13話 ラミア救出・・・そして・・
ラミアは何処に行ってしまったのだろうか? 捕らえたフロストに話を聞くも、妹のナーガの元に送ったと、場所までは知らないと言う。ラミアみたいな、良い魔族も居るわけだから、魔界の魔族達に良い見本になって貰いたい。
「幸い、ラミアの残り香があるわね、伊織場所特定できる?」
「やってみますね」
カーミラを探した時と同じ様に、五円玉を紐でくくりつけ、精神を集中させる。
ぐるりと五円玉は回り出し、伊織の中で冷たくひんやりした場所が頭に浮かび出した。
「周りが氷で覆われている、後はわからないです」
とは言え、魔族が人間界で暮らせる場所は神魔町、必ず町の何処かに潜んでいると、ジールは睨み、護達は一時帰宅する。
「神里君、さっきから黙ってどうしたの?」
戦いが終わった後、妙に黙り続ける護、それを心配し、伊織が声を掛ける。
「ラミアって………いい匂いするんだね………て、痛い」
ラミアの魅力に、男がメロメロになる理由を模索していた護、あのいい匂いはラミアのフェロモンなのか、そんな事はお構いなしに、護の耳を引っ張る伊織。
「神里君、私は家に戻ってラミアの居場所追ってみるから、くれぐれも外出とかしない様に」
「わかったけど、明日学校とかどうしよう………」
と、悩んでる内に伊織のスマホに着信が鳴り、相手はジールだった。
「二人共、任務がある時は学校の事は気にしないで、二人の担任の先生は私の部下だから、話はつけてあるわ」
都合良すぎだろと、色々突っ込みたくなるが、それはさておき、伊織が自宅でラミアの居場所を探しだす。
「ここって………観光スポットの氷洞窟じゃない」
神魔町観光スポット氷洞窟、一年中氷に覆われた洞窟で、夏は避暑地の観光スポットで有名なのだが、コキュートス達が占拠しているとなると、そこにいる係員の人間は、恐らくコキュートスにやられただろう。
早速、護を呼び出しジブリールからゲートを使い、氷洞窟の付近にワープ、入り口付近にいる係員は予想通りコキュートスにより、氷漬けにされていた。
「ひどい事を…………て、神里君その荷物は?」
「防寒対策」
「そうなんだ………」
ぽっかりと空いた大きな穴が、二人を迎え入れるが、真っ暗で何も見えず、伊織が明かりを照らす光魔法、ライティングを発動。
周囲も明るくなった所で、更に奥へ進む二人だが、辿り着いた先にラミアが、鉄格子で出来た柵に閉じ込められていた。
「二人共来てくれたの? でも、私の事は良いからお逃げなさい」
まるで、来て欲しくなかった様な言い方をするラミア、突然出口が閉ざされ、ラミアと同じ姿の魔族が現れた。
「ナーガ、やめて」
「侵入者が来たと思ったら、姉さん人間と仲良くしてるのねぇ、私は姉さんに見せたいのよ、コキュートス様が作る、永久氷土の世界を」
「ナーガ、こんな事したら異世界交流法が無意味じゃない」
「だからこそよ、異世界交流法なんて………魔界の王が居ない今こそ、私達魔族の力を思い知らせるのよ」
これ以上話しても無駄だとわかり、伊織が魔法を放った。
「ラミアさん、悪いけど………」
刺し違えても、ナーガを倒す、出なければ人間達も、人間界で暮らしたい魔族達も被害が及ぶ。最後まで、口には出せず、ラミアは黙ってうつむいたままだった。
「やる気?いいわ、相手してあげる」
ナーガの腕が更に二本生え、四本腕となり剣を4本持ち出した。
「宮本さん、ラミアは助けたから大丈夫」
伊織が注意を反らしている内に、護がラミアを救出、急ぎ伊織の救援に。
「神里君、ラミアさんをこっちに」
言われるがまま、ラミアを伊織の側に連れて来ると、直ぐ様ラミアをテレポートさせた伊織。
「ラミアさんはジブリールに送ったから大丈夫」
大丈夫とは言うが、伊織がテレポートを使用した事により、伊織の魔力も残りが少なくなってきている。
「仲良くあの世に送ってあげるわ…………えっ?」
ナーガの刃が振りかぶったその時、護はナーガのしっぽを足で抑え、長い髪の毛を引っ張っていた。
「このガキィーッ」
「だぁぁっ、こっち来んなーー」
怒ったラミアは、護を標的にし始め、追いかけごっこが始まる。
注意を惹き付け、伊織のホーリーボールがナーガに直撃。
「神里君、ナイスよ」
ナーガにダメージは負わせたが、ナーガもまだ息はあった。
再び伊織に標的変更したが、目の前に火柱が立ち始めた。
「神里式、地雷型ファイヤーボール改」
護の地雷式ファイヤーボール、この前まで地面から火の玉が出ていたが、改となった地雷式ファイヤーボールは、炎を集め大きな炎となり、火柱が立つ。
しかし、護はD級魔法使いの為、威力は望める物はなかった。今まで良く、格上の魔族と渡り会えたなと感心する伊織、でも、時間稼ぎは出来た。
「神里君、離れて」
伊織がセイントアローを放ち、ナーガの心臓を貫き、ナーガを撃退。
「ふ、不覚だったわ……コキュートス様、申し訳ありません」
ラミアには申し訳ない事をしたが、このまま放置したら、人間界が氷の世界に閉ざされてしまうから。
「ナーガを退けるとはのぉ……」
入れ替わりで、冷たく鋭い眼差しを持ってコキュートスが二人の前に現れた。
「人間を見くびっていたわ……人間界を氷漬けにして、人間達を生きたまま氷の棺に閉じ込める人間標本を作ろうと思ったが、お主らが居ては困るのぉ」
冷たく鋭い眼差しから、恐怖が駆け巡る。今、戦って勝ち目はあるのだろうか?
「神里君、いつでも逃げる準備はしてね。正直勝てるかわからないから」
「う、うん………」
今の魔力残量からして、勝てる見込みはゼロに近い、護が相手でも到底勝てるわけがない。
伊織が考えた作戦、残りの魔力でテレポートを使い、この場から立ち去る作戦。
「さぁて、ちょいと遊んでやるか」
コキュートスの手から、吹雪が舞いだし、やがて、絶対零度の領域に達し始めた。
すかさず護が、地面から炎を出して壁を作るが………。
「わらわを倒したければ、わらわを上回る魔力を身に付ける事じゃな小僧」
護の出した炎も虚しく、コキュートスに凍らされ、絶体絶命の危機に陥った。
「神里、先に君をジブリールへ逃がすわ、だから、コキュートスは神里君に託すよ」
「ちょっと? 何を言ってるの? 宮本さん」
二人の足が凍り付き始めた、このままでは二人共やられる、伊織は意を決して、護をテレポートでジブリールに転送。
「神里君、君ならやれると信じてるよ………もし、コキュートスを倒して、生き残れたら、デートしてあげる」
そう言い残し、伊織の体が氷の棺に閉じ込められ、伊織は氷漬けとなってしまった。
「ホホホッ綺麗な人間標本の完成じゃ」
テレポートで転送された護は、意識はなく、ジブリールにて看病されていた。
そこには、心配するラミアの姿もあった。
伊織が、伊織がぁ、大丈夫か護、お前が頼りだ
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