表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/100

犯人候補の元へと向かいます。

「取り乱してしまってすまなかった」

 ジュネヴァさんが眠った後、導師が僕たちに向けてそう言ってきた。


 これから話すことはジュネヴァさんの耳には入れない方が良いと思い、脳の回復の為と称して、ロナさんが彼女を魔法で眠らせた。


 それぞれ椅子に座ったり、壁にもたれ掛ったりして今後の話を始めようとした時、ベイリーさんがロナさんに質問した。

「込み入った話の前に確認しておきたいのですが……」


 なんでも、彼は導師の言葉によって奥さんの呪いが完全に解けたときのロナさんの態度が気になったそうだ。確かに、申し訳なさそうな態度から一変して、にこやかな顔に瞬時で変わった。あの状況なら普通驚くような気がする。


 ロナさんは“左手で右耳を触りながら”答えを彼に返した。

「無理に魔法で解呪しようとすると奥様の脳を傷つける可能性がありました。なので今日の所は一度引き上げようとしたんです」

 彼女は終始、耳を触り続けながらそう答えた。となると、これは嘘だ。


「解く算段はついていたんですか?」


 彼は疑問に思ったことを口にした。それにロナさんは、今度は耳を触らずに答えた。


「本人さんが当時の状況を再現すれば解けると思っていました。なので奥様には申し訳ないのですが、導師には罰として一日、反省の意味も込めて、これからのことを考えてもらおうと思ったんです」


 ロナさんが言うにはこの呪いは、導師が当時の告白の状況を再現すれば、簡単に解けるものだったそうだ。

 

 なぜかその部分の記憶に、入念に呪いが込められていた。ここからロナさんは、お二人のどちらかに好意を持っていた者の犯行ではと思ったそうだ。だから相手の逆恨みみたいなものだが、そういった関係を清算しないままでいたのが原因で呪いを掛けられたと思い、罰としてと言う言葉を使ったみたいだ。


「まぁ、そう言うことなら……」


 ベイリーさんはかなり不満気だが納得はしてくれたようだ。導師の方は気恥ずかしさからか目線が安定しない。今もおろおろしている。


「それで犯人に心当たりはありますか?」

 ロナさんはそう言って、導師の方を見た。彼はおろおろするのを止め、考え込みだした。


「ベイリーさんは心当たりありますか?」

 ロナさんは埒があかないと思ったのか、導師の答えを待たずにベイリーさんに聞きだした。彼の方は少し間を開けて答えを返そうとした。


「ニック導師が――。「いや、それは……」


 ただ導師がそれを遮った。彼の顔は泣きそうになっていた。


「導師、状況的にそうとしか思えません」

「いや、あいつは気に入らない奴だが……。こういうことはしない奴だ」


 昔、まだ三人が学生だった頃。ニック導師がジュネヴァさんの事を好きだと噂が流れたことがあったそうだ。ただ、本人はそのことを否定し、ジント導師がジュネヴァさんと付き合いだした時は、珍しく祝福しに来たそうだ。

 

 ジント導師とニック導師は学校時代から競い合っていた。学生時代は学年主席を争い、術師になってからも魔法の開発などで競い合っていた。

 ジント導師はニック導師の事を時には、忌々しく思ったりしたこともあったが、最終的にはあいつに負けたのなら悔いはないと、次の勝負を望んでいた。


 だから導師は彼の事を気に入らないと思ってはいたが、嫌いではなかった。それは勝負の時に、いつも真っ向勝負で挑んでくるからだ。

 しかし、もし彼が今回の事に絡んでいたら、今までのその信頼は無くなってしまう。それを導師は怖がっている。


 そんなやり取りの中、凛姉が手を挙げた。


「とりあえずニックさんの様子を見に行きませんか? 呪いって解かれたら、術者に返っていくイメージがあるんですが……」

「あ」


 導師とベイリーさんは小さく声を漏らした。


 話し合いの結果、凛姉と亜麻猫さんを病室に残して、僕たちはニック導師の研究室に向かうことになった。

次回更新は10/1になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ