組み分け①
あの後ヒルデさんに話しかけたが、気の抜けた返事が戻ってきた。粉雪さんに頼まれはしたが、今の僕ではどうしようもないと思う。とりあえず食堂の方へと戻ろう。
食堂にはジーク君もいるだろう。けれどあまり今の状態のヒルデさんを会わせたくはない。しかし自室に戻るには食堂を通る必要がある。だから遠くから挨拶だけしてもらって、ヒルデさんとロナさんには2階に上がってもらおう。
そう思い、重い足取りの中2人を連れて食堂へと戻った。
「あれ、いない?」
僕は食堂を見渡したが、ジーク君が見当たらない。それに女将さんやエクスさんたちの姿も見えない。もう話し合いは終わってしまったのだろうか。とりあえずヒルデさんには部屋に戻ってもらおう。そして僕とロナさんは果敢に凛姉に話しかけている溝田たちの座っている席へと向かおう。
粉雪さんたちは厨房の方へと何か買いに行っているようだ。
「それでね、凛ちゃんはどう思う?」
「え、あ、うん」
僕とロナさんはヒルデさんを階段の下から見送ってから、凛姉たちの席へと向かった。
凛姉は溝田の話を空返事で相槌を打っていた。ただ少し心が折れかけているのだろうか、顔を露骨に嫌そうにしている。けれど怒ったり、その場を離れたりせず、返事はしている。
僕は溝田が少しかわいそうになってきたので、急いで2人に声をかける。
「お疲れ様。それでジーク君は帰ったの?」
「ううん。女将さんとお父さんたちと一緒に畑に行ったみたい」
凛姉は溝田に一言断りを入れてから、僕にそう言ってきた。話がまとまったのだろうか。なぜ畑に行ったのだろう。
「畑?」
「うん。なんでも、溝……、ヒルデさんたちも主都に来てもらう代わりに、昨日言っていた契約金にプラスして植物の栽培許可も渡すってエクスさんが言っていたみたい」
凛姉は厨房を指差す。そこには凛姉や亜麻猫さんにちょっかいを掛けにくる男性の、幼馴染の女性がお客の注文を聞いていた。凛姉たちもあの人から話を聞いたのだろう。
ちょうど粉雪さんたちがその女性からお茶を受け取ってこちらに来てくれている。
「えーと、粉雪さん……。「私とロナさんと凛で畑の方に行くからツヨシは亜麻猫と溝田さんと一緒にヒルデさんを頼む」
粉雪さんは湯呑みに入れられたお茶を一気に飲み干し、僕の返事を待っている。亜麻猫さんは了解しているようだ。けれど僕と溝田はどう反応するべきか困っていた。
だからと言うわけではないが、ロナさんが代わりに返事をしてくれた。
「そうしましょうか。凛さんも準備してください」
「え、ええそうですね」
凛姉もどう返事をしたら良いか迷っていたようだ。ロナさんの提案に一瞬反応が遅れた。けれど返事をしてからは行動が速かった。すぐに席を立ち、粉雪さんの湯呑みをひったくってカウンターの方へと持って行った。
「そんなに急がなくても……」
溝田はわざとだろうがしょげた言い方をする。それを聞いてここにいる凛姉を除く全員が苦笑いをした。
「まぁ、こっちはこっちでなんとかするから……」
粉雪さんは溝田を慰めるようにそう言った。
「ええ、お願いしますね」
それに対して溝田は、さきのしょげた顔から急に笑顔になってそう言う。粉雪さんは本気で溝田が落ち込んでいると思っていたようだ。その様子にすごく驚いていた。
「何の話をしているんですか。早く行きましょう」
そんなことを話していると、凛姉が帰って来た。手には聖水を2本携えている。おそらく自分用だろう。
「ちょっと待ってくれ。ロナさんは大丈夫か」
「少し待ってもらえますか」
ロナさんは粉雪さんに一言断りを入れてから、僕の方を見てきた。
「ツヨシさん、正直に答えてください。ヒルデのことをどう思っていますか」
ロナさんは真面目な顔で僕にそう質問してきた。
次回更新は12/24になります。




