説教を食らいました。
あの後、凛姉とロナさんの問い詰めは30分程度で終わった。それも、亜麻猫さんが終始フォローに回ってくれたおかげだ。ただ彼女が、粉雪さんに告げ口しなければこんなことにはならなかった。しかし、あれは僕が完全に悪い。
彼女をからかうこともそうだが、亜麻猫さんが本気で嫉妬してしまったら御者の彼、ベイリーさんに襲いかかっていたかもしれない。それは僕の本意ではない。これは亜麻猫さんが僕をすぐに庇わなかった理由の1つだそうだ。
最初は、からかってきた相手でもあの場面なら助け舟を出そうと思ったそうだ。しかしそのからかいで、関係ない人を危険にさらす可能性があったことを自覚してほしかったのであえて宿まで我慢しろと言ったのだそうだ。
ただ、彼女の方も、自分が抑えれば良いのは分かっていたらしく、その点については僕に謝ってきた。
僕は彼女の謝罪に対して改めて謝った後に、宝石の石言葉の本を渡した。
亜麻猫さんは最初、どういうつもりなのか分からそうにしていた。それを見て僕は、凛姉にエメラルドの指輪のプレゼントをする予定だと伝えた。そして値段が許すなら自分の分も買うつもりなのも言った。
「亜麻猫さんも臨時収入で粉雪さんとペアの指輪買ってみてはどうですか。それで調べてみてください。何か良い宝石が見つかると良いですね」
「……。まぁ、これで粉雪様を騙そうとしたことは不問にするわ」
ちなみに、すぐに庇ってくれなかった理由の7割はそれが原因だそうだ。
亜麻猫さんは、僕と別れた後すぐに自室に帰った。
部屋は全部で2部屋借りた。亜麻猫さんと粉雪さんで1部屋。僕と凛姉とロナさんで1部屋だ。
僕は、亜麻猫さんと話していた自室前の廊下から離れ、宿の玄関前に来ていた。ベイリーさんと街巡りをするためだ。
本当は、ロナさんと凛姉の機嫌を取っていたほうが良いとは思う。しかし、彼のほうも僕たちを接待しろと上司から言われている。だから誰かは行かなければならないが、女性陣は誰も行かないつもりでいる。
それぞれ、男と食事に行くのが嫌だとか、おごってもらうのは気が引けるなどと理由があったが、それで誰も行かないのは彼の立場がない。だから僕だけでも連れて行ってもらおうと思った。
彼も先の修羅場を見ているので、キャバクラとかには僕を連れて行かないだろう。それはロナさんたちも理解しているはずだ。
そうでなければ、今頃僕は部屋のベッドに鎖で縛られていることだろう。
そんな恐ろしいことを思っていたら、ベイリーさんが普段着に着替えてやって来た。
「お待たせしました」
「いえ、こちらこそよろしくお願いします」
ベイリーさんはラフな格好ではあったが、騎士なのでお給金は結構もらっているのだろう。メリー村の村人より綺麗な服を着ている。ちなみに僕は、ジャケットは部屋に置いて来た。
僕が死んだのは7月だった。その時は、会社の方針できちんとした会には、ジャケットをできるだけ着て出席するようにと言われていた。ただそんな変わった会社でも、8月になったら話は別だ。
そしてこちらの世界も、元いた世界の8月に相当する日付になっていることを知った。だからもう着なくても良いだろう思い、ワイシャツにスラックスで来た。とりあえず浮かないだろうとは思う。ただ王と会うときは、一応ネクタイも絞めてジャケットも手には持っておこう。
「それで、女の子がいるお店は――「殺されます」
ベイリーさんは苦笑いで僕に聞いてきたので、僕はそれを途中で遮って返事をする。
「ですよね。安心してください。普通の食事処ですから。それとは別に、どこか他に行きたい所とかありますか?」
おそらく彼は、6人で食事をしてその後、僕を連れてキャバクラに行くつもりだったのだろう。しかし予定は狂い、食事だけ、それも2人となったので、時間も経費を余りまくっているのだろう。
これは幸いだ。開いているかは知らないが、宝石店を紹介してもらおう。それで時間は潰せる。予算については、明日の朝ご飯でもおごってもらえば良い。ただ、一応探りを入れておこう。
「宝石店の場所を知りたいです。それと、女の子のいる店に一緒に行けないのは残念なのですが……申し訳ありません」
「いえ、私はそういった場所が苦手なので、こちらとしては助かります。それでは、食事の前に宝石店に行きますか。9時まで開いていますので」
彼は、亜麻猫さんと違い嘘をついているのか分かりにくい。それでも一応は、むこうもこちらを気遣って、行きたくないと言ってくれたので、この件は気にしないでおこう。それよりも宝石店だ。
僕はポケットからスマホを出して時間を確認する。8時30分ちょうどだった。
このスマホは壊れていた自分のものを1日がかりで魔法を使って直した物だ。充電の方は魔法を使って割と簡単にできるのでこれからも使っていける。ただしネットや電話はできない。
あと、凛姉の画像は無事だった。これからも隙を見て撮っていこうと思う。
「すみません。お願いします」
「別に大丈夫ですよ。食事処に行くまでの道にありますから」
こちらの世界には電気は無いが、魔法はある。
魔法で火を灯してしているのであろう。街灯の、淡いが先を見通すには十分な光を感じながら、僕たちは中央広場にあるという宝石店を目指して歩き始めた。




