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お互いにやることを終えたので、作戦開始します。

 僕は、後ろからの歓声を無視して、亜麻猫さんのもとへ向かった。


「おまたせしました」


「いや、目的の女将さん。あんたの後ろよ」


 亜麻猫さんが少し呆れていた。そういえば、一緒のタイミングで外に出たのだった。

 

 僕は後ろを向いた。すると、ちょうど女将さんと目があった。


「ん? 私に何か用かい?」


 僕は亜麻猫さんに目配せをした。

 亜麻猫さんが顎を女将さんのほうへ振ったので、先ほど言っていた内容を聞いてみることにする。


「ゴブリンの棲家見てきたんですけど、微妙な角度の奥が見えない穴だったんです。なので、爆竹を使ったり、最悪の場合、水を流し込んだりしようと思うんです。それで、穴の中に人が連れ去られていたら困るので、今外に出ている人の記録とか行方不明者とかの名簿を見せて欲しいんです」


 とりあえず、亜麻猫さんとさっき話していた内容は言えたと思う。確認の為、亜麻猫さんのほうを向くと、小声で「及第点ね」と言ってくれた。


 僕は女将さんに視線を戻す。女将さんは、頷いてから返事をしてくれた。


「はいよ。ちょっと待ってておくれ。持ってくるから。それと行方不明者は、この村では記録されていないから。それは気にしないでいいよ」


 そう言って女将さんは受付のカウンターへ足を向けた。その間に亜麻猫さんが「何か質問は無い?」と聞いてきたので、行方不明者がいないのはどういうことか聞いておこうと思った。


 この世界でも特殊な事例だったようだが、ワイバーンが村襲ってきた。それを除いても、今現在、ゴブリンが村近くに棲家を造っている。

 この世界は、元いた世界に比べ、死ぬ可能性が高すぎる。それも食べられたり、跡形もなく踏みつぶされたりして、死体が残らない可能性が高い。それなのに行方伊不明者が1人もいないのはおかしいと思った。


 ただ、答えは簡単だった。


「村によって違うんだけど、この村では、半年間失踪したままだったら死亡扱いになるの。だから本当は、死んでいない人もいると思うんだけど……。今回のゴブリンには関係ないわ。あいつら半年も人間を、非常食としてとっておかないから」


 元いた世界の法律番組で、消息が分からなくなったのが沈没した船に乗ってからとか、通常より死んでいる可能性が高い場合は、1年で死亡が認められると言っていたと思う。この世界なら、元いた世界と比べたら日常がその状態だ。だけど、半年は短いなと思った。


 しかし今回は、亜麻猫さんが言う限りでは、関係ないとのことなので気にしないことにした。


「はいよ。おまたせ」


 そんな話をしていたら、女将さんが戻ってきた。手にはA4サイズくらいの紙を1枚持っていた。


「これが、外に出ている人のリストだよ。持ってていいから」

「ありがとうございます」


 僕はその紙を受け取り、亜麻猫さんにも見えるように、彼女の隣に立った。しかし彼女は、それに目を移さず女将さんの顔を見ていた。


「これ、朝から変わっていないんでしょ?」

「ああ、変わってないよ。昼まで、できる限り出すなって言われているからね」


 どうやら、亜麻猫さんと女将さんは先に話を詰めていたようだ。そういえば、ある程度は棲家の事を聞いていると言っていたな。


「まぁ。できるかぎり早く解決しておくれよ。薬草のほうはまだ、水あげなくてもいいけど、野菜の方がね……」


 女将さんは苦笑いで僕たちにそう言ってきた。僕は反射的に頭を下げ謝った。


「すみません」


「いや、謝らなくていいんだよ。これも新人研修だから。それに、あんたと連れのロナっていう子には期待してんだから。頑張っておくれよ」


 その後も、少し女将さんと、亜麻猫さんを交えて話した。どうやら先に女将さんが、粉雪さんに僕たちの研修的なことを持ちかけたようだ。


 僕と亜麻猫さんは、手短に名簿を確認してから女将に礼を言い、外に出た。


 僕らが出るタイミングを見計らっていたので当然だが、先ほどの野次馬はいなくなっていた。


「粉雪様たちと合流しましょうか」

「そうですね」


 僕たちは、ふたたび村の外へ出た。


◇◇◇


「あれ? 粉雪様、もう穴探し切り上げたのですか」

「ああ。ロナさんが1つ見つけただけだ」


 亜麻猫さんが、粉雪さんとお互いの状況を摺合せ始めた。その間に、僕はロナさんと話しておこうと思った。


「どうでした?」

「探知魔法を使いました。聖水も使わずに済みました」


 ロナさんのその言葉に僕は、彼女は簡単な魔法なら聖水を使わなくても大丈夫なんだと思った。


「そちらはどうでしたか?」


 僕は正直どこまで言えばよいのか悩んだ。

 まず姉と僕とロナさんの関係を、ごちゃ混ぜにしたことは黙っておこう。あとで時間をかけて事後承諾を貰おう。具体的に言うと、姉の様子を見せてもらった後に打ち明けよう。


 次は、子供の件だがこれは別に言う必要はないと思ったが、少しとはいえ酒を飲んでしまっている。一応、これは伝えておこう。


 あと言うべきことは……。村の人が水やりとか畑仕事しなくちゃならないので早めに終わらせようと言っておこう。


 僕はそれらをロナさんに伝えた。特に揉めることはなかったので、ロナさんの機嫌を損ねることはないだろう。そんな風に思っていた。


 僕は話し終えた後ロナさんの顔を見た。彼女の顔から、なぜかどことなく昔を懐かしんでいるような雰囲気を感じた。なんとなく、ロナさんになにかあったのか聞いてみようと思ったら、粉雪さんたちがちょうど話し終えたようだ。


「またせてすまなかった」


 粉雪さんが僕の側に近寄ってきた。僕はとっさにロナさんの顔を見たが、まださっきの顔のままだった。僕は安心したが、それを亜麻猫さんが壊した。


「ちょっとロナ借りていくわよ――。ロナ行くわよ」

「え、あ、はい」


 亜麻猫さんがロナさんを連れて行く。ロナさんは急に手を引かれたので変な声を出してから一緒について行った。


 まずい。ここは先に粉雪さんと話を詰めておいて、2人が帰って来しだい、私語を話せない状況に持ち込むしかない。


「それでどうするんです? 穴塞ぎに行きますか?」

「塞ぐのはもうしたし、ロナさんが魔法で地下の空間把握をしてくれた。大雑把だがな。あとは、爆竹を投げ込んで様子をみよう。2人が帰って来しだい、亜麻猫に言うよ」


 あれ、さっきロナさんは空間把握なんて言っていなかった。それにそんな高度そうな魔法を使ったのに酒を飲まなくてすむのかと思った。


「あの、その把握した空間ってどんなでした」


 そんなことができるのなら、ゴブリンが何匹いるとかが、わかりそうだ。だから粉雪さんに聞いてみたが、ガッカリな答えが返って来た


「さっきも言ったように大雑把で、棲家の大きさが何となく分かっただけだ」


 粉雪さんの話では、そんなにきちんとした結果が分かったわけではないらしい。それに中に何がいるとかも分からない。


「お、帰って来たな。それじゃあ、亜麻猫。爆竹を頼む」

「分かりました」


 本当に2人が帰って来るなり、粉雪さんは亜麻猫さんに爆竹を頼んでいた。


「ツヨシさん。亜麻猫さんに何か言いました?」

「その話はあとにしましょう。ほら、亜麻猫さんがもう爆竹に火を点けましたよ」


 僕はロナさんの言葉を受け流した。


 そのあとすぐ、亜麻猫さんが次々と爆竹を棲家の中に投げ込んでいった。

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