表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/100

暴走③

 僕たちに今できることは、できるだけ導師に負担をかけないようにすることだ。店の外に逃げ出してきた店員に話を聞いて、あの2人が犯行動機をうっかり喋っていないか確かめよう。喋っていなければ、まだごまかせる。


 ただ導師は今回の件をどう思うのだろう。

 1度目は、2人の犯行だと見抜いていたにもかかわらず通報しなかった。


 しかしこれは自身の保身の為ではなく、あの2人の将来の為だ。それに店に直接的な……。いや、1日ほど捜査の為に、臨時休業する羽目にはなっている。だがまだ軽微なものだと判断したのだろう。


 けれど今回は火事にはなっていないにしても、おそらく爆発系統の魔法を使っている。いくらなんでも今回は黙ってはいないだろう。導師の先の反応や、人伝えに聞いた性格や行動から、馬鹿正直に『この2人は私の為にこんなことをした』と言いかねない。


 そうなると奥さんに魔法を掛けた犯人の思うツボだ。

 爆破事件に間接的にかかわったとなると、犯人特定の為の一時的な国外避難が、本格的な国外退去になってしまう。それはベイリーさんも、あの2人も望まない。


 そんなことを考えているうちに僕は無性に腹が立ってきた。


 それはあの2人にはもちろんだが、導師にもだ。


「あの、すみません。僕、お店のほうに行きます」

「え、ちょっと!?」


 僕は亜麻猫さんたちから離れ、遅れて導師たちの後を追った。


 導師たちは店の前で立ち往生していた。それはドアが開かなかったからだ。

 僕が入った時は自動ドアのように、ボタンを押すと横に勝手にスライドしていたガラスの扉が今は何も反応しない。ブレーカーをおとすように、魔法の制御を外したのだろう。


 だがそれも導師の前では、少しの時間稼ぎにしかならなかった。


 導師は扉に手を当て、呪文を呟く。するとさっきまで開かなかった扉が嘘のように開いた。彼はそのまま、店の中へと歩みを進めた。ベイリーさんはそれに続いたが、粉雪さんは僕が近づいて来ていたことに気が付いていたのだろう。さっきまで扉を見ていた顔をこちらに向けて待ってくれている。


「すみません。やっぱり僕もこっちについて行きます」

「ああ、そうするか」


 僕は粉雪さんと一緒に彼らの後をついて行った。


 店の中は白い煙が充満していた。不思議なことにその煙は、扉が開いたのに外に出ていく気配がない。目くらましのため、あの2人が魔法で制御しているのだろう。


 僕は保管室の方向に目を凝らした。けれど煙でよく見えない。導師たちは無駄な魔力を使いたくないのか、それとも打ち消せないのか煙を消そうとしない。それなら僕がこの煙を消すしかない。


 僕は酒瓶に入った酒に人差し指をつけて、それを一舐めした。そして頭の中で煙が扉から外に出ていくイメージをしながら「外に出ろ」と唱えた。するとゆっくりではあるが煙が扉の方へと流れ出した。


 だから保管室の方が徐々に見えるようになってきた。保管室はドアの所が爆破されたようだ。


 僕はまた酒を一舐めした。そして煙を一時的に止めた。外から中が見えないようにするためだ。


 それは何故かと言うと、壊れた保管室の中に2人の人影を見たからだ。それは紛れもなくあの騎士隊の2人だ。


「「ジント導師」」


 2人は同じタイミングで導師の名前を呼んだ。導師が何か言おうとしたが、それを僕は遮った。


「みんな保管室の奥に入ってください。煙消しますんで」


 あの爆破音の後だ。店の中から煙が出てきたら火事を疑う。

 そうなると、水魔法を店に対して外から放ってくるかもしれない。保管室を壊した上に店舗を水浸しにしたら、賠償金が面倒なことになりそうだ。


「分かった。他の者も指示に従ってくれ」


 導師は僕の意図を理解したのだろう。素直に他の人に指示を出しだした。ベイリーさんはもちろん、粉雪さんもその言葉に従って、2人がいる保管室の方へと歩き出した。しかし……。


「「導師」」


 保管室の壊れたドア付近に突っ立っている2人は小さくそう呟いた。

次回は9/12になります。


訂正

次回更新は9/14になります。


申し訳ありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ