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34話 光の書争奪戦2

「もしもし、神里君どこにいるの?」


「かなり、ヤバイので宮本さんの家に行きます」


 伊織に電話をし、詳しく話せる状況じゃない護。ガブリエルに追われながら必死で伊織の家まで走り出す。


 伊織の家までもう少し、回り込んで護の前立ち塞がるガブリエル。


「観念しろ」


「うおぉーふざけんなー」


 もう少しで避難所(伊織の家)に着くのに、振り出しに戻る。今度は河原まで逃げるが執拗に追いかけるガブリエル。もう、後ろは川で落ちたら流される。


「ち、ちくしょう、こうなったら」


 空を飛ぶ魔法エアーボードの魔法を使おうとしたのだが……乗り物となるスケボーがジブリールに置きっぱなしであった。追い込まれた護、完全に手詰まり状態。


「さぁ、観念しろ」


 当初の目的を完全に忘れていたガブリエル。護に報復してやる事しか頭にない。


「覚悟しろー!」


「やだ!」


 ガブリエルの渾身の一撃が、護の炎魔法により完全ガードされ、ガブリエルは手に火傷を負った。


「アッチィーー! コラッ防ぐんじゃねー」


「防ぐわ!!」


「神里くぅーん。ハァハァッ、み、見つけた」


 護を心配して、家の前で待っていたのだが。あまりにも遅いため、テレポートを使い護の元へやって来た伊織。

 全力疾走をしたかの様に、息を切らせ呼吸を整える。


「心配して来てみたら、その女の子は誰なのかなぁ?」


「み、宮本さん。こいつに追われてました」


 白い目で護を見る伊織。

 護を追い回し、ボロボロの姿を見たガブリエルを見て、護が何かやったのかと思い込む。


「神里君! いたいけな女の子に何をしてるの!」


「えっ!? 俺?」


「うえぇーん。お姉ちゃんあいつが、私にパンツを見せろと強要してくるのぉ……」


「はぁ!? お前ふざけんなよ! 散々人を殴り殺そうとしたりしたよな? たい焼き食わしてやったよな? 後、金貸せとか恐喝したよな?」


「ふーん……神里君、他に弁解は?」


「宮本さん、だから、違うからー」


 完全に不利な状況に陥った護。天使なのに、悪魔の様なこの演技。チラリと護を見て、舌を出すガブリエル。


 ………ポカリッ!!


「痛ってぇーー! 誰だ?」


「誰だ! じゃねーよガブリエル。どこをほっつき歩いてた? 探したぞ」


「げっ!? ラファエル。アタシだって探したんだぞ」


 はぐれて、やっと再会したラファエルとガブリエル。その矢先に喧嘩をおっ始めて収集がつかなくなっていた。


「喧嘩しないで下さい!」


 伊織の一喝により、その場は丸く収まり改めてお互いに自己紹介をする。


「お前が魔法使いだったとはな……しかもD級かよー」


「あぁっ! お前こそダメ天使じゃねーか」


 笑いを堪えながら、護に指をさすガブリエル、護も反撃と言わんばかりに言い返すが、ラファエルと伊織が二人の頭をげんこつで叩いた。


「それで僕達は、光の書の行方を追って人間界までやって来たが。何か思い当たる節はないかい?」


 護はふと、考えた。あの喋る本の存在、何で急に護の家に落ちていたのか? さらに、ジブリールの事も知っていた口調ぶり……。


「は、はははっ……まさかね……」


「ちなみに、光の書はこれだ」


 ガブリエルが胸元から写真を取りだすと、護の顔が青ざめてしまった。


「マジかよ……」


「どうしたの? 神里君」


 伊織がチラリと護の表情を見て何か感づいた。


「い、いやぁ……あの本……」


「早く言いなさい!」


「バカ護、知っているならさっさと言え!」


「バカリエル……わかったから手を放せ」


 あまりにも話を濁す護に、ガブリエルまでもが護の胸ぐらを掴み迫り来る。しかも、お互いにバカ呼ばわり。


「いやね、この前家に落ちてきた……」


「「えーっっ!!」」


 それから、光の書に付きまとわれた事を洗いざらい話す護。


「そういう事は早く言えー!」


 護の胸ぐらを再び掴むガブリエル。

 そんな事を言われても、あれが光の書だなんて知るわけがない護。


「まぁ、こいつは今、ここにいる……あれ?」


 服のポケットに手を入れ手探りをするも、見当たらない……。ガブリエルに追われた時になくしてしまった事に今気づいた。


「おいっどうした? 早く出せ」


「………くした」


「あぁっ?」


「すいません……なくしました」


「お前なぁー、世界の危機だぞ! 何やってんだお前ー」


「お前が追い回すからだろうーがぁー!! バカエリル」


 お互いに責任を押し付け合う、護とガブリエル。

 当然、伊織とラファエルから怒りの鉄槌が二人に下る。


「「いい加減にしろ!!」」


 二人は思った……。

 ラファエルは伊織に、伊織はラファエルに似ていると。

 逆に、ラファエルと伊織も同じ事を思った……。

 ガブリエルは護に、護はガブリエルに似ていると。


「ほぉ……光の書……やはり人間界にあるのか……」


「うげっ! テメーはS級魔族のベリアル」


 突然、護達の前に現れたベリアル。ガブリエルは知っている素振りだが、護達は初めて見る魔族であった。


「確か……ベリアルは天界に倒され、魔界の監獄送りになったのに何故だ?」


 ラファエルが首を傾げながら、疑問が生じた。異世界交流法が設立されてから、魔界の魔族の動きも大人しくはなったのだが、真っ先に天界に矛先を向けたのがべリアルだとラファェルは説明をする。

 天界が総力を結してべリアルを撃退し、魔界の奥深い監獄に閉じ込められて今に至るのだが。そのべリアルがなぜ、人間界にいるのか? ヒシヒシと悍ましい邪悪な気が護達を取り囲む。


「天使共と、人間二人か………」


「み、宮本さん………あいつコキュートス並にヤバイ」


「うん。それ以上かもよ」


「コキュートスだと!? 貴様らコキュートスと戦ったのか?」


「死にかけたけどな! あの色白女はやっつけたぞ」


「そうか……クックックッ……フハハハハハッ。あの冷酷無比なコキュートスを……面白い!」


 甲高い声を張り上げ笑い出すべリアル。まるで、強い者に巡り会えたかの様な口ぶり。その後べリアルの手から強力な魔法が地面に解き放たれ、辺りが大きく揺れ動く。


「みんな、散れ!!」


 ラファエルの掛け声と同時に、地面が一直線に真っ二つに割れた。


「しょうがないな……伊織、護、僕とガブリエルでこいつを引き付けるから、今の内に光の書を探しだしてくれ」


「し、しかし」


「だあぁーっもうっ! お前らがいると足手まといなんだよ!バカ護」


「バカエリル……わかった任せたぞ」


「コラッ神里君」


 あっさりとガブリエルを捨て石にした護。

 護の後を追う伊織。確かに、テレポートを使った伊織の体力ではいるだけ足手まといと悟った護の行動。本心は、ガブリエルに対した恨みでもあった……なんて誰にも言えずに。

































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