22話 デッドマン破壊……逃げろや逃げろ
途方に暮れて、ついに立ち止まる護。考え込む様に座りだし、あぐらをかいて休みだす。
「このままじゃあれだな………埒があかない」
「まも君、疲れたの? 仇を取ってくれてありがとうね」
「紫音ちゃん、許せなかったんだ………あの淫乱悪魔が。だから、俺はつい怒りに任せて」
「それでも、嬉しい……」
どうしようもなくなり、紫音とラブラブなシーンを妄想する護。二次元だし、自分の思うがままに妄想をふくらませる。
「まも君はいつも私を見てくれているね」
「当たり前だよ、俺は紫音ちゃんの助けになりたいんだ」
「嬉しい……」
またもや護の中で紫音と見つめ合い、唇が重なり合うかと思いきや。
「神里くぅーん、やっと………見つけた」
「のわぁぁーッ! み、宮本さん!?」
伊織がテレポートを使い、やっと護と合流できた。どれだけ心配したのか? また護も伊織をどれだけ心配したのか。
「し、心配したんだからね! でも………無事で良かったよ」
「ご、ごめんなさい。宮本さんも無事で良かったよ」
はぐれてから、お互い何を喋っていいかわからない。とりあえずお互いに何があったのか話し合う。
「そうなんだ、宮本さんがネクロマンサーを………す、すげぇ……」
「神里君も、かなり危ない目に遭っていたんだね……」
とにかく無事で良かった、二人が思った事がシンクロするかの様にお互いの無事を喜ぶ。
「神里君、この要塞を破壊しないといけないんだけど………機関室があると思うの」
「俺は、三十分走り回り迷子になりましたとさ……」
「ようするに、わからないのね……」
伊織と合流し、心強くなった護。再び機関部を探して歩き出す。
はぐれた時から複雑な内部の為、所々に目印を付ける伊織、抜かりない。
「ところでさぁ、神里君はさっき目を瞑って顔が緩んでたけど。何を考えていたの?」
「えっ!?」
…………言えない。
二次元嫁の紫音と妄想に耽っていたなんて言えない………。
先へと進むと、護が迷い込んだ通路に戻る。
一本道の通路なのに、何故迷い込んだ? ここもループ地帯と判断した伊織、絶対に何かあると確信する。
「ここ、扉が多いね……」
「中は何もない、一室だったよ」
護の証言を元に推理開始。
何もない? そんな事はない………何か絶対仕掛けがある。
くまなく、一室を全て調べ最後の部屋に入る。
これまで見てきた一室と何かしら変わりはないのだが、床からエンジンの起動する音が聞こえてくる。
「ここだわ!」
「やっぱ、何もない」
「フッフッフッ。神里君の目はふし穴かな?」
その不適な笑みが怖い………。
伊織の立っている位置に、床が妙に盛り上がっている。
「神里君、出番だよ」
「へっ??」
「もう、鈍いなぁ………ここに魔法をぶつけるの!」
そうかと言わんばかりに、護は伊織の指定した場所にファイヤーボールを打ち込む。炎が床に燃え上がり、床に隠し階段が現れた。
「さて、行こうか」
二人は恐る恐る階段を降りると、デッドマンを支える動力炉を発見。ジャドが倒されたので、敵の気配はもうないのだが、ゴーゴーと音を立てるエンジン音が二人を出迎える。
「こいつを壊せばいいんだね?」
「ちょっと待って!」
伊織が制止をするが、時すでに遅し。護がサンダーボルトをエンジンにぶつけるのだが…………。
「うぉっ! 弾かれた」
「だから、ちょっと待ちなさいって言ったのに。もう!」
――――ガガガッ―――ピ―――ッ――――侵入者の介入により、防衛レベルを強化します。
突然エンジンが喋り出し、二人の介入を拒むかのように床から侵入者対策の罠が発動する。
―――デッドマンはこれより、防衛システムの起動を開始します―――侵入者迎撃システム起動―――解除するにはプロテクトコードを解除しないと止まりません―――。
「どどどど、どうするの? これ」
「何でこうややこしい事するの! 全くもう!」
二人が慌てふためき、夫婦喧嘩? じゃなく責任のなすり付け合いが始まり、エンジンは静かに優しく二人を見守っているかのようにどっしりと構えている。
「ん?」
何かを発見した護、それはプロテクトコードを解除するコンピューターであった。
「何これ? 数字が回転しているんですけどぉ……しかもこれタッチパネル式だし」
「この数字を揃えればいいんだわ! 神里君得意でしょ? こういうの」
プロテクト解除コードは数字の7がぐるぐると回転して、他の数字は見当たらない。
作戦は護が数字を揃え、万が一失敗すれば迎撃システムが作動する。伊織が惹きつけ役となり、エンジンの注意を伊織に向けさせる。
「んじゃ………ポチッと………」
…………当然一発で上手くいくわけがなく、迎撃システム発動。発射口が開き、レーザーが拡散される。
伊織の目論見は外れ、護も回避を余儀なくされる事に。
「み、宮本さん、このままじゃ体が持たないよ……」
「とにかく、やるしかないよ……頑張って」
親指を立てながら、護を励ます伊織。
その表情が二次元嫁の紫音と重なり合っていた。不思議な感覚だ………ドキドキした…………。伊織が輝いて見える。深呼吸をし、再チャレンジ。
「…………うぉりゃ―――!!」
目押しするのが面倒で、気合と根性でパネルにタッチ。
見事に数字がスリーセブンを揃え、エンジンに変化が。
―――システム停止―――これよりデッドマンは三十分後に爆発します―――
「マ、マジですか…………」
「神里君……先に言っておくね。私もう、魔力ほとんど残っていないから...テレポートは無理」
「えぇ―――ッ!!」
伊織の手を掴み、猛ダッシュで出口に向かうが、天井と壁が崩れ始めだした。エアーボードの魔法を使うスケボーも入り口に置きっぱなしなので、空を飛ぶ事もできない。
「神里君……足が……」
伊織が足をつってしまった。
たまらずに護は伊織を背負い、再び走る。このまま二人共朽ち果てるなんて冗談じゃない。
恥ずかしいとか言ってられない、とにかく出口に向かって走った。伊織もまた、護の背中が頼もしく見えていた。
「神里君、目印をつけてあるの、私がナビするから頑張って」
抜かりなく、伊織が内部に目印を付けていた。指示通りに、伊織を背負いながら出口がもう間もなく。
次々と天井が崩れ、間一髪出口に到着。急ぎエアーボードの魔法を発動し、脱出。脱出と同時にデッドマンは大破し、破片は海へと沈んでいった。
「終わった………」
「うん、ジール様の所に行こう」
町は平和を取り戻し、いつもの日常に戻ったのだが………。




