現場検証しました。
ジント導師はなぜ浮かない顔をしていたのだろうか。
僕は宿に帰る馬車の中、パーティのみんなが話し合いをしている最中、1人そんなことを考えていた。
あの後、僕たちは騎士隊に追い出された。彼ら曰く、あとはこちらで処理できるからだそうだ。
僕は最初抵抗しようとしたが、粉雪さんを皮切りに、亜麻猫さん、ロナさんも、それなら帰ると言い出した。なので、僕と凛姉はそれに従った。
彼女らも面倒くさくなっていたのだろう。結局茶番に付き合わされたので、ミュージカルの午後1番の部は見られなかった。
あの後は、すぐに宿に帰って来た。一応、みんなで意見のすり合わせをするためだ。もうこの際、怪しまれてもかまわないと言うことで、僕たちの部屋に5人全員集まった。そして、ロナさんが防音装置を置いて、外部に声を聞こえなくした。
「それじゃあ、始めましょうか」
今回も亜麻猫さんが進行役を務めるようだ。ロナさんは部屋に備え付けられたコップを僕たちに渡して廻っている。中は水だ。
僕と凛姉は、自分のベッドに座っている。粉雪さんと亜麻猫さんは、部屋にある椅子に座ってもらっている。今、ロナさんが自身のベッドに座った。それを見てから、亜麻猫さんはロナさんに話を振った。
「ロナは、あいつらがやった確証があるみたいだけど……」
「ええ。エメラルドを隠していた魔力の波長が、騎士隊の1人と一致していました」
「え、そんなの分かるの?」
僕はさすがだなと思っていたが、亜麻猫さんはロナさんの言葉に驚いていた。
「もしかして、証拠にはなりませんか」
「多分、無理よ。説明されても分かる人がいないと思うわ」
ロナさんは亜麻猫さんの言葉に、残念そうな顔をしていた。
「まぁ、犯人が確定したから……」
亜麻猫さんはロナさんを慰めるようにそう言った。
「ちょっといいか?」
そんな2人のやりとりの後、粉雪さんが手を挙げた。
「どうしました?」
「2手に別れて調査していたから、それぞれの組で何があったか話さないか?」
確かに粉雪さんの言うとおりだ。金庫室側で何があったか気になる。
「それでは、メモ取って行きますね」
凛姉はカバンからメモ用紙を出した。几帳面な人だ。
「まずは、金庫室側から話そうか」
そう言って、粉雪さんが話し始めた。そして次は亜麻猫さん。最後にロナさんが、自分が思ったことを話した。
3人の意見はほぼ一緒だった。
騎士隊員の様子が露骨に怪しかった。その一点は全員同じ意見だった。ただ、導師に関しては意見が違った。
亜麻猫さんは、最初から導師もグルと思っていたそうなので、彼が浮かない顔をしていても、計画が失敗したからと思ったそうだ。
粉雪さんは、浮かない顔をしているのは気が付いていたが、理由はわからないそうだ。
そして亜麻猫さんは、彼のその顔の理由を、部下が盗んだことに気が付いたのではと思ったらしい。
「とりあえず、凛もまとめ終わったから、次はそっちの番よ。メモは私が取るわ」
凛姉は、亜麻猫さんにメモ用紙を渡した。そして私から話すと言って、先に話し始めた。
と言っても、店長と店員が言っていたことをそのまま話しただけだ。やっぱり、騎士隊員が笑みをこぼしていたことは気が付いていなかった。これは、僕が補足しなくてはいけない。そう思ったが、粉雪さんが違うところに食いついた。
「あの目玉は何匹って言っていた?」
凛姉は、目玉の調査をしに行こうとしていた時に、ロナさんが控室に来たと言った。そこに粉雪さんは食いついてきた。
そう言えば結局あの目玉を調べていない。
「えーと。つーくん。確か7匹って言っていたよね?」
「うん。そうだったと思う」
「8匹じゃなくてか?」
粉雪さんは少し疑問に思ったようだ。そう言われると、僕が店に入った時7∼8匹くらいいるなと思ったことを思いだした。
「最初、店に入った時8匹いたような気がします」
「ごめんなさい。私はつーくんに引っ付いていたので……」
凛姉は申し訳なさそうに謝った。別に謝らなくても良いのに。あの目玉は凛姉にはつらいだろう。男の僕でも気持ち悪いと思ったのだ。眼をそむけたくなる気持ちは大いにわかる。ただ、意外だったのはロナさんだ。
「ごめんなさい。私も確認できていません」
ロナさんに関しては、そういうのは平気だと思っていた。ただ、確認できなかった理由は違う物だった。
「騎士隊員が怪しいと思っていたので、2人の魔力の波長を探っていたんです。数を数える余裕はありませんでした」
いつもの黒いオーラが出ていなかったのは、そう言うことかと僕は思った。あの時は、凛姉だから抱き着かれてもセーフ判定なのかと思っていたが、意識を集中させていたのか。反省しよう。
「私も8匹いたように思います」
亜麻猫さんは、全員の意見を聞き終わったあと、そう発言した。
いや、あなたは絶対見ていなかっただろう。あんだけ粉雪さんにべったり引っ付いておいて何を言っているんだ。
「本当にちゃんと見ました?」
僕はわざといやらしく笑いながら、亜麻猫さんに聞いてみた。
「えっ。ええ、勿論よ」
亜麻猫さんはすごく慌ててそう言った。僕はこれはテキトウに言っているなと思った。
「亜麻猫、無理に私の意見に合わせなくていいぞ」
粉雪さんも亜麻猫さんの様子がおかしいことに気が付いたのだろう。彼女をたしなめる。
「ごめんなさい。見てませんでした」
人間正直なのが1番だと、僕は改めて、亜麻猫さんを見ながら思った。




