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新たな金策手段②

 凛姉の言葉に僕は衝撃を受けた。

 酔い止めの果実なんてものがあるのを僕は知らなかった。


 元いた世界では、ウコンエキスが入った飲料や牛乳を飲んでから飲み会に行っても、会の最初の方で僕は吐きそうになっていた。あまりそういったものを頼っても自分には効果が無いのだろうと半ばあきらめていた。


 だからこちらの世界で、そういった効果のあるものを探すことはしていなかった。というより色々なことが短い日数の間で起こりすぎたので、調べる時間が無かった。


 けれど今、酔い止めの果実なるものがあることを知った。ただ詳しく聞いてみよう。もしかしたらウコンとかと一緒で僕には効果が無いかもしれない。そうなるとぬか喜びで終わってしまう。

 僕はズィーさんたちに声を掛ける。


「そんな果実があるんですか?」

「あ、つーくん。よいところに、これ見て」


 凛姉に言われるまでもなく、僕はズィーさんが持っている資料を覗き込んだ。


 資料に載せられていた果実は、おおまかに言うと、多分かんきつ系のものだ。

 色は緑色で表面が少し凸凹、というより少しザラザラしている。それだけだと、カボスやスダチを連想するが、大きさがそれらより大きい。大体、僕の握りこぶしの1.5倍くらいの大きさだ。


 載せられている写真の下に、『成熟果』と書かれているので、ここからさらに成長したり、色合いが変わったりはしないだろう。そもそも、この果実を食べるなり、搾るなりする適期の写真を載せているはずだ。この状態で市場の流通に乗るのだろう。


 まぁ、品種などは、どうでも良い。それよりも、この果実の効能と値段だ。 


「値段は……。え、5万G!? これ1個で!」

 僕は値段を間違えていないかと思い、ズィーさんの方を見る。


 昔、両親の葬儀でお世話になった親戚に、確か1箱32個入りくらいのリンゴを送ったことがある。その時のリンゴの値段が4000~5000円くらいだったはずだ。となると、1個当たり百数十円だ。


 リンゴとかんきつ系では値段が違うと言われるかもしれない。けれどいくらなんでも数百倍違うのは、おかしい。

 

 けれど、この値段であっているみたいだ。


「そう。と言っても、開発されてから、今までの、5年間の市場平均の価格で、実際、質の良い物では10万Gの値がつくこともあった」

「そ、そうですか」


 僕は動揺が隠せないでいる。正直、5万Gの時点で、桁を2つ間違えていると思っていた。それなのにその2倍の値段がつくこともあるらしい。これは効能の方に、大変期待できる。


「して、効能の方は、っと」

 写真の右隣に説明文が書かれている。先ほどの価格も、この説明文の中に記載されている。先に価格の方に目がいったのは、50,000Gと目立つように書かれていたからだ。

 

 僕はその文章を一番上から見直し始めた。

 少し間を置いて、凛姉が僕に話しかけてきた。

「すごいよね。これ」

 凛姉は嬉しそうにそう言う。凛姉の言うとおりだ。


 その果実は、この地方の名前と同じ、シャーパンといって、これを食べれば、写真サイズの果実なら、1時間は、市販の聖水のアルコール分を完全に無効化できるそうだ。もちろん、魔力は無効化されず、魔法も使えるようになる。


 もともとは聖水を受け付けない人向けに開発された品種で、公的な機関でその体質を認められれば、程度にもよるが、1か月に最大30個まで無償で国から支給されるそうだ。


 それを見て僕は疑問に思った。だからズィーさんに資料の該当部分を指で示しながら質問することにした。


「1日1個の計算ですけど、足りるんですか?」

「足りる。そもそも本当に聖水を受け付けないのなら、人を雇って、代わりに魔法を使ってもらう方が安上がり。これは非常時のもの」


 言われてみれば確かにそうだ。1個5万Gもするのだ。人を1人1日雇っても2万Gもいかないだろう。となると、一般人には、ほとんど必要ないような気がする。いや、1人になりたい時もあるだろう。ズィーさんは非常用と言ったが、そういった配慮のもと、1か月に30個と決まっているのだろう。


「1人に1か月150万Gも使っているのね」

 そう切り出したのは亜麻猫さんだ。


 冷静になって考えると、かなりの額だ。税金で補えるのだろうか。


「30個も支給いている所は、今の所ない。それにこの制度を利用する人も少ない。聖水への耐性がない人はかなり珍しい。だから今の価格でも、税金でまわせている。けど正直に言うと、この果樹の価格は高すぎる」

 ズィーさんは無表情に淡々とそう言う。その言葉に凛姉が質問する。


「これだけの値段がするのは、効能面の理由でなく、希少性とかの面で、ですか」

「そう。理由の1つとして、技術面で量産するのが難しいのがあげられる」


 彼女は、ここまでは先程と一緒で、無表情に淡々と説明する。だが……。


「他にも理由が?」

「国が意図的に、量産する態勢を取るような世策を講じてこなかったから」


 凛姉の問いに、ズィーさんは残念そうに答えた。

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