表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/100

暴走

 大広場ではすでに、大道芸人さんたちがそれぞれの芸をお客さんに見せていた。そんな芸を余所に僕たちは役作りの話を噴水の近くで始めた。


「導師はどんな魔法が得意なんですか? 炎系とか水系とか」

「そういった括りで言うなら、得意なのは木々を操ったりするものですかね。ただ導師が得意とするのは魔法の効果を長時間維持させたり、他の物に付与したりすることですね」


 僕の問いにベイリーさんが笑顔で答えてくれた。そうなってくると、凛姉が導師の一番弟子みたいなポジションで話をしたほうが良いのだろうか。この中で魔力の維持が得意なのは凛姉だ。しかしこの世界のことに疎い。それなら騎士団長でも見ぬけなかった、雷撃のクナイを使った亜麻猫さんを、そのポジションにして話をした方が良いだろうか。


「この噴水も導師が設計に携わったものなんですよ」


 そんなことを考えていた僕を余所に、ベイリーさんは話を続ける。別に誰がどのポジションで奥さんに会うかは、導師が来てから聞けば良いかと思い、僕はベイリーさんの言葉を耳に入れていく。

 ベイリーさんの話ではこの噴水の水は魔法の力によって常に浄化され続けている。そのため災害が起こった際は、この水が飲料水として使われるそうだ。今も小さな子供たちが手で水を汲んで飲んでいる。


 この国の主な災害はなんだろうか。というより地震とかなら魔法でどうにかできないのだろうか。できるのなら、この噴水の水は必要でなくなるのでおそらくはどうにもならないのだろう。いや、魔法関係の事故が多いのかもしれない。それで水道関係が壊れたりしたら必要になってくる。


 僕は最近まで勘違いをしていた。水道の蛇口をひねる時に魔法を使うので、出てくる水は魔法で生み出された物だと思っていた。しかしそれは違うみたいだ。村の水道から出る水は近くの川の水だ。村の地下には魔法で造られた水道管が通っている。魔法を使う理由は、簡易的な浄化とか温度調整の為だそうだ。


「確かに頑丈な造りだな」


 粉雪さんがベイリーさんの言葉にそう返した。彼女がそう言うのだから、本当に造りが頑丈なのだろう。

 彼女は噴水の中央を指差しながら質問する。


「あの女神像の下の台座に浄化装置を付けているのか?」

「ええ、さすがですね。分かりましたか」


 噴水の中央には高い台座の上で佇む、槍を持った女性の石造が置かれていた。粉雪さんは女神と言ったが、僕には槍を持っていることから天使のヴァルキリーに思えた。ただこちらの世界の神話は知らないので、下手なことは言わないでおこう。


 台座から水が360度、全方向に水が流れ出していた。その台座をよく見ると、水が出ている穴の近くに何か宝石を埋め込んでいた。それも全部の穴に違う色の宝石を埋め込んでいる。


 僕はなんとなく宝石店の方を見た。まだ8時30分にもなっていないので店先には『開店準備中』と書かれた立て看板が出ていた。開店時間は9時とも書かれていた。


 もう中に店員さんがいるのかな。接客業だから前準備もしっかりしているんだろうなと思っていたら、ここ最近、なんだかんだで毎日のように会っている二人組が目に入った。それはあの騎士隊員たちだ。


「ベイリーさん。あっち」


 僕は噴水の説明を続けていた彼を呼び、宝石店を指差す。騎士隊員の二人は開店準備中の店から店員を呼び出し、中に入って行った。


 僕たちは一瞬無言になった。そして最初に口を開いたのは凛姉だった。


「えーと。大丈夫ですよね?」

「一応、昨日彼らに『導師はお前たちがやったことに気が付いているぞ』と警告を出したのですが……。多分、昨日の事件のもみ消しだと思いますが……」


 彼は自身なさげにそう言った。僕はどう反応しようか迷った。

 そんな話をしていると、導師がこちらに向かって来ていたことに、ベイリーさんが気が付いた。


「お疲れ様です。導師」

彼はそう言って導師の方へ走り出した。

 

 導師は変装スタイルではなく、素の状態の黒髪でオールバックの姿だった。

 彼の様子からは、騎士隊員の2人が宝石店に入って行ったところを見てはいないようだ。今もこちらをチラチラ伺いながらベイリーさんと話をしている。おそらく普段なら気が付いていたかもしれないが、今回はこちらに目が向いていたので気が付かなかったのだろう。


 ベイリーさんの方も導師にそのことを話している様子はない。導師を心配させたくないのだろう。それに彼らには導師が気が付いていて、あえて無視していることを伝えている。それは、『今回は未遂で済んだから、まだ間に合うから馬鹿な真似は止めろ……』いや、『自分の為に手を汚さないでくれ』と言う思いを込めてだろう。


 ベイリーさんの話では、彼らは導師のことを慕っている。これ以上導師の顔に泥を塗ることをしたりしないだろう。なのでここは、彼らを信じて今見たことは黙っておこう。


 僕はそう思い、話が終わりこちらに向かって来る導師たちを笑顔で迎えようとした。その時だった。


宝石店の方から小さな爆発音が聞こえた。そして店から甲高い悲鳴が広場まで聞こえてきた。


 僕の顔は今、笑顔どころか引きつって強張ってしまった。

すみません。仕事の都合で9月も毎日は更新できそうにありません。

Twitterで次回更新日を呟くようにします。

あとがきでもできる限り次回更新日を記します。

申し訳ありません。次回更新は9/3になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ