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土地の浄化

「それが一番だと思う。女将さん、依頼金額を……」

「ああ、そうだね。この数値なら……」

 ズィーさんがロナさんの申し出に、一番に反応を示した。もとからそのつもりだったのだろう。淡々と、女将さんに浄化依頼の金額を示すように促している。そして女将さんはズィーさんから渡された資料を見ながら金額を決めようとしていた。


 けれどロナさんはそれを受け取らない気でいるようだ。


「いえ、もともと私たちが受けた依頼のやり残しですので、受け取れません。それにすぐに終わりますし」

 ロナさんは、そう言って女将さんたちの前をそのまま素通りして、ゴブリン退治で穢れた場所へと向かう。

有無を言わせないようだ。


 そしてまた僕の後ろから声が掛かった。

  

「つーくん。ちょっといい?」

 ロナさんに遅れて、凛姉が僕たちの元へとやって来たからだ。なぜ遅れてきたのかは、大体見ていなくてもわかる。

 凛姉の事だ。ヒルデさんが粉雪さんとふたりきりで話をするのは心配だったのだろう。だからその2人に最初はついて行こうとしたと思う。けれど溝田が来たので、こちらに逃げて来たのだろう。


「どうしたの?」

 僕はロナさんの方も気に掛けながら、凛姉に笑顔を向けて、そう聞き返した。


「ゴブリン退治の件なんだけど……」

 その凛姉だが、僕とは対照的に少し困り顔をしている。

 何をそんな困り顔をすることがあるのだろうか。僕の命を心配してくれているのだとは思うが、ワイバーンを相手にするのではなく、ゴブリンを相手にしたのだ。油断しなければ死ぬ危険性は極めて低い。それは僕の実力を見ても分かるだろう。それに、凛姉が自分も仲間に入れて欲しいと言ってきた時に、僕の事を護ると言ってくれた。なので今さら危ないことをするなとは言われても正直困る。


 そんなことを考えていたが、僕の予想は外れた。


「ゴブリンの首が刎ねられた時、どう思った?」

「え、どうって? あ」


 そう言えばあの時、僕は何とも思わなかった。けれどその、人に似た生物を殺すことに何も感じないのは、元いた世界で来世を凛姉と歩むことになる時に、邪魔になると思っていた。

 けれど今は、凛姉に言われるまで頭の中から消え落ちていた。


 とりあえず、もう遅いかもしれないが、凛姉にこんなことを考えているとは思われたくない。取り繕った返答だけでもしておこう。


「可哀想と――。「終わりました」


 ロナさんの声がこちらに聞こえてくる。そう言えば最初、ロナさんを気に掛けながら凛姉と会話をしようと思っていたのに、完全に意識から外れていた。おまけに、亜麻猫さんの事も頭から抜けていた。


「さすがね」

「え、あ、本当ですね」


 だから少し驚いてしまい、亜麻猫さんの独り言に対して、返事をしてしまった。それだけ凛姉の質問は、僕の意識を奪うくらいに衝撃的なものだったのだと実感した。


「凛姉、その話はまた後にしよう」

 僕は、とっさに取り繕った返事をしようとしてしまった。けれどそれは凛姉にとっても、僕にとっても良くないことだと、今になって感じた。1回部屋に帰ってから、皆も交えて相談しよう。それよりも今は浄化の件だ。


「うん……。そうだね」

 凛姉も渋々だが納得してくれたようだ。なので僕らも、先にロナさんの元へ行っている女将さんを追いかけるように向かった。





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