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土壌検査について

 僕たちが始めて受けたゴブリン退治の依頼。その依頼場所の近くの畑が、今回の話であがった畑であった。


 退治の依頼が終わった後、村の人たち数人と、ある程度は地面をならしはした。ゴブリンの死体は粉雪さんたちがどこかへと運んでいった。


 あれから半月が過ぎたが、まだ爆竹を使った後が残っている程度には地面が荒れている。やっぱりもっと違う退治方法があったような気がしないでもない。


「お疲れ様です」

「おや、あんたたちも来たのかい」


 僕は畑の外に1人いる女将さんに声を掛けた。ジーク君とお父さん、それにエクス姉妹は畑近くの今は塞がれている、ゴブリンの巣穴の入り口があった辺りに魔法陣を描いて、何やら調査をしていた。

 ジーク君のお父さんが、ズィーさんに指示を受けながら魔法陣を描き、エクスさんはジーク君と一緒に片手で持つタイプの小さなスコップで土を採取している。


「土壌検査ですか?」

「ああ、そうだよ。まだ時間が掛かりそうだねぇ」

「そうですか。えっと、凛姉たちは、あそこで何をしているんですか?」


 凛姉とロナさん、そして粉雪さんは何やら3人で畑の中で話し込んでいる。凛姉がメモを取りながら聞いていることから、世間話ではなさそうだ。


「この間、ゴブリン退治の依頼を受けてもらっただろ。その時の話をしているんだよ。あんたたちが来るほんのさっきまで、もう1個の穴があった方を見に行ってたからね」


 それなら話しかけても邪魔にはならない。

 僕はそう思い、ヒルデさんの方を向こうとして振り返った。それと同時くらいのタイミングでヒルデさんが歩き出した。


「それなら話しかけても大丈夫だな」「あ、ちょっと待ちなさいよ」

 ヒルデさんは僕と同じことを思ったらしい。亜麻猫さんの制止を聞かず、3人の方へとそのまま歩みを進めて行った。

 僕たちは一旦それを見守ることにした。


 そして、ヒルデさんは彼女らと合流すると、いの一番に粉雪さんへと声を掛けていた。


「大丈夫かしら?」

「多分。あ、粉雪さんがこっちを見てますね」

 

 粉雪さんは、ヒルデさんに話しかけられても嫌な顔一つせず対応していた。あんなことがあっても、顔色を変えずにいられるのは、さすがだと思う。


 けれど、そんな彼女がこちらを見たということは、ヒルデさんが本題に入ったのだろう。


 僕は粉雪さんに対して、首を縦に振った。今のヒルデさんなら、粉雪さんを怒らせる答えはしない。けれど……。


「2人で席を外すようね」

「ふたりきりでの会話は怖いです」


 怒らせるようなことはしないだろう。だが、あの2人だけでの会話は正直なところ、あらぬ方向へと舵が進みそうだ。話の軌道修正役に誰か付いてもらいたい。


「溝田、一応あの2人に付いてくれ」

「別にいいけど……。まぁ、後は頼むね」

 

 溝田は少し間をおいて、僕に返事をしてきた。

 多分彼女は、僕が気を遣ったのだと思っている。それは半分当たりだ。

 先の食堂で、一時的に凜姉とふたりきりにしたが、溝田には気の毒なことをした。


 溝田に2人の面倒を見てもらっている間に、少しでも、この後の会話がスムーズに出来るようにするのも、弟の役目だ。


 そんなことを考えていたら、ズィーさん達の方はもう結果が出たみたいだ。ズィーさんとお父さんが、女将さんと話し出した。


「一度、土を清める必要がある」

 ズィーさんは女将さんとジーク君のお父さんに、書類を見せながらそう言った。

 僕たちも見せてもらった。

 印刷されたような文字の隙間に、たぶんズィーさんの文字が書かれている。


 書類に書かれている内容は、ゴブリンの死体によって土が穢れているというものだった。

 この穢れとは、血や腐敗した肉などによっての汚れではなく、殺されたゴブリンの恨みや憎しみなどが土地に染みついた、いわゆる呪いみたいなものらしい。


「やっぱりね」

「あとで頼む気でしたもんね」

 女将さんとジーク君のお父さんはその言葉に、納得しながら頷く。


「それならなぜ、もっと早くにしなかった?」

 ズィーさんが女将さんたちの反応をみて質問する。


 多分だが僕らに気を遣ってくれたのだろう。粉雪さんたちはまだしも、僕とロナさんは冒険者になったばかりだ。せっかく初めての依頼を完了したのに水を差したくは無かったのだろう。


 一瞬、チラッとお父さんがこちらを見た。けれどすぐに、ズィーさんに目線を戻し、口を開いた。


「まぁ、その話は後にして、それよりもその穢れを誰が取り払うか決めましょう。ズィーさん、お願いできますか?」


 お父さんは僕たちには頼まず、まずはズィーさんにお願いしだした。こちらに変に気を遣っているのだろう。


「私がしても良いが、1時間くらい掛かる。それなら――。「私がします」


 ズィーさんの答えを遮るように、僕の後ろから声が聞こえる。


「私ならすぐに終わります」


 その声の主はロナさんだった。

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