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ヒルデという女⑤

「僕の意見とは?」

 僕もヒルデさんの目を真っ直ぐ見て聞き返す。


「別にそんなに気負わなくてもいい。自分の中である程度意志は固まっている」

 ヒルデさんは少し慌ててそう言ってきた。どうやら自分自身気が付かなかったが、ヒルデさんから見て、僕は固くなっていたのだろう。


「ごめんなさい。それで……」

 僕はヒルデさんに、にこやかな笑顔を浮かべながら続きを促した。


「いや簡単なことだ。強君はロナの事をどう思っている?」

 僕の笑顔につられてか、彼女も笑顔で聞いてきた。


 彼女は簡単なことだと言ってはいるが、どう答えたものか。

 とりあえず思ったことを言っていこう。


「優しい人です」

「よし。それならあいつと付き合ってはくれないか」

「え?」


 何故かヒルデさんが頭を下げながらそう言ってきた。本当に何故かは、僕には分からなかった。ヒルデさんがロナさんと話すのに何の関係があるのだろう。


「え? じゃないが……。ああ、勘違いさせて、すまない」

 ヒルデさんは一度顔を上げてから、また頭をこちらに下げた。

 僕は内心、よかったと思った。僕が勘違いしただけで付き合ってとは、ロナさんとの話し合いに付き合ってという意味だったのだろう。


 そう思い「わかりました」と答えを返そうと口を開きかけたところで、ふと気になった。ヒルデさんは「あいつと付き合って」と言ったはずだ。ヒルデさんが話し合いと言った部分を、僕が聞き逃してしまったのかと思ったが、それは違った。


「私の事は諦めてくれ。昨日の夜は抱き着いたりして、勘違いさせるようなことをしてすまなかったな。今の私にはジーク君しか考えられない」

 ヒルデさんはニッコリ笑いながらそう言ってきた。僕は呆然としてしまった。それは亜麻猫さんも同様だったようだ。


「えーと。あんた、どうしたの?」

 亜麻猫さんは少し引き気味にそう言った。僕も言いたいことを言わしてもらおう。


「僕は最初から凛姉しか考えていませんが……。本当にどうしたんですか」

 なんだろう。彼女はここまで残念な人だっただろうか。


 ヒルデさんに会う前、ロナさんに彼女の話を聞いていた段階ではすごい人なのだと思っていた。ロナさんと同期で、親衛隊に鳴り物入りで入隊。この時は敬うべき相手だと思っていた。


 そこから徐々にではあるがヒルデさんの化けの皮がはがれていった。

 ロナさんにからかわれ、溝田に不覚を取ったことをばらされて、それだけでは飽き足たらず、寝相がものすごく悪いのも露呈した。


 そのうえ、ショタコンを隠そうせず、自惚れまで入ってしまうと、溝田以下の目で見てしまいそうだ。

 けれどそうはならずに済みそうだ。


「いや、すまない。冗談を言ったつもりだったんだ。本気では言っていない」

「冗談?」

「ああ、少しロナを見習おうと思ってな。ただ君たちの反応を見るに、急には変わらない方が良いみたいだな」

 ヒルデさんは少し落ち込みながらそう言った。それなら悪いことをしてしまった。


 こちらが考えや行動を改めよと言ったことに対して、彼女なりに考えて行動してくれたのだ。それなら頭ごなしには否定したくない。


「いえ、それならこっちが悪かったんです。けど、さすがにその冗談は笑えません」

 今まで女神様に認められようと、真面目に生きてきたのだ。いきなりふざけろと言われてもできないのも無理はない。

 いや、こちらは別にふざけろなんて言っていない。けれど彼女なりに考えた結果なのだろう。ある程度はフォローする必要があるように思う。


 それなら僕は席を外して、亜麻猫さんと溝田とガールズトークでもしてもらおうと思った。そこから人間界の娯楽の話にでも繋がれば、ロナさんの目標である“天界に人間界の娯楽を広めたい”という思いの成就に一歩近づく。


 ただそれは止めておいた方が良さそうな雰囲気になってきた。


「昨日の夜、こんな感じの話で盛り上がっていたんだがなぁ……。なぁ、亜麻猫君?」

「えッ!?」


 ヒルデさんの言葉に亜麻猫さんがいたく反応した。けれどヒルデさんはそれを無視して会話を続ける。

「ああいうのをガールズトークというんだろ?」

「いや、あれは違うわよ!」


 亜麻猫さんはヒルデさんが話すことを止めないと気づき、強い言葉で否定した。まだ何か言おうとしていたヒルデさんだったが、そう言われれば止めるようだ。けれど今度は頼みごとを言い出した。


「それなら私にガールズトークと言うものを――。「私じゃなくて、凛と溝田さんに聞きなさいな。そのほうが良いわ」

 亜麻猫さんはヒルデさんの頼みに言葉を被せる。そして溝田の方を見て、目配せをしていた。


 焦ってはいても亜麻猫さんは、こちらのことは考えていてくれたようだ。それなら昨日の夜の会話を聞きだすようなことはしないでおこう。どうせ粉雪さんがらみのことだ。


「まぁ、それは追々ということで、とりあえず畑の方に行って見ましょうか」

 多分、粉雪さんはヒルデさんが自身の心を偽っているのに怒っていたのだろう。それなら今、ヒルデさんを粉雪さんに会わせても問題ない。


 亜麻猫さんも「そうね。行きましょうか」と返事をしてくれたので、僕たちは宿を出ることにした。


次回更新は資格試験の関係で2月になります。

それまでの間は、少し書き貯めしていた『最速150キロ高校生左腕は異世界の魔王軍でエースになれるのか』を不定期で更新していこうと思います。

よろしくお願いします。

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