は続くのだろうと、気を引き締めなおした。

 だが、2つ目の質問も似たようなものだった。


「その似た物を食べたことは、ありますか?」

「あるにはありますが、色合いが似ている物は、それを単品では食べたことはないです。見た目と味が似てそうな物は、単品でも食べますが」


 色合いが似ているカボスやスダチは、サンマに搾って食べはするが、単品をかじったりはしない。それに産地の県民は刺身にかけたりもするらしいが、僕は醤油とワサビだけだ。

 

「それを育てたことは?」

「ないです」

「育て方は?」

「知らないです」

 育て方以前に、旬の季節も知らない。多分、ミカンは12月だろうが、カボスやスダチはいつになるのだろうか。サンマが秋だから10月から11月のような気がする。


「多分、ツヨシさんが想像している色合いが似ている物は、カボスやスダチだと思いますが、それの酸度と糖度を答えられますか?」

「わかりません。糖度はマイナスにでもなるんですか?」

 酸性とアルカリ性の関係みたいに、反対の立ち位置に……。ロナさんの顔色からして違ったみたいだ。少しがっかりしている。


「光合成や酸性雨は?」

「それならわかります」

 やっと答えられる質問がきてくれた。だから僕は食い気味に答えた。


「だったら、何とかなりますかね」

 僕の返事にロナさんは1人納得している。そして僕に提案してきた。


「1度、魔法を使ってみてくれませんか?」

 そう言ってロナさんは、腰につけていた聖水のビンを僕に渡してくる。


「あの、飲む前に説明をお願いできますか」

 別に魔法を使うのは構わない。けれど聖水を飲むのは出来る限り避けたい。百歩譲って、理由を聞いてから飲みたい。


「土壌の改良をお願いしようと思いまして……」

「……。ちょっと無理かもしれません」


 今度も食い気味に、けれどさっきのとは真逆の意味で返事をした。


「やっぱり厳しそうですか……」

 ロナさんが目に見えてしょんぼりする。

「まぁ、試すだけ試しますよ。けど、改良するといっても、どの状態が正常化がわかりません」

 一応、ロナさんの期待に応えようと返事はするが、多分無理だろう。


 改めて、僕がこちらの世界で、転移魔法などの大魔法が使える理由は分かっていない。けれど、魔法の常時展開ができない理由に、おおよそのあたりはついている。それは、魔法に対する理解不足だ。

 だから、土壌の事を何も分かっていない今の僕では、改良はおろか、もっとひどくしてしまうかもしれない。


「お願いします」

 ロナさんは、しょんぼりしたまま、そう言う。だから僕は逆に質問してみることにした。

「あの、なんでそんなにしょんぼりしているんですか?」

「この事業に一枚噛ませてもらえたら、大金が手に入りそうだったので……」


 何の気なしに質問したので、心構えもなしに返事を待っていた。だから彼女の返答に僕は驚いてしまった。 

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