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最後にヒルデさんがぶち壊しました。

 朝になった。ロナさんは約束通り、僕たちを起こしに来てくれた。といっても僕たちはすでに起きていて、部屋を出る準備は出来ていた。


「おはようございます」

「あら、もう起きていましたか」


 ロナさんは頬に手を当て、残念そうに言った。何やら小声で「日課の寝顔を見ようと思っていたのに」と言ったような気がしたが気のせいだろう。そう思おう。僕と溝田はロナさんにお礼を言って、部屋を出た。それでは凛姉たちの部屋へと向かうとしよう。抱えた布団を一刻も早く下したい。


「それで凛姉はまだ寝ていますか?」

「ええ、ぐっすりと寝ています。4時くらいまでは寝たふりをしていたみたいなので、私が魔法を使って眠らせました」


 僕たちがエクスさんから借りていた部屋は、凛姉がいる部屋から近い。もう部屋の目の前にいる。先に、エクスさんたちにお礼を言うべきなのだろうが、今は凛姉が起きる前に部屋に入ろう。


「溝田、先に入ってくれ」

「うん」


 僕は布団で手がふさがっているので、溝田にドアを開けてもらった。そして、中へと入る。


「おはようございます」

「ああ、おはよう」「凛ならまだ寝ているわよ」


 中へ入ると、粉雪さんと亜麻猫さんが出迎えてくれた。2人とも浴衣から着替えを済ませていた。

 しかし粉雪さんはいつもとは違った。主都へ行って何か思うところがあったのか、客人が2人いるからか、袴をきちんと着ていた。まぁ、今は面倒なことになってもあれなので触れはしない。


「それじゃあ。溝田、GO」

「わかってるよ」


 そう言って、溝田は一直線に凛姉のベッドへと向かった。そして――。

「凛ちゃん。おはよう」


 溝田は凛姉の耳元で大声を出す。

 これは昨日溝田と話し合って決めたことだった。


 昔何かの番組で、芸能人が夫の浮気を問い詰めるには、帰って来た時に聞くのではなく、寝起きか寝ているところを無理に起こして問い詰めるのが一番効果的と言っていた。それは頭が上手く廻らず、嘘が付きにくい状態になるからだそうだ。


 だから手始めに凛姉に素直になってもらうために、奇襲をかけることにした。少し心配していたが、溝田も大人だったのだろう。凛姉の寝顔を見つめたりせずに、起きる前に行動してくれた。心の中で謝っておこう。


「ん、溝田さん?」

 凛姉は枕元とスマホを寝ぼけ眼で探している。溝田がここにいることに対して、昨日みたいに怒っていない。


「そうだよ。まったく凛ちゃんは、お寝坊さんだね」

「ごめん。今日なにか約束してたっけ」


 凛姉はスマホで時間を確認したあと、ベッドから体を起こす。けれどまだ眠そうだ。眼をこすりながら溝田に質問している。


「ううん。けど、“友達”が部屋に遊びに来るのに理由って必要かな?」

 溝田は怯えもせず、“友達”という言葉の爆弾を投げ込んでいった。

 今凛姉は寝ぼけている。だから嘘をつくほど頭が回らないはずだ。


「それはそうだけど、まだ時間が早いよ……。って、あっ」


 どうやら完全に目が覚めたようだ。けれど遅かった。凛姉は溝田の事を友達だと認めてしまった。


「ごめんね」

 溝田は嬉しそうにニヤケながら凛姉に謝っていた。僕もその様子を見て嬉しくなった。だが凛姉は顔を真っ赤にして、僕たちを睨んできた。


「着替えるから、つーくん、溝田さん……。溝田を連れて部屋を出てくれないかな」

 凛姉はそう言ってクローゼットから替えの服を取り出し始めた。途中溝田が声を掛けてからかっても完全に無視していた。ただ頬はほんのりと赤くなっていた。


「溝田。出よう」

「そうだね。それじゃあ凛ちゃん、先に朝食食べに行ってるから」


 僕は凛姉に呼び捨てで呼ばれて嬉しそうにしている溝田を連れて、部屋を出た。

 廊下ではいつもの3人が待ってくれていた。


「嬉しそうですね」

「ええ、まだ仲直りできる間柄ですから。それに凛ちゃんの可愛らしいところも見えましたし」

 溝田はロナさんの問いに声を弾ませながら答えた。凛姉の可愛らしいところと言うのは、友達じゃないというのを強調したいのなら、こいつとでも呼べば良いのに、溝田と呼び捨てにするのに留めたことだろう。それも直前までさん付けで呼ぼうとしていたことも溝田にとって心に来るものがあったのだろう。


 僕もあれは心に来るものがあった。できれば独り占めにしたい。けれど今は我慢しておこう。

 僕は我慢するために、話題を変えることにした。


「ヒルデさんは先に下に行っているんですか?」

「いえ、まだ寝ているはずですが……。またですか」


 僕の問いにロナさんがニヤけた。そしてそのロナさんの替わりに亜麻猫さんが説明してくれた。


「あの子、無茶苦茶寝相悪いわよ。私の布団に二回くらい落ちてきたもの。今朝も私たちが布団を畳んでいる時に、ベッドの下に潜り込んで寝ていたから、一旦抱きかかえてベッドの上に戻したんだけど……。また潜り込んだんじゃない?」


 僕は亜麻猫さんの話を聞いて、一応だがロナさんに確認を取ることにした。


「ロナさん。確か一緒のベッドで寝ていましたよね。ベッドの占有率はどのくらいでした?」

「一応、凛さんのことを見ていましたので、私は昨日横にはなっていないんですよ。だから10対0でヒルデに渡していたんですが……。もともと彼女は寝相がものすごく悪いんです。今朝の写真がこちらです」


 そう言ってロナさんは僕たちに携帯を渡してきた。


「確かにこれはひどい」「本当だね」


 そこには一升瓶を抱きかかえて眠るのが似合いそうな格好で寝ているヒルデさんが映っていた。


次回更新は12/8になります。

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