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テトラ93

「これより向かう予定の遺跡ですが、位置としましては魔族領の首都近郊です。首都から3、40キロメートルほど離れた場所で、深い森の中に存在しています」

「結構近いのですね」

「はい。ですが、その森は魔物が闊歩している危険地帯です」

「魔物が? そこは魔力濃度が高いのですか? よく首都が無事ですね」

 魔物は動物が高濃度の魔力に晒されて変化すると言われている。かつてヒヅキがウィンディーネから聞かされた話では、動物が魔物になるのは神の呪いのような側面もあるようだが、詳細は不明。

 それでも、魔物が厄介な存在であるのは間違いない。強さとしてはスキアよりやや落ちるが、魔物化の深度が深ければスキアを越えるほどに厄介な存在に成る事もある。

「魔物は森の一定の範囲から外には出ませんから、むしろ魔族は防壁のひとつとして利用しているぐらいですね」

「一定の範囲から? それはそこに濃い魔力が留まっているという事ですか?」

「ええ、そうですね」

「……そこには何が?」

 大体予測はつくが、それでも聞いておいた方がいいだろう。当然ながら、情報はより正確な方がいい。

 そう思い女性に尋ねながら、ヒヅキはそれにしてもと思う。

 ヒヅキは動物が魔物になる仕組みについて詳しくは知らない。だが、仮に言われている様に高濃度の魔力に中てられて魔物に変質するのだとしたら、それはかなり高い濃度の魔力であるはずだ。それこそ、不可視の魔力がはっきりと可視化するほどに濃い魔力である可能性が極めて高い。でなければ、世間的に魔物が珍しいとまでは言われていないだろう。

 そして、その森でそれが起こっているのだとしたら原因は何だろうか? と考えるが、それもまた予測は用意につく。

「魔物の行動範囲の中心に、件の遺跡が存在しております」

「その遺跡は一体何の遺跡なのですか?」

 今まで何度も遺跡を探索したヒヅキではあるが、魔物が居た遺跡などほとんど無かった。全く無かった訳ではないが、それでもかなり珍しい。魔物が居た遺跡でも、個体数は片手で十分な程度。だが、女性の話を聞いていると、どうも結構な数の魔物が存在しているように聞こえてならなかった。

「……かつて、神々がとある者を封じた場所です。その守り手として魔物が守護していました」

「その言い方ですと、その封印は破られたのですか?」

「ええ。もう随分と昔の話です。それこそ、今代の神が世界を支配する前の話です」

「それでも未だに魔物が湧いているのは何故ですか?」

「そこまでは分かりません。ですが、予想は出来ます」

「それは?」

「今代の神が動力源を封じ、封じたモノを魔物に守護させる機構を復活させたのではないかと」

「そんな事が可能なのですが?」

「あの遺跡は元は神々が創ったモノです。遺跡の機能を再起動させる程度は神ならば可能なのでしょう」

「なるほど……しかしそうなると面倒な事になりましたね」

「ええ、本当に」

 ヒヅキでもある程度の魔物には対処が可能だ。なので、ヒヅキ以上の強さを誇る女性が居る現状であれば、魔物を越えての遺跡の踏破は不可能ではないだろう。

 そう思ってヒヅキが呟くと、女性がそれを否定する事はなかった。今はそれを心強く思い、ヒヅキはもう少し遺跡の詳細を尋ねる事にした。

「その遺跡はどれぐらいの深さ、もしくは広さなのですか?」

「そうですね……広さは地上の森よりも広いので、大きな国の首都数倍ぐらいでしょうか。深さは結構ありますが、天井が高い階層が多いので、それほど煩わしくはないかと」

「なるほど。それで遺跡を護っている魔物の種類や数、強さについては分かりますか?」

「種類はかなり多いのでなんとも。数は地上部分に十数匹。その後は1階層ごとに2、30ほどといったところでしょうか」

「………………」

 女性のそのあんまりな話の内容に、ヒヅキは絶句してしまう。一匹でも面倒だし、ヒヅキでは三匹同時ならば少々苦戦するだろうというぐらいの強さが魔物だ。

 しかも場所はほとんど遺跡の中である。広いのであれば何とかなるが、狭い場所だとやりにくい。それに地下だと魔砲は放てそうにはないだろうから。

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