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初依頼、完了しました。

「え、ちょっと、何個投げ込んでるんですか!」


 亜麻猫さんは、ゆうに10個は爆竹を穴に投げ込んだ。もうすでに何度も大きな破裂音が穴の中から聞こえてくる。

 

 僕はてっきり、4、5程度投げ込んで、中のゴブリンが逃げ出てくるのを待つのかと思っていた。けれど今思うと、ゴブリン達もわざわざ爆竹が破裂しているほうには逃げないだろう。知能が低いのだから、もう一方の安全そうな穴の方へ、罠かもと疑わず素直に逃げると思う。それなのに、もう一つの穴をふさいでしまっている。粉雪さんは最初から逃げ出してくるのを待つつもりはなかったのだろう。


 亜麻猫さんは聞き込みに行く前は、飛び出て来るかもしれないと言っていたが、多分さっき粉雪さんと話し合っていた時に、爆竹で倒してしまおうと指示を受けたのだろう。

 

 僕は慌てて、亜麻猫さんを止めようと、彼女の腕を掴もうとした。しかし――。


「一回止めてって、うわっ!!」


 彼女はものすごい力で爆竹を投げ込んでいたようで、僕は彼女の手の振りを止めることができずに、払いのけられてしまった。亜麻猫さんは、しまったという顔をしていた。


「ごめんなさい――。あっ」


 彼女はとっさに謝って、手を伸ばしてくれたが、僕はよろけてしまい、そのままゴブリンの棲家に転げ入りそうになった。だが……。


 ~こっちへ~


 ロナさんがそう呟くと、僕の体は転倒寸前の所から立ち直り、そのままロナさんのほうへ引き寄せられた。


「大丈夫ですか?」

「はい、ありがとうございました」


 僕は、なぜか分からないが、何となく懐かしい気分に浸りながら、ロナさんにお礼を言う。すると、亜麻猫さんが青い顔をしながら、僕に謝ってきた。


「ごめんなさい。怪我は……。無いわね、良かったわ」


 彼女は、ロナさんの顔を見ずに、最初から僕の様子を見ていた。そして、僕が怪我していないのを確認して、ほっと一息吐いた。


 失礼な話だが、なんとなく意外に思った。それと同時に嬉しかった。

 今までなら、青い顔の理由はロナさんが恐ろしかったからだろう。しかし今は、僕のことを純粋に心配してくれたようだ。その証拠に……。


「ロナもありがとう。助かったわ」


 亜麻猫さんは、ロナさんに頭を下げた。その顔は恐怖になど支配されていない。純粋にうれしそうだった。


「気を付けてくださいね」


 ロナさんも、なにか感じるところがあったのか、注意するだけだった。


 それはそうと、爆竹をあんなに投げ込むなら、僕が水攻めにしたほうが速い。近くに畑があると言っても、これ以上爆竹を使うなら同じくらい畑に被害が出る。


 一言、粉雪さんに進言しよう。そう思った時だった。


「ギィイイイィ」「ギャー――」


 穴の中から、背丈が50㎝から100㎝の間くらいの人型の動物が、3匹飛び出してきた。そしてそのまま、粉雪さんにぶつかりそうになったが……。


「ふん」


 粉雪さんは準備していたので、刀を鞘から抜き放ち、3匹の首を一発で切断した。


 首を切断したので、人間と同じで、切断された首の、胴がついているほうから血が噴水のように吹き上がった。そしてそれは粉雪さに降りかかったように見えた。しかし、彼女には一滴も血が付いた様子が見えない。


 そういえば、なにか不思議な力で護られていると言っていたのを思い出した。しかし僕は自身の事について驚いた。


 人間ではないとはいえ、人型の動物が目の前で殺されたのだ。もっと動揺するかと思っていたが、そんなに何も感情が湧かなかった。それよりも、今のがゴブリンだろうかと考えていた。


「よし、それじゃあ亜麻猫、次は5個投げ込んでくれ。ゴブリンが飛び出して来たら私が斬るから」


 粉雪さんの言葉で僕は、この世界ではこのくらいのことは普通なんだと理解した。ただ、この感覚に慣れてしまうと、来世を姉と一緒に歩むときに、困りそうだ。


 こちらの世界で来世を歩むのなら問題ないが、元いた世界でなら、この感覚は捨て去った方が良いだろう。お金を稼がなくてはならないから、ある程度はしょうがないが、できるだけ染まらないように頑張ろう。


 僕は、また穴の中から飛び出してきたゴブリンの首が、叩き斬られるところ見ながらそう思った。


◇◇◇


 あの後は、昼まで穴の側で待機していた。亜麻猫さんの爆竹は全部で30個ほど使った。そしてゴブリンは9体退治した。おそらく棲家にはもうゴブリンはいないだろう。そう思い、昼の鐘が鳴ったと同時に、宿に依頼完了の報告に行った。


 その後、一応出ないとは思うが、万が一のことを考え、護衛も兼ねて畑仕事を手伝った。

 3時の鐘が鳴ったところで、畑仕事は終了となった。手伝いの報酬として、トマトときゅうりを頂いた。


 昼ごはんを食べていなかったこともあり、お腹が空いていたので。生でそのままトマトを食べた。甘く、みずみずしくておいしかった。残りのトマトときゅうりは、明日の昼、ロナさんがサンドイッチの具材に使うとのことだった。


 そして今は、宿のカウンター前にいる。今回の依頼の報酬をもらうためだ。


「はいよ。それじゃ、ゴブリン討伐は一応完了としておくよ。報酬は1万G……。1人2500Gだよ。カードに入れとくかい? それとも現金がいいかい?」


 女将さんが僕たちに4人に聞いてきた。思っていたよりももらえるようだ。


 後から聞いた話だが、ワイバーンのほうはロナさんと山分けと言うわけではなく、他にも戦闘に参加していた冒険者と山分けとのことだった。それに、羽が傷つきすぎて商品にならなかったから50万Gにしかならなかったらしい。


「とりあえず、現金でもらいます」「私も」


 僕とロナさんは現金でもらうことにした。この国が、硬貨を使っているのか、紙幣を使っているのか知りたかったし、一応、少しぐらいは現金を持ち歩いておきたい。


「私たちはカードに入れておいて頂戴」


 亜麻猫さんと粉雪さんは女将さんにカードを渡した。


「それじゃあ、まずあんたたちへの支払いだね。2500Gずつだよ」


 僕たちは現金を受け取った。1000と書かれた紙幣が2枚と500と書かれた硬貨が一枚渡された。ちなみに紙幣にはなにかお城のようなものが描かれており、硬貨の方は、花卉が描かれていた。材質はよくわからなかった


「それで、あんたたちは……。はい、入れ終わったよ」

「ありがとう」


 2人は、女将に礼を言ってカードを懐にしまった。


「夕食まで1時間くらいあるし、今日の反省会をしようか」


 粉雪さんの提案に僕たちは頷き、近くのテーブルの席に着いた。

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