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新たな金策手段③

「それはどういうことですか?」

「少し前まで教会側が量産するのに反発していた。けど一番偉い神父が失脚したから……」


 なんでも、聖水からアルコール成分を無効化するのは神様に対して不敬だ、とその神父と周りの神父は考えていたらしい。

 だから、その果樹が開発された当初は、教会側から生産を中止するよう陳情が来ていたそうだ。


 だが国王は「アルコールに耐性のない人を見捨てるのか」といった表向きの理由を作り、今みたいな飾りの福祉制度を講じ、果実の生産技術を存続しているみたいだ。


「表向きというのは?」

「国王自身はアルコール成分を無効化する効能は二の次に思っている。本当は、シャーパンの味が好みだから、もっと安価で食べたいと考えている」


 僕はその言葉を聞いて、噴き出しそうになった。


「なんだか庶民的な悩みですね」

「そこが国王の良いところ。私的な考えを言わせてもらうと、あの人は国王としてはお世辞にも良いとは言えないけれど、人としては好ましく思っている」


 ズィーさんは、少しにっこりした後、すぐに顔をいつもの無表情な顔に戻した。

 

「これ、どんな味がするの?」

 亜麻猫さんが、話題をシャーパンの話に戻すように味を聞きだした。確かに気になる。緑色をしていたから勝手に、酸っぱく、青臭いイメージをしていたが、もしかしたらミカンのように甘いのだろうか。


「とても甘い。正直、1個千円くらいだったら毎日食べたい。本を読むのには糖分も大事」

 彼女は先程の、にっこり顔よりも、もっと顔を崩してシャーパンの感想を述べた。そして今も、食べた時のことを思い出しているのだろうか、まだ口の端が緩んでいる。


「あんたがそんな顔をするってことは、かなりおいしいのね」

 亜麻猫さんは意外な顔をしながらそう言った。僕もそう思う。ズィーさんは本を読むことしか頭にないと思っていた。だから食べ物の事でこんな顔をするとは思っていなかった。

 それは彼女本人も自覚があるようだ。


「べ、別に、毎日食べたいとは言ったが、無かったら……。特段欲しいとは思……、わない」

 彼女は元々、文を短く切って話すが、今みたいに歯切れは悪くない。

 だから今は、亜麻猫さんに事実を指摘されて動揺しているのだろう。

 亜麻猫さんは、それを気にせず、追撃していく。


「それなら別に、1個1万円くらいでも良いわね。5万円でも買い手はいくらでもいるみたいだし」

 

 僕は亜麻猫さんの悪い癖が出たなと思い、ロナさんと凛姉の方を見た。

 凛姉は、止めるべきか、そのままにしておくべきか悩んでいるようだった。

 そしてロナさんは、何か別のことを考えているようだ。


「それは困る。国王がアルコール成分を無効化する効能を二の次と言ったが、『アルコールに耐性のない人を見捨てたくない』というのは本心。非常時にこの果実は必要。だからもっと安くなるように生産量を増やして、流通を安定させたい」

「ごめんなさい」


 ズィーさんは淡々と、しかし説教をするように亜麻猫さんに向けてそう言った。亜麻猫さんはバツが悪そうに謝っている。


「わかればいい」

 ズィーさんは亜麻猫さんの謝罪をきちんと受け止めたようだ。それを見て凛姉も一安心している。けれどロナさんはまだ、何か考え事をしている。


「それに国王が可哀想。今も1週間に2個しか食べないようにしている。苦手な国王の仕事で疲れた心身を癒す唯一の楽しみ。妃様はすでに亡くなられて、王女様は遅めの反抗期に突入……」

「わ、わかったから、もういいから」


 なんだろう。ズィーさんの意外な一面を知れて嬉しい反面、国王の話は聞きたくなかった。亜麻猫さんも慌てて止めに入っている。

 そして凛姉も話題を逸らす為か、ズィーさんに質問しようとしている。


「その王女様ってどんな方なんですか?」

「ヒルデさんに容姿も性格も似ている」


 その言葉を聞いて、亜麻猫さんが何かを言いかけて止めていた。多分「抜けているのね」と言おうとしたのだろう。失礼だが僕も思ってしまった。だから亜麻猫さんを怒るに怒れない。


「私がどうしたんだ?」

 振り向くとヒルデさんたちがいた。いつの間にか話を終えてこちらに来ていた。ヒルデさんと粉雪さんの顔色を見ても、仲直りできたようだ。


「ちょうど良かったです。粉雪様たちもズィーさんの話を聞いてください」

 凛姉が3人にズィーさんの話を聞くよう促す。けれど凛姉は、彼女たちから隠れるように僕の隣に来た。溝田がいるからだろう。

 だが、凛姉の思惑を邪魔するようにロナさんが僕に声を掛けてきた。


「ちょっとツヨシさん、こっちに来てくれますか?」

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