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テトラ90

 ヒヅキの驚きように女性は小さく笑う。しかし、直ぐに表情を引き締めて元に戻した。

「先程話をした通り、元々この世界にはそれほど多くの種族が居りませんでした。しかし時が下り、主に深淵種の活躍により爆発的に種族が増えていきました。それだけ多種多様な種族が揃えば、当然出来る事の幅も大きくなるものです。その結果として、当時の者達は神の悪事を知るに至りました。神にそれを改めるように訴えたりもしましたが聞き入れられず、そしてその末に神に挑むことになりました。神相手の粛正隊結成ですね」

 若干お道化たように女性はそう言うも、雰囲気は変わらず暗いままだ。

「当時は神にも味方が多数居ました。まぁ例によって創造した者達ですが」

「ウィンディーネ達ですか?」

「ええ。ですが、現在居るウィンディーネ達はこの当時にはまだ存在していません」

「そうなんですか」

「ええ。そして、当時の神の味方は全て撃ち倒すに至ります。なので、仮に現在居る神の創造物達が当時に存在していたとしたら、滅ぼされていたという訳ですね。弱いですし」

「それは凄い」

 神の味方である創造された存在。つまりはウィンディーネのような存在らしいが、当時の両軍の数は知らないものの、それでもそれと戦って倒したというのは凄まじい。ヒヅキではウィンディーネどころか更に格下である竜神にすら勝てなかったというのに。

 あんなモノで構成された軍を倒すというのは、当時の人々はどれだけ強かったのだろうか。ヒヅキはその事に思いを馳せ、そして自分の弱さにそっと苦笑した。

「そうして神を独りにしたまでは良かったのですが、神が想像以上に強い存在であった為に神を負傷させるのが精一杯で、結局粛正隊は敗北しました。その後は神が英雄達を警戒し、反逆した者達を全て種族ごと根絶やしにしてしまいました」

「そうだったのですか」

「その負傷により神は一時的に弱体化したのですが、迅速に動いて英雄達を各個撃破したので、再戦は叶いませんでしたが」

 力なく首を振った女性を眺めながら、ヒヅキは疑問をぶつけてみる。

「とても詳しいですが、神と戦った時に貴方も参加したのですか?」

 ヒヅキの問いに、女性はふっと自嘲するように小さく笑う。

「参加しましたよ。負けましたが。あとひとつ何か決め手が欲しかったですね」

「そうだったのですか」

「ええ。だから襲撃を受けた訳ですし」

「……なるほど」

 反逆者の殲滅。神が女性を襲ったのはその一環だったのだろう。

 しかし、それにしては随分と最近の出来事のような気がした。神と英雄達が戦ったのはおそらくかなり昔の出来事だと思うのだが。それに。

「私の間違い、もしくは単なる言葉の綾という事も考えられますが、英雄とは神に力を与えられた者を指すのでは?」

 フォルトゥナについて話をした時にヒヅキは確かそう教えられた。いつ、何処で、誰にという部分については記憶が曖昧なのだが、おそらく教えてくれたのはウィンディーネか女性のどちらかだろう。

「それで間違っていませんよ」

「では、やはり言葉の綾で?」

「いえいえ、確かにあの者らは英雄でした。優秀であっただけではなく、神の祝福もしっかりと受けていましたよ」

「神に挑んだのに、ですか?」

 フォルトゥナは神に強制的に身体を乗っ取られていたが、もしかしたらそれにも上限があるのかもしれない。それか乗っ取るのに必要な条件が存在する。ヒヅキはそう予測するも、女性の答えは違っていた。

「あの者らが祝福を受けた神は別の神ですからね。今の神が他の神を滅ぼしたと言いましても、別の世界には神は居ますから。神事の時と同じですね。もっとも、それでも本来の祝福よりも効果が弱まっていましたが」

 残念だと言わんばかりに女性は息を吐く。先程あとひとつ決め手が欲しかったと言っていたので、もしも神の祝福が完全であったならば、それで神を倒す事が出来ていたのかもしれない。

 女性の様子を見たヒヅキは、そう思った。そして、おそらくそれは間違いないのだろう。

(何故その時に倒してくれなかったのか)

 現在神に被害を受けている者の一人として、ヒヅキはそれが身勝手と知りながらも、僅かな怒りや失望は禁じえなかった。

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