暴走②
「私が様子を見てきます。導師たちは先に行ってください」
ベイリーさんはそう言って、宝石店の方へ走り出そうとした。しかしそれを粉雪さんが止める。
「いや、お前はロナと凛と一緒に病室に行ってくれ。私と亜麻猫とツヨシが対処する」
そう言いながら粉雪さんは、宝石店の中から飛び出してきた従業員の1人を捕まえる。宝石店の方は外から見る限りは、火事になっていそうな気配はない。そもそもあれは本当に爆発音だったのだろうか。魔法を使ってただ壁などを壊しただけかもしれない。
「怪我人はいるか?」
急に腕を掴まれた店員は最初、ものすごく怯えていたが粉雪さんや僕たちのことを見て落ち着きを取り戻した。
「いえ、保管室の扉が爆破されただけなので……。かすり傷とかはいるかもしれませんが……」
保管室と言うと昨日見せてもらったところだろうか。やっぱりあの二人が……。それなら導師はここで退場してもらおう。
「それなら、ロナさんは導師と一緒に行っても大丈夫ですね」
僕はそう言ったあと店員に、他の店員たちが集まっているところへ行くよう指示した。店員も僕の指示に従って、他の店員たちの所へと駆けて行った。しかし導師は動く気配がない。
「ほらベイリーさんたちも、ここは僕たちに任せてください。保管室なら昨日入ったのでわかりますから」
だから僕は焦り、そう口走ってしまった。言った後に少しまずい発言だったかなと思った。今の導師なら気が動転していて、もしかしたらあの2人がこの爆発に関与していると気が付いていないかもしれない。それなのに昨日入ったと言ってしまった。もしかしたら感づかれたかもしれない。
「え、ああそうですね。さあ導師行きましょう」
そう言ってベイリーさんは導師の手を取ろうとした。しかし、導師はその手を引っ込めた。僕は嫌な予感がした。
「あの2人か」
導師は引っ込めた右手を自身の額へ持っていく。そしてそう呟いた。
「そうだろう?」
導師は凛姉の方を向いてそう聞いてきた。凛姉は思わず目線を下へと向けてしまった。
これが粉雪さんやロナさんに向けて聞いてくれていたら、誤魔化せたかもしれない。亜麻猫さんでも、自身の恋愛がらみのことでなければ割としっかりしているので大丈夫だっただろう。
導師は、一番嘘を吐くのが苦手そうな凛姉に狙いをつけて聞いてきた。それぐらいには頭が働いているということだ。
「それなら私もここに残る」
今度は導師が宝石店の方へと歩き出した。
宝石店の方は店員が一気に出て来てから、誰も出て来ていない。もちろんあの二人もだ。もし出て来ていたら、さっきから何も言葉を発さずに宝石店を見ていた亜麻猫さんが何か言うはずだ。
広場の方も、店から爆発音がして店員が飛び出してきたので、かなりざわついている。しかしこういったことになれているのか、パニックにはならず、野次馬根性丸出しで店に近づく者までいる始末だ。今、巡回をしていたのであろう騎士隊員がそいつらを排除している。
「導師、お待ちください」
ベイリーさんも導師を追いかけるように、宝石店へと歩き出した。粉雪さんも無言でそれについて行く。ベイリーさんや導師の戦闘能力を具体的には知らないが、粉雪さんがいるのなら大丈夫だろう。トチくるってあの二人が襲ってきても楽々防げる。
こうなってしまってはしょうがない。店の方は導師たちに任せよう。その間にさっきの店員たちに店の中で何があったか聞こう。もしかしたらあの2人がうまくやったかもしれない。それなら導師の評判を傷つけずにすむかもしれない。
「私たちは店員に聞き込みに行きましょうか」
亜麻猫さんも僕と同じ考えのようだ。凛姉とロナさんも彼女の言葉に肯定の返事を返す。
僕たちは店員たちが避難している集まりへと足を進めた。
次回の更新は9/10になります。




