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計画が崩れました②

 あの後は、みんなで街を見て廻った。凛姉とロナさんは楽しんでいたが、僕と粉雪さんは、さっきの件もあり辺りを警戒していた。あと亜麻猫さんは忍者だからか、僕たちが何かを気にしているのに気が付いていたらしい。


 そして宿に帰って来て、それぞれの部屋でくつろいでいる。食事は8時くらいにとろうと粉雪さんたちには伝えた。あとは、亜麻猫さんが尋ねてくるのを待つだけだ。


 粉雪さんが周りに警戒しながら、亜麻猫さんに今日会ったことを伝えてくれるらしい。僕の方もロナさんに、防音の魔法が掛かった星の置物を出してもらっても良かったが、何も聞こえないとなると逆に怪しまれるかもしれないと思い、伝えていない。この後のベイリーさんの話によっては、それも考えなくてはいけない。


 ドンドンとドアを叩く音が聞こえてきた。そして、亜麻猫さんが僕を呼ぶ声が聞こえてくる。


「はい。あれ、粉雪さん?」


 僕がドアを開けると、亜麻猫さんと一緒に粉雪さんもいた。


「今はマークされていないみたいだから、私たちが話を聞いてくる間に粉雪様には、ロナ達に今の状況を説明してもらおうと思って」


 亜麻猫さんがそう言うのなら、本当に見張られてはいないのだろう。もしいたら、諦めるしかない。あと、頭から抜け落ちていたが、僕がこの部屋を空けたら、事情を知らない2人だけになるところだった。粉雪さんだったら何か起こった時、頼りになる。


「それじゃあ、行きましょうか」

「ええ。それでは行ってきます」


 凛姉たちは、なにかあったのだろうかと首を傾げていた。けれど、真剣な話だと感じ取ったのか、なにも言ってこない。


 僕は亜麻猫さんの2歩後ろを付き従って行く。部屋の場所は受付ですでに聞いている。宿に戻ってきた時に、受付に戻った報告をしに行ったら、女将さんが僕と粉雪さんにメモを渡してくれた。そのメモにはベイリーさんから報告は受けているから、この部屋を好きに使ってくれと、部屋の位置の絵と一緒に書かれていた。


「少し早いけど、中にいる気配があるから入るわね」


 亜麻猫さんは、ノックもせず扉を開ける。僕も後に続いた。


「早いですね」


 ベイリーさんは椅子に座って部屋の中で待っていた。

 この部屋は物置だろうか。壊れたベッドや机や椅子が置かれていた。その中から、壊れていない綺麗な椅子をベイリーさんは僕たちに渡してくれた。


「それで、ジントって言う導師が何でツヨシを敵視してるのよ。プライドの問題?」


 亜麻猫さんは、どちらかというと気が短い。単刀直入で彼に質問をぶつけにいった。

 それとは関係なくではあるが、彼は答えにくそうに口を開いた。


「ごめんなさい。それは分かりません」

「ハァー? あの感じならそうとしか思えないんだけど?」


 確かに、僕に対してのジント導師の態度はそうとしか思えない。しかし、彼はそれを否定する。


「あの方は、昔はそういうことに興味がなかったんです。実力はあったのですが、上におべっかを使ったりしなかったので出世できなかったタイプです。ですけど、そんなことなど気にせず、騎士隊に面倒見よく接していました」


 僕は失礼だが意外に思った。それが本当なら印象が180度変わる。


「全然、そうは見えないわ……。いや、凛に対しては小声で素晴らしい才能だとか言っていたような?」


 あの時、僕はジント導師が驚きの言葉を言っていたのは聞こえた。しかし、褒め言葉は聞こえていなかった。けれど、亜麻猫さんが聞こえたのならそうなのだろう。


 ジント導師は、褒めることができない人ではない。ただし、そうなると僕だけが褒められず、貶されていることになる。


「なんで、僕だけ変な扱いを受けてるんですかね?」

「分かりません。ただ、そのことで注意しておくことがありましたので、こちらに来ていただきました」


 ベイリーさんは申し訳なさそうに続きを話しだした。


「騎士隊の中には、導師を慕っている者が何名もいます。出世に興味がなく、下の者に優しく接してくれる理想の上司だと。そんな彼があなたを敵視しています。彼自身はあなたに危害を加える人ではないと私は思うのですが……。部下が勝手にと言うことが十分ありえるんです」


「何よそれ!? こっちは何も悪くないのに」


 亜麻猫さんが怒りをあらわにして、ベイリーさんに突っかかって行く。それに対して彼は、さらに申し訳なさそうに僕に謝ってきた。


「そうならないよう目を光らせますので……。とりあえず、暴力沙汰だけは避けてください。むりくり逮捕しようとするかもしれませんので」


 とりあえず村に帰るまでの間は、ベイリーさんが僕たちに同行してくれるそうだ。そして、僕たちが村で移籍関係の話をしている間に、ジント導師の件を解決しておくと言ってくれた。


「と言っても、そんなすぐに解決するの?」


 亜麻猫さんがもっともなことを聞く。移籍の話なんてすぐに話し終わるだろう。


「たぶん最低でも2週間は村にいることになりますよ。王もそれを見越して、エクスとワイに休暇を出そうとしてますし」

「「え?」」


 僕と亜麻猫さんは一緒のタイミングで声を出してしまった。


「5人も引き抜く準備が出来ていなかったんです。亜麻猫さんと粉雪さんはまだしも、ツヨシさんたちは宿に登録して1週間しかたってないので……」


 彼の話では、粉雪さんたちは宿に登録された日に、ズィーさんが主都に連絡を入れていたので、替えの騎士隊員の準備ができていたらしい。


だが、僕たち3人の分は報告を受けてから日が浅いので騎士のリストアップすらできていない。それに、思っていた以上に規格外なので普通の騎士ではメリー村の女将が納得しないかもしれないから、本腰を入れて説得するそうだ。


「5人揃って主都に来たいですよね?」

「まぁそうね」


 彼の問いに、亜麻猫さんが間を空けずに答えてくれたのを嬉しく思いながら、僕も頷いた。

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