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部屋を借りました。

 僕は布団を敷いた後、溝田とヒルデさんとロナさんと一緒にズィーさんの部屋へと向かった。それはこの宿に2人の部屋を借りても良いか確認するためだ。

 この宿で部屋を借りるということは、女将さんと話をするということだ。となると、僕たちの知人である2人を女将さんはスカウトするであろう。


 そして実力的に2人とも主都に引き抜かれる。そうなればまた、移籍金の問題で揉めてしまう。それを避けるための確認だ。

もし借りないで欲しいと言われたらどうしようかと思っていたが、それは避けられた。


 なんでもズィーさんの話では、女将さんのことだから勧誘する気なら僕たちが部屋を出た瞬間にしてくるそうだ。それに今は、エクスさんと揉めているから、目立った行動はとらないと思うそうだ。それにエクスさんから嬉しい申し出があった。


「私が借りている部屋を使いますか?」

 彼女は最初から妹の部屋に泊まる気でいたみたいだ。布団も借りている。しかしそれは宿に宿泊費を落さないということだ。宿側からエクスさんを招待したのならそれでも良いかも知れないが、今回はエクスさん側が宿側にお願いをしに訪れた立場だ。それでは体裁が悪い。


「それなら、お言葉に甘えましょうか」

「ですね。それなら溝田さんに入ってもらいましょうか」


 ああ、そうか。借りているのは1人部屋か。それだとどちらにしても布団を借りに行かなくてはならない。それでも部屋を借りるのより、お金はかからないのでありがたい。

 そんなことを思っていたらロナさんが先の言葉に続けて意外なことを言い出した。


「ヒルデが私のベッドで一緒に寝むれば、解決ですね」


 それはヒルデさんが嫌がるのではと思った。だからヒルデさんの方を僕は見た。するとこれまた意外にもヒルデさんは納得していた。


「しょうがないな。居候の身だ」

「ですね。本当はそっちの部屋が良かったんですけどね。こっちに来たばかりで不安ですし」


 ヒルデさんの渋々といった感じの言葉の後に、溝田が不安そうにそう言った。

 2人とも納得はしていた。ただ、溝田の言うことももっともだ。しょうがない。本当に嫌々だが僕はある提案をする。


「俺もそっちの部屋に行くよ。台所で寝るから良いだろ」

 先の魔法を見るに、溝田の実力はかなり高い。けれどそれは聖水を飲んでいる時だ。こちらの世界に来たばかりの知人をそのままほったらかしにはできない。それに溝田とは、少し2人で話したいこともある。


「あ、うん。ありがとう」

 僕の提案に少し面食らっていた溝田は、すぐに顔を戻し、お礼をこちらに言ってきた。あとはロナさんにも断りを入れておこう。


「ロナさん。明日の朝、いつもの時間より少し早めに起こしに来てくれませんか?」

「ええ。大丈夫ですよ。15分くらい早くしましょうか?」

「それでお願いします。エクスさん。部屋をお借りします」


 いつもなら部屋を借りたりするのは、申し訳なく思い遠慮する。しかし今はそんなことを言っていられない。自分の部屋には凛姉が寝ている。いや寝ているフリをして実際は起きているだろう。そんな中で溝田と話をすることはできない。

 改めてエクスさんたちにお礼を言い、部屋を後にした。


 そして僕たちは部屋に戻った。

「おかえり。部屋は借りられたのか?」

 部屋に入ると、粉雪さんが出迎えてくれた。亜麻猫さんは凛姉の近くに布団を敷いて、凛姉の様子を伺っていた。


「凛。ツヨシたち帰って来たわよー」

 亜麻猫さんにしては珍しい、間延びした言い方で凛姉に話しかけていた。けれど凛姉は起きない。こちらから見ても反応した様子はない。


「起きないわね。今ならここで今後の話をしても大丈夫よー」

 亜麻猫さんは間延びした言い方を僕たちにもしてきた。その言葉には凛姉が少し反応した。これは起きているなと僕は確信した。


「エクスさんが部屋を貸してくれたから、僕と溝田が行くよ」

「そう? 布団の数とか気にしているなら、凛のベッドに溝田さん(?)を放り込んでも良いんじゃない?」


 さっきからの間延びした言い方もあり、薄々感づいていたが、亜麻猫さんは凛姉の事を煽っているなと確信した。今もすごくいやらしい言い方をしていた。そしてその言葉に凛姉はいたく体を反応させていた。


 亜麻猫さんには悪いが、まだそこまで攻める勇気は、僕にも溝田にも、そして凛姉にもないだろう。1日は待って欲しい。だからここはいつも通りの反応をしよう。


「こいつを凛姉と一緒のベッドに僕が放り込むと思いますか? あと本当なら僕もこっちの台所で寝ようと思っていたんですけど、こいつが一人で寝るのが不安みたいなので……」


 多分いつもの僕が言いそうなことを言えたと思う。凛姉に色目を使う奴に対して、敵対心を燃やすムーブを取れているはずだ。


「そう。けどさっきロナを捕縛した魔法が使えるならそんな心配ないと思うわよ」

 今の彼女の話し方は間延びしたものではなく、いつもの口調だった。こちらが攻めないと思い、戻してくれたのだろう。


 亜麻猫さんの言葉に続けて、ヒルデさんが話しかけてきた。

「本当にな。ロナは戦闘向きではないからまだ分かるが、不意打ちとはいえ、私のことも捕縛できたのだから、もっと自信を持っても良いのにな」


 そういえばこの人は騎士団にエリートとして入団していたのだった。僕がそのことを思い出したのと同時位に、粉雪さんもそのことを思い出したのだろうか。ヒルデさんに話を持ちかけ出した。


「そういえば、あなたは騎士団に所属しているそうだな。私と手合せをしては貰えないだろうか」


 この人は強い人を見ると勝負をしかけなくては気が済まないのかなと僕は思った。けれどそれが粉雪さんなりのコミュニケーションの取り方なのだろうと思い、1人納得した。


「いいぞ。下界だから本気は出せないが、この世界での本気で相手しよう」

 ヒルデさんも似たような人なのだと思う。彼女は粉雪さんの申し出を受けた。


 模擬試合は明日の朝。朝食を食べた後にすることとなった。

次回更新は12/3になります。

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