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神様、溝田さんがヒルデさんを泣かせました。

 心を折るつもりはあった。それは目の前の不審者が凛ちゃんのことを知っていそうだからだ。


 なぜか、私は魔法みたいなものが使える。現に目の前の泣きじゃくっている彼女を鎖で縛れている。だから自白を強要する魔法も今の私なら使える気がした。だけど自身が無かったので少し相手の心を折ってから試そうと思い、今の行動をとった。


 狙い通り、相手の心を折ることができた。ただ簡単に折れすぎだと思う。


「な゛ん゛で゛私゛ば゛っ゛か゛り゛こ゛ん゛な゛」

「鎖よ。あの者をグルグル巻きにしろ」


 彼女を見ていたらなんだかこちらが申し訳ない気分になってきた。なので鎖の縛り方を変えることにした。


「も゛う゛い゛っ゛そ゛こ゛ろ゛し゛て゛く゛れ゛」

「そんなことはしません」


 私は目の前の、顔を涙やら鼻水やらでぐしゃぐしゃにした彼女をなだめることにした。

 それと同時に、鎖の縛り方を変えたのは、私があなたの体に触れる意思がないことを示す為ということなど、私があなたに手を出すようなことはないということを懇切丁寧に説明した。


「さっきなんで私ばかりって言いましたよね。なにかつらいことがあったんですか」

「今のこの状況だよ」


 彼女に私の思いが通じたらしく、彼女は泣きやんでくれた。そして少しずつだが、自分の事を話し始めてくれた。


 自分が天使であること。魔法について。なぜ私の前現れたのかなどだ。あとロナという人の愚痴をたくさん聞かされた。


「それで私の試験対象がゴリマッチョのむさ苦しい男だったのに、ロナは凛の弟の強とかいう可愛らしい男の子だったのはずるい。私の対象があの子だったら、コネなんて利用せずに、試験をきちんと受けたさ。それなのになんであいつばっかり……」


 なんでも目の前の不審者はヒルデと言う天使らしい。この際それは信じよう。私も魔法が使えているのだ。信じるしかない。

 

 彼女はロナという同期の天使見習いのことが気にくわないらしい。今も自分の方が女神様のお眼鏡にかなう生活を送っているのに、ロナばかり良いことが起こっているという愚痴だ。


 私はそれを無視して、先の愚痴の、気になったことを聞こうとした。


「あの、凛ちゃんに弟っていまし……。あ」

「え、あ、そこまで思い出していたわけじゃなかったのか……」


 そうだ。あの観覧車の男の子はツヨシくんだ。ただツヨシ君は車に轢かれて亡くなった。私の記憶ではそうなっている。


「そのロナさんって人の試験ってどんなものなんですか?」

「対象に3年以内に1億G稼せがせて、その対象が死ぬまで一緒に幸せに暮らすというものだ」


 本当に私の記憶が間違っている可能性が出て来た。今彼女はツヨシ君が死んでいないようなことを言った。だから詳しく聞くことにした。


「ツヨシ君は車に轢かれて……」

「そうなんだ。ロナのわがままを女神様が聞いたんだ。ただこちらの世界に生き返らせるのは何かと都合が悪いから、女神様が管理するもう1つの世界で生き返らされたんだ」


 私はそれを聞いて心の底から嬉しく思った。だから異世界のことやツヨシ君たちのことを聞くことにした。ただ詳しい話を聞いて行くうちにかなり不安になってきた。


「もし1億G稼げなかったらツヨシ君はどうなるんですか?」


 異世界のお金の価値がどんなものかは分からない。だけど1億となるとかなりの大金になるだろう。それに生き返ったと言っても、見方によっては地獄に落とされたようなものだ。


 その異世界はゲームに出てくるモンスターが出てくるような世界みたいだ。その異世界で大金を稼ぐもっともオーソドックスな方法が、モンスターを狩ってお金を稼ぐそうだ。ツヨシ君たちもその狩りをして生計を立てているらしい。


 いくら生き返らせてくれるといっても今の現状ではかわいそうという感情しかわかない。だけどヒルデさんの答えで私の胸は軽くなった。


「別に弟君には何もデメリットは無いぞ。それどころか。もしロナが試験をクリアできたなら、弟君は姉の凛の記憶を維持したまま、来世を彼女と一緒に歩むことができるからな」


 ツヨシ君らしいなと思った。それなら私から彼の処遇についてとやかくは言わないでおこうと思った。彼は彼で凛ちゃんのことを考えて異世界で頑張っているのだ。ツヨシ君の今の様子を見たいとは思ったが、言わないでおこう。


「弟君たちなら1億なんてすぐに稼げるぞ。ただ女難の相が出ているから途中で刃傷沙汰になって幸せな生活が送れるかはわからないがな」


 だが、その言葉を聞いて私はまた、すごく不安になった。

 ツヨシ君はこちらの世界にいた時はモテたりはしなかった。ただそれは重度のシスコンというのが同級生に知れ渡っていたからだ。顔立ち自体はヒルデさんが言ったように可愛らしく良い方だ。だから凛ちゃんがいない異世界で、女難の相が出るほどモテるのは理解できる。


 だからやっぱり凛ちゃんの事を聞く前にツヨシ君の事を聞こうと思った。これは心配して聞こうと思ったのだが、ヒルデさんの次の一言でその気が変わった。


「まぁ、試験が失敗に終わっても、弟君の願いは叶えるようなことを女神様は言っていたし、というより来世をまたずに今、異世界で姉と一緒に暮らしているんだがな」

「はぁー?」


 今彼女はなんと言ったのだろうか。思わず悪態をついてしまった。そのついでに、買って来ていた梅酒をもう1本空ける。さっき魔法の説明を受けた時に、お酒が魔法の発動元になると聞いたからだ。


「正直に答えてください。なんでツヨシ君と凛ちゃんが一緒に暮らしているんですか?」

「ひぃー。わかったからちゃんと言うから。その怖い顔を止めてくれ……。よし、弟君が魔法を使って自分の世界に姉を転移させたんだ。自分勝手な理由ではないと聞いている。あのままにしていたら、姉はまた自殺すると思ったからそうだ」


 思わず怖い顔をしていたようだ。またヒルデさんが泣きそうになった。だからわざとらしく、つくり笑顔を造った。


 その理由なら納得できる。そして私の記憶から自分たちの記憶を消すのも納得……。


「お願いします。私も異世界に連れて行ってください」

 そう言って私は、ヒルデさんの鎖の縛りを解いた。


「解いてもらって悪いんだがそういうわけに――。「鎖よ」

 彼女は何を勘違いしたのか魔法を解いてもらえると思ったようだ。私がそんなことをするはずがない。


「あのー。なんでまた大の字で拘束を……」

「もし、私を異世界に連れて行ってもらえるならこれをすぐに解きます。それにロナさんとの話し合いの時に間を取り持ちますし、なんならツヨシ君との間柄も……」

「断ると……」

「さっきの本に出てきた、Hな道具がベッドの下にありますが……。あとはもうおわかりですね」


 彼女は涙目になりながら首を縦に振った。

次回更新は11/23を予定しています。

もしかしたら11/22に更新できるかもしれません。

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