17話 伊織とデートォォ?
授業の遅れを取り戻す為、護と伊織は補修を受けていた。しかし、護達の担任がジールの部下だったとは、どこまで手を回したのか底が知れない。
「二人共、お疲れ様です。今日は終わりです」
この、解放感がたまらない。しかも週末だが、またもや、ジールからお呼びだしが。
「二人共、また、難儀な事件よ、詳しくはこのお方が」
大きな鏡が置いてあり、鏡に指を指すジール、そこには、ローブを纏ったガイコツが映っていた。
「冥界の王、ハーデスよ」
「ヤッホー、人間。ジールにこき使われている、可哀想な人間。すまないね、ワシの話聞いてくれる?」
「ちょっと、老骨ジジイ、人聞きの悪い事言わないでくれるかしら? この子達は自分の意志で動いているのよ、ねぇそうでしょ? 神里君」
自分を一億円で売って何を言ってやがる……護は冷たい視線をジールに送る。
「そうだよな? はいっと、答えろ」
「………………ハアァッ?」
話が反れて、ジールと護の言い合いが始まり、仲裁するかの様に、伊織のはりせんチョップ炸裂。
「二人共、喧嘩しない」
「ジール、お前ワシに老骨ジジイとか言って、お前も、一千年は生きているクソババァじゃろうが」
老骨ジジイと言われた事が尺に触ったのか、ハーデスがジールの年齢を公表してしまった。
「何? 天下のジール様は一千年も生きて若作りしている、バ………ウッ……」
ババァと言いたかったが、ジールのボディーブローが綺麗に護にヒット、そのまま放置で、話を戻す。
「いやね、死霊使いジャドと名乗る魔族がね、冥界から死者を連れ出したのよ、ワシがピチピチギャルのDVDを見ていた矢先なのよ」
自分の不手際で起きた事なのに、申し訳ない気持ちもなく、ジブリール側に依頼をお願いしてきた。
ネクロマンサージャドは、人間界に逃げ込んだと情報を聞かされ、他人事ではなくなった。
「ちょっと待って、そのネクロマンサーが人間界で何を?」
伊織が質問をすると、ハーデスが重たい口を開く。
「ジャドは、人間界で人間達をゾンビにしようと企んでるのじゃよ」
何の為に、人間をゾンビ化しようと企んでいるのか謎ではあるが、そんな事をされたら、人間界が大混乱に陥る。
「………神里君、デートしようか?」
「はいぃっ? デデデデ、デートと申しました?」
「何? 不満?」
「滅相もございません………」
いきなり、伊織からデートのお誘いを受けた護、伊織は息抜きに、コキュートスとの戦いで交わした護との約束を果たしたいのもあった。
「考えても、敵の居場所がわからないし」
その話を聞いていたジールは、面白い展開になったと笑いをこらえながら、二人のデートに賛成した。
「じゃあ、明日の朝に迎えに行くからね」
「あ、そうだ、二人共、今回の報酬よ、デート代にはなるわよ」
ジールが楽しそうに、二人に報酬を渡し、きちんとした護の世界での通貨であり、翌日、二人は神魔町にある以前カーミラと戦った遊園地へ行く事になり、園内へ。
「さて、どこから乗ろうか?とりあえず絶叫マシンかな」
護の手を引っ張り、絶叫マシンに乗り込んだのだが………。
「ウオォォェェッ、ヴェェッ」
「キャーッ」
二人の断末魔の叫びとまでは行かないが、絶叫マシンを堪能。
「み、宮本さん何か飲む?買ってくるから…………ウオォォェェッ」
「じゃあオレンジジュース………神里君……酔ったな………」
乗り物酔いしたのか、護はトイレでリバース。飲み物を買い、落ち着いた所でお昼の時間。
「私、お弁当持ってきたの、食べよ」
まさかの、同じ年の女の子から手作り弁当を振る舞われた護。人生で初めての女の子からのお弁当。
「い、いただきます」
お弁当は、おにぎりとおかずに卵焼きに唐揚げとエビフライと野菜が入っていた。口に運ぶと、とても美味しく、優しい味がした。
「う、うまい、美味いす、宮本さん料理上手だね、その上勉強も出来る、リア充ライフ」
「あら、ありがとう、最後の言葉は余計だけど………それでね、あのお化け屋敷から邪悪な気配を感じるの」
「ま、まさか魔族?」
「わからないけど、神里君が飲み物買っている時に感じたの」
見た目普通のお化け屋敷だが、伊織が邪悪な気配は何なのか……。
「じゃあ、行こうか」
中に入り、他のお客の叫び声と、中の雰囲気を出す怖いBGM、人の手で作られた物とわかっているから正直怖くはない。
「神里君、もう少し怖がるかと思った」
「何を期待してたの?」
再び出口に向かって歩き出すと、横に見慣れた魔族の姿が。
「げっお前、あの時のクソガキ」
「……………誰だっけ?」
「散々俺に酷い目に合わせて、そりゃねーだろ」
護に話し掛ける魔族、良く見ると最初に戦ったガーゴイルであった。
「お前…………生きてたの?」
「訳あって生き返った、だが、俺は戦う気はない」
本当に殺意はないと、伊織が断言し、人気のない場所に移動、ガーゴイルからは涙が溢れていた。
「お前にやられてから、俺は冥界送りになったけど、ネクロマンサージャドが、俺達を甦らせ、人間界に恐怖と混沌を与えようなんて、言ってきたが、俺は静かに暮らしたいだけなのに、断ったら俺を完全に亡き物にしてやる、とか言いがってここに隠れている」
どこから用意したのかわからないが、タバコを吸いながら語り出すガーゴイル。
「俺達て事は、他にも居るのか?」
「俺は会った事ねーが骨野郎と、エロくてムチムチボディーを持った奴だったな、名前まではわからねー」
ガーゴイルの証言から、護には一度戦ったソウルイーターとサキュバスの事しか頭に思い浮かばない。
「とにかく、ネクロマンサーをやっつければ、俺は冥界でまた、静かに暮らせるんだよなー」
「もしもしジール様、伊織です、はいっ丁度ここに居ます。わかりました、ではよろしくお願いします。ーーー余計なお世話です」
ジールに連絡を取り、ガーゴイルの身柄確保をお願いし、電話越しでジールはキスくらいしちゃえとからかう、伊織の顔も赤くなっていた。
「ジブリールに行けば、身柄は安心だから、ガーゴイルさん、迎えがもうすぐ来ますから、じっとしていて下さい」
「お、オゥ、メガネの姉ちゃん、ありがとよ」
その後、ジブリールから使いがやって来て、ガーゴイルの身柄は無事に保護され、冥界に戻った。気を取り直して、遊園地を堪能する二人だが、何か様子がおかしい、周りのお客が魂を抜かれたように無表情となっており、ゾンビの様に遊園地内を徘徊している。
「神里君、これおかしくない?」
「まるで、死人の様だよ」
「クカカカッ俺様復活」
前方に見覚えがある声と姿、ソウルイーターだった。
「パワーアップしたぜ俺様、人間共の魂を食らいつくしてやるぜ」
「み、宮本さんあいつ、ヤバイから隠れよう」
「ちょっ、神里君?」
伊織の手を引っ張り、物陰に隠れる二人。
そんな事は露知らずに、周りの人間の魂を食らいつくしているソウルイーター。それよりか、無我夢中で伊織を引っ張ってしまった。
………ち、近い、伊織から香るシャンプーの香りが………。




