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空想遊戯  作者: 夢想一夜
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想造

 ――『想造(そうぞう)


 空想したモノを具現化(ぐげんか)する空想遊戯(くうそうゆうぎ)の1つ。

 具現化できるモノに限りはないが、『想造物(そうぞうぶつ)』の精度や強度は、『想造主(そうぞうしゅ)』の『空想力(イメージ)』に大きく影響を受ける。


真紅の神速戌(クレナイハウンド)


 無駄を一切削ぎ落とした流線的なフレームを有した真紅のバイクは、殺風景(さっぷうけい)な高層ビルの屋上で圧倒的な存在感を放っていた。


 全長3080mm。最大出力は305hp。

 カウルから少し奥まった位置にあるフロントライトは、鋭い眼光で周囲の暗闇に対して(にら)みを利かせている。


 ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛


 限りなく漆黒に近い真紅のバイクは、地鳴りのような唸り声をあげて、ご主人様の騎乗を今か今かと待ちわびている。


「いつ見ても惚れぼれするね」


 チビマルは想造されたバイクを前に、ウットリとした声をこぼす。


「お前にもわかるかチビマル。排気量8500CC。500馬力を優に超えるモンスターマシンだぜ。少々じゃじゃ馬すぎるのが(たま)(きず)だがな」


「バイクもそうだけど、ボクが褒めたのはキミの想造力(そうぞうりょく)の方さ。これだけの物質を瞬時に具現化できるキミの空想力には、正直、驚きを隠せないよ」


「俺を褒めたって何にもでねーぞ。でもまぁ、昔から想像力だけは豊かだって親父(オヤジ)によく褒められてたっけな」


「なるほどね」


 チビマルは妙に納得した様子で、ピョンとバイクの後部に飛び移った。


「それじゃあ、さっそく真理の探究を開始しよう!まずはどうするカイト?」


「『真理の行方(ゆくえ)』も気になるが、『ヤツら』の動向が少し気にかかるな。ま、とりあえず『あいつら』と合流しとくか」


 そう言うとカイトはケータイを取り出して、あいつらと呼ぶうちの1人『ミカゲ』に電話をかけた。


 ――ガチャ


「もしもーし!ミカゲでーす!」

 電話口から(少し頭の弱そうな)可憐な少女の声がする。


「よぉ、ミカゲ。俺だ。今どこ?」


「あ、カイトだ!!今ねーシブヤのキャメロットのあたりにいるよー」


(ここからそう遠くないな)


「『ハルマ』も一緒か?」


「うん。隣にいるー!」


「了解。とりあえず『ハチコウ』前で」


「オッケー!気をつけてねー!」


 ガチャ――


 カイトは電話を切ると、紅い鉄風の異名を持つ真紅のバイクに(またが)った。

 アクセルを強く握り、愛戌(あいけん)の感触を確かめる。


「ミカゲと合流する。ハルマも一緒だ」


「これで『空練遊隊(くうねるあそびたい)』全員集合だね」


「『ほぼ』全員な」


「――そうだったね。失礼」


 チビマルの直立した大きな耳は、失言を詫びるかのように大きく垂れた。


(必ず俺が――)


 カイトは(おのれ)の覚悟を誇示するかの如く、力強く握ったアクセスを全力で(ひね)った。


 ドゥ゛ル゛ル゛ル゛ルルルルルルルッッ!!!!!


 愛戌はご主人様のゴーサインに呼応して、喜びの咆哮(ほうこう)にも似たエンジン音を響かせて、高層ビルの屋上から地上へとダイブする。


 カイト達は一瞬、空に投げ出されるかたちとなったが、すぐに高層ビルの壁面にバイクをピタリと着地させて地上へ向けて疾走する。


 まるで、魔王の魔の手から逃れるシューベルトの戯曲(ぎきょく)のように。


 ――目的地はシブヤのハチコウ前。

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