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計画が崩れました①

 昼ご飯も食べ終わり、ベイリーさんも仕事に戻った。あとは自由時間となり、女性陣はショッピングに出かけた。出発前の約束通り、荷物持ちでもしようかと思ったが、下着も買いに行くとのことだったので、何も言わずに送り出した。


 凛姉以外露出の多いメンバーだが、何となく気が引けた。それに、女性陣で仲を深めてもらいたい。僕がいると、ロナさんは僕にべったりだし、粉雪さんも亜麻猫さんより僕を優先する。そして、亜麻猫さんは機嫌が悪くなる。それに、凛姉にも同年代の友達を増やしてもらいたい。


 しかし、送り出したは良いが、特にすることがない。

 最初は冒険者の宿にでも顔を出しておこうかと思ったが、それは明日、みんなそろって行けば良いかと思い、行くのを止め、中央広場をうろうろしている。


 中央広場では店が立ち並び、ビアガーデンみたいになっている。そして、ここぞとばかりに、大道芸人が魔法で芸を披露している。炎を使った曲芸には、おひねりがたくさん飛んでいた。


「ノウハウが無いしな」


 あれくらいなら僕でもできるのではないかと思った。しかし、おそらくここには縄張りみたいなものがあるだろう。勝手にやって変な輩に目を付けられたら面倒だ。それに許可を取るにも誰に取ればよいのかわからないし、そこまでしてやりたくない。


 ただ、お金は稼ぎたい。


 昨日はあきらめたが、今日、再度宝石店を見てしまったら、やっぱり凛姉にプレゼントしたい欲求が出てきた。


 この街にはカジノがあるから、そこで稼げるのなら稼ぐのだが、そううまくはいかない。イカサマができないように、魔法が使えなくなる指輪をはめての勝負になるそうだ。それなら行く意味がない。自分は運が良い方だとは思わない。そもそも、そういうところは胴元が勝つようにできているのだ。


 やっぱり、冒険者の宿に行って依頼板だけでも覗いてこようか。


 そんなことを思いながら、僕は未練たらしく、大道芸ではなく、宝石店の方を見ていた。すると、ジント導師が白髪姿のほうで店に入っていくところを目撃した。


 勤務時間中じゃないのかなと思ったが、あまり関わりたくないので、僕は急いでその場を離れ、宝石店とは中央の噴水を挟んだ反対側の、冒険者の宿に隠れるように入った。


「いらっしゃいませ」


 入るなり、受付の女性の1人が挨拶をしてきた。

 普段なら、軽く会釈してからその場を去るが、今度からこちらでお世話になることになるのだ。一応自己紹介……。


 やっぱり面倒くさい。そもそも、僕たちが登録することは、宿の方に連絡は来ているのだろうか。なんとなく受付の人に、今度からお世話になりますとは、今の段階では言いづらい。もし連絡がいっていなくて、受付の人に怪訝な顔をされたら1から説明しなければならない。


 幸い、依頼板は僕の目の届く範囲にある。なので僕は、会釈をして「こんにちは」と挨拶を返して、依頼板のほうへ走ろうと思った。しかし、それは杞憂に終わった。


「お、ツヨシ、奇遇だな」


 背後から声が聞こえたので後ろを振り向くとそこには粉雪さんがいた。


「あれ? 買い物はもう終わったんですか?」


 それなら、僕もみんなに合流しようかと思ったが、どうやら違うようだ。


「他のみんなは、まだ服とか選んでいる。私は着飾るのに興味はないからな。先に宿で依頼板を見てくると言って、別れたんだ」


 粉雪さんは、そう言いながらカウンターへと向かう。そして、自身の冒険者カードを受付に見せていた。


「メリー村所属の粉雪さまですね。連絡は受けております。そちらの方はツヨシ様ですか」

「ああ、そうだ」

「それでしたら、ツヨシ様も依頼板の方へどうぞ」


 すでに連絡は受けていたのか。しかし、なぜ粉雪さんはそれを知っていたのだろうか。今の動きは最初から受付が連絡を受けていることを知っている者の動きだろう……。いや、僕が面倒くさがりなだけなのだろうか。


 冒険者カードは会社の社員証みたいなものだ。だからそれを出して、自身の身分を証明し、連絡がいっているか聞こうと彼女はしようとしていたのかもしれない。


 しかし、それは違った。


「ここに来るまでに、ベイリーさんに会ってな。その時にもう連絡はしているから、カードを提示すれば依頼を受けてもらっても大丈夫だと聞いたんだ」


 なんだ。そうだったのか。ただ僕の場合、そういう話を聞いていても、もしかしたらこの受付さんにまでは話が通っていないかもしれないと思い、尻込みしそうだ。やっぱり、粉雪さんはシャンとしている。


「それでどうなんだ。明日1日は依頼の日に空けるか? 私は何か受けたいと思っていたんだが……」


 粉雪さんはこっちを見ず、依頼板を見ながら言った。何となく、ウキウキしているような感じだ。


 と言われても、凛姉たちの意見も聞かなくてはいけない。亜麻猫さんは粉雪さんが行くと言えば来るだろう……。


「あ」

「どうした?」


 僕は思わず声を出してしまった。今の状況はマズイ。


 今は、僕と粉雪さんの2人きりだ。他の3人の内2人は機嫌が悪くなり、1人はいらぬ誤解をする。


「ちょっと、僕さっきの店に忘れ物してきたので取ってきます」


 僕は、粉雪さんの目を見ずに嘘を言い、一目散に宿を出た。

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