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一.危ないお仕事

はじめまして、藍良しおんです。

初めてエロチックな物語に挑戦したいと思うので、どうか気長にお付き合いしてくださいませ。




 カーテン越しの窓に朝日が覗き始めた頃、女は薄っすらと瞳を開けた。

 ゆっくりとまぶたを開けば、天井にはミラーボールが朝日よりも激しく、キラキラと目に映る。

 「・・・あ、まさふみさん、まさふみさん? 今日仕事じゃなかったの?」

 隣で安心しきったような寝顔で寝ている男に、彼女は嘲笑うかの微笑みを見せながら、肩を上下にゆする。

 名前の漢字すら分からない相手との、毎日のお仕事。

 馬鹿げていると思いながらも続けるしかないこの状況に、彼女は嫌気をさしていた。

「・・・あ、ああ。AIちゃん・・・今何時?」

「んーと、今は八時半過ぎです」

 AIと言われた茶髪ストレートの髪を纏った彼女は、笑顔で答える。

「そう・・・え?! 八時半? やばい、会社遅れる! じゃあこれ、昨日の分。よかったよ、また指名するからね」

 乱れたベットから降りた男は、ただの客。

 男はきちんとハンガーにかけていたスーツを、慌てながらも冷静に着ながら、万札を手渡す。

 こういうところは大人の男って感じだな、なんてこちらも冷静に観察しているんだが、結構上級ランクの男なのになぜこんな案内所の女を好むのだろうか。

 それだけが疑問だが、そういう話は会社では禁止事項にされている。

「じゃあね、AIちゃん」

 気が付けば男はもう高価そうなスーツを着た、エリートサラリーマンに変身していた。

 優しく微笑まれ、つられるように優しく微笑み返すと、満足したかのようにさっさと部屋のドアを閉める。

 AI、というのは漢字ではなく、英語での発音にしている。

 まったく違う名前でもよかったが、なんとなく気に入っているので本名の【亜衣】から変換して英語に変え、それを仕事の時のいわゆる源氏名にしている。

 ただそれだけのことだが、こんなところに来る男達は名前がどうだろうと気にはならないらしい。

 なぜならばここは『SEX』を目的とする、生々しいというか現実的な名前では【SEX案内所】といわれている会社に指定されたラブホテル。

 SEXをしたことがない童貞男、SEX大好き男ーーー関係なく、手軽に女を抱くことが出きる。

 メニューは童貞さんのためのキスからのレッスンや、変態ちっくなそういう趣味の方まで楽しめたりする部屋や、SEXだけではなく、デートなども体験できる別名、男のテーマパーク。

 もちろん、高額取引が条件だが。

 まだ十六歳の亜衣が、なぜこんな仕事をしているのかというと、そこは少しまじめな理由で生活のためだ。

 十四歳の時に両親を亡くし、今は母の伯父の家に預かってもらっている。

 料理や学校のお金は出してくれるがそれ以外のことはまるで無関心。それに加えて出張が多い伯父からは、毎月十万の小遣いだけで生活している。

 どんなバイトでも高校生ができる普通のものは精々時給千二百円程度。

 そんなお金で両親が残していくだけ残していった広大な土地を管理できるはずがない。

 毎月何円の金が必要になっていると思ってるんだ。

 それならば二階建ての普通の家でもよかった。というかそのほうがよかったのだ。

 そこで走ったのはやはり『夜のお仕事』。

 最初はそんな見ず知らずの男と寝れるか、と思っていたがこれが結構やってみたら出来るもので。


 なんとなく始めてみるとお金はばんばん入るし、止めるに止めれなくなってしまったとうわけである。


「・・・今日も学校休もうかな・・・・」

 毛布を包んだ姿のまま、亜衣はもう一度ベットへ寝転ぶ。

 この仕事をしてから、学校へ行く時間が少なくなってしまった。

 一週間の内学校へ顔を出すのは三、四回。

 こんなんで進級できるのだろうか。

 だけど、暮らしていけなければ学校の糞もない。

 手に握り締められた万札に目をやり、手の平で広げてみると、五枚・・・・五万円か。

「まあ、当たり前かな。昨日はちょっと頑張りすぎたし」

 はき捨てるようにつぶやきながら首を回し、腰もうーん、という掛け声と共に伸ばしていく。

 いつまで続くのかは分からない。もしかしたら一生このままかもしれない。

 彼氏にも言えないまま、彼氏ともSEXを楽しみながら、他の男とも寝る・・・・。

 彼氏への裏切り行為だということは分かっている。けれど。

 深いため息をつき、亜衣はベットから身を起こした。

「まあ、しょうがないよね」

 まるで自分に言い聞かせるようにつぶやいた亜衣は、意を決したように目を見開き、ハンガーにかけてある自分の派手な服に、ゆっくりと手を掛けた。




 


 







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