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暴走④

 僕も魔法で煙を消した後、すぐに保管室へと入った。

 保管室の中は気まずい雰囲気が流れていた。


 しかしそれを僕は無視して話を切り出した。


「一応聞いておきます。なぜこんなことを?」


 騎士隊の2人を見ながら僕はそう言った。しかし2人はだんまりだ。


 それを見て導師が割って入って来た。


「今回の件は私に責任がある。この2人は責めないでやって――。「無理です」


 導師の言葉を僕は遮った。そして自身の本音を打ち明ける。


「当事者じゃないからかもしれないんですけど、あなた達を見ていたら腹が立ってきます。導師がそんなことをして喜ぶとでも思ってるんですか」


 僕は2人を睨むように見た。彼らは俯いたままだ。ただ、僕の言葉は耳に入ってはいるようだ。体がピクッと反応した。


 2人に腹が立つのは、僕にも似たような経験があるからだろう。それは凛姉をこちらの世界に呼ぶ時にしたことだ。

 あの時僕は凛姉を助けるために自分の命を賭けに出した。そしていろんな人に迷惑を掛けながらその賭けに打ち勝った。


 結局のところ僕と2人は似た者同士なのだろう。だから自己嫌悪に陥り、今の負の感情が生まれているのだと思う。


 僕は賭けに打ち勝ちはしたが、瀕死の重傷を負った。そのことで凛姉を心配させてしまった。


 そうだ。何かをしてもらう方は、相手の自己犠牲のもとに利益を得ても嬉しくない。それどころか逆に、申し訳なく思い、胸にしこりを生じさせる。


 だから僕はそういったことの先輩として、彼らを怒る必要があると思う。だから言葉を続けようとしたら、今度は逆に僕の言葉を導師が遮った。2人を庇うように僕から自身の体を使って隠したのだ。ただそれなら、僕は言葉を投げかける相手を変えるだけだ。


「僕は導師にも怒っています。ここはもう良いので、ロナさんと一緒に病院に行ってください」


 僕はベイリーさんではなく、粉雪さんに導師をロナさんたちの元へ連れて行ってくださいと頼んだ。その言葉に導師の顔は、拒絶の意を示していた。だから僕はあからさまに顔を顰めながら言った。


「この2人の事を思うなら、そうしてください。このまま導師が本当の事を喋ったら意味がないです。最初に通報しなかったのなら、最後まで心中する覚悟を持ってください」


 凛姉の件は僕に反省する点が多々あった。しかし、元をたどれば僕が命を賭けることになったのは凛姉が自殺しようとしたからだ。

 ただ凛姉は、僕が命を賭けたことに対して、少しの忠告だけで終わらせた。自分も悪いことを理解しているし、凛姉の為にした行為だと理解したうえで、僕の気持ちを汲んでくれたのだ。

 それ以来、まだ月日はそれほど経ってはいないが、そのことを蒸し返してきたりはしない。


 それなのに導師は1度目は見逃したのに、2回目の今回は彼らを庇うために自分を犠牲にしようとしている。それでは意味がないのだ。


 騎士隊の2人の助けがいらないのであれば、1回目の時点で通報するなり、それが無理なら彼らに直接警告を出せば良かったのだ。それなら2回目の今回、彼らを庇うことをしても僕は良いと思う。


 そうなれば2人に気を使う必要は無い。導師が拒否したのにもかかわらず、無理に協力をしたのだ。結果的に導師の足を引っ張ることになっても、導師が彼らの気持ちを汲む必要は無い。


 ただ今回は1回目をスルーしてしまっている。これでは2人の気持ちを汲んだようなものだ。それなら2回目の今回も2人の気持ちを汲んで、導師は自分は関係ないとシラをきるべきだ。


 それに今回は、奥さんの呪いを解けるかもしれないあと一歩のところまで来ている。


 僕はこの場にいる人に、その気持ちを伝えた。2人は導師の奥さんの呪いが解けるかもしれないことに大層喜びだした。


「あの2人を見ても、まだ彼らと一緒にしょっぴかれようと思いますか?」


 僕は導師に「彼らの罪を軽減できるように、すべてが終わったら全力を尽くしてください。その為には奥さんを治して、黒幕を探すほうが先です」と言い、導師から離れた。


 導師は「すまない」と一言だけ残して、粉雪さんと一緒に店の外に出た。


 僕と残された3人は、2人の罪が少しでも軽くなるように意見を出し合うことにした。

次回更新は9/17になります。

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