23話 ジブリールの危機
ジブリールに着くと、地獄絵図が待っていた。ジブリールの町と人々が全土氷に閉ざされ、活気がなくなっている。
「これは、間違いない………。ヤツだ」
「きっとコキュートスね、どうやってジブリールに?」
「わからないけど、城に行ってみようよ。何かわかるかも」
急ぎ、城にたどり着く二人。城の方は何とか持ちこたえ、ジールと部下達は無事でいた。
「二人共、良く来てくれたわ」
護達がデッドマンから脱出している頃の少し前になるが。
ジャドが倒され、コキュートスが結界をくぐり抜けジブリールに侵入してきた。ジブリールの町と人々を瞬く間に氷漬けにし、ジブリールの象徴である、高い山がそびえ立つ、ジブリール山脈に飛んでいったと言う。
「その山には何があるんですか?」
伊織が髪を手ぐしをしながら、尋ねる。
「あそこは修行場なのよ、しかも、極寒でね……」
極寒なら、コキュートスが潜むには持ってこいだが。
それだけなのか? 結界をくぐり抜けてまで山に潜む理由を模索するジールと伊織。やはり、理由がわからない………。
「とにかく、このままだとやばいのよ! ジブリールがなくなれば、魔界と人間界のゲートが開き、魔族がわんさかと人間界に流れるのよ。
ついでに、神魔町も結界が破られ、人間界全てが危ないの!」
「「な、な、なんだってえぇーーっ!?」」
二人が声を揃え、驚く。
「ナイスなリアクションありがとうね」
そんな事は知らなかったと言う二人の表情、如何にもそのリアクションを待っていた顔のジール。
「黙っていてごめんなさい……迂闊だったわ。簡単には破られない結界だったのに」
「ホッホッホ、まだ生き残りがいたか」
冷たい強風と共に、護達を嘲笑うかのようにコキュートスが姿を現した。
「コキュートス、あんたどうやってここへ?」
「その偉そうな成りは、ジブリールの女王かえ? お初にお目にかかるのぉ」
「私はあんたを見るのは二度目よ。とにかく、質問に答えろ!」
いつにも増して厳しい表情のジール。護と伊織は中々割って入れないでいる。
「結界を破るには確かに手こづったぞ。じゃかのぉ、わらわはS級魔族と呼ばれているが故に、こんな物強引に壊してやったわ。人間界と魔界の架け橋であるジブリールが邪魔だと判断した。人間界征服と魔界から悪意のある魔族を引き連れてやる計画じゃ」
何て恐ろしいヤツだと、この場にいた全員がそう思っていた。
たまらずに、護が横からファイヤーボールを解き放つ。
「…………小僧、前にも言ったが、わらわを倒したいなら」
「お前を上回る魔力を身につけろだろ? んな事はわかってるよ!」
以前、護に復讐してやると言っておきながら、さっきからスルーされてて苛立っていた護。何か護がカッコいいぞ………、と伊織とジールは思っていたのだが。
「小僧、あの時の恨みはまだ覚えておるぞ。お前の顔を見るとイライラしてならんわ、じゃがのぉ、わらわは思い付いたぞよ」
「…………」
やっぱり、こいつ怖い……いきり立つんじゃなかったと後悔する護。
「さて、これが何かわかるかな?」
コキュートスは胸元からラグビーボールくらいの鉱石を取り出した。一見何の変哲もない鉱石なのだが。
「マナタイト鉱石!? 何故あんたが?」
「やはりか……これが無ければジブリールはお困りじゃろ? マナタイト鉱石が無ければ、結界を張れないからのぉ。やがて結界が破れ、魔界から魔族が流れだし人間界はたちまち大パニックじゃのぉ……ここで貴様らに宣戦布告じゃ、わらわはジブリールを壊滅させる事にした」
そう言って姿を眩ましたコキュートス。
「あーっ怖かった……」
「「おいっ……」」
ちょっとでも、護がカッコいいと思ってしまった自分が恥ずかしいと後悔する伊織とジール。
「先ずはこの国の結界をどうやって張っているか? そこから説明するわ」
どこから用意したかわからないが、ホワイトボードを持ち出し、メガネと白衣を着用して雰囲気から入り出す。
「君達の暮らしている神魔町とこのジブリールと魔界をつなぐゲートはね、マナタイト鉱石に魔力を送り込んで結界を張っているの」
「白衣とメガネ要らなくね?」
…………ビュンッ!!
うるさい!黙れとチョーク投げならぬ、水性マジック投げが護の額にストライク。
「さて、神里君は放って置いて次ね。マナタイトは三年に一度交換しなきゃいけないのだけれど……これを忘れると結界が消えてしまうのよ」
「ジール様大変です!」
慌てふためき、ジールの部下がやってきた。
「結界の交換日、後二日後です………しかも、マナタイト鉱石が採取できるのは、修行場のジブリール山脈なんです!」
「何でそれを先に言わないの!!」
…………魔法の国の女王だろ? とツッコミたくなるのだが。千年も生きて、むしろ、マナタイト鉱石がどこで採れるかなど知らなかったのでは?
「とにかく、これはジブリールの命運をかけた戦いよ!二人共頑張って」
うまく丸め込まれ、護と伊織はジブリール山脈に向かう事になってしまった。
コキュートスがまたか。
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