護衛任務5
ロングとの話が終わる頃には、人足の人たちも普段通りに回復していた。
その人足たちの中からシロッカスが出てきて、ヒヅキに駆け寄る。
「ヒヅキ君は強いんだな! いや、強いとは思っていたが、ここまで強いとは正直予想外だったよ! いや本当に良い人に護衛を依頼出来たようで、これからの道のりもますます安心して進む事が出来るよ!」
そう言って機嫌良くヒヅキの肩を叩いたシロッカスは、直ぐに人足たちに休憩を言い渡し、武器輸送の責任者と共に、そのまま武器や荷車の状態の確認を行う。
ヒヅキたちは引き続き周囲の警戒を行いつつも、人足の人たちとともに昼食を摂る。その間ヒヅキには色々な質問が飛んできたが、しっかりとした答えを返せたものは少なかった。特にスキアを一瞬で倒せる力関係の話は自分でもよく解ってないだけに、殆どまともな答えは返せなかった。
それでも雑談を交わす内に、ヒヅキは人足の人たちやシラユリ以外の護衛の人たちとも少しは距離を縮める事ができた。
そして昼休憩が終わり、隊列を整えてから歩みを再開する。
その後は、スキアとの遭遇により遅れた時間を取り戻すべく、いつもの陽が傾きはじめた頃の途中休憩を短めにとり、その分距離を稼いだ。
コント砦までの残りの移動もそうやって進んだが、普段から人足たちの体調管理はしっかりとされていたので、残り数日間休憩時間を減らしても、誰一人として体調を崩す者や怪我をする者は現れなかった。
そして、ガーデンを発ってから12日が経ち、途中スキアとの遭遇により少し遅くなったとはいえ、全体的にゆっくりとした行程でも無事に予定通りコント砦に到着した。
夕方にコント砦に到着してからは、簡単な身体検査を受けてから、砦の中央に聳え立つ見張りも出来る高い塔のような建物の中庭に一行は通される。
そこで一行は待たされ、シロッカスと武器輸送の責任者だけが報告の為に現在の砦の責任者であるゴリオンの元に通される。その際、護衛兼護衛の責任者としてシロッカスに乞われたムゲンも同行していった。
ヒヅキはシラユリとロングの二人と人足の人たちと共に中庭で大人しく待つ。
それからそれなりの時間が経ち、辺りも暗くなった頃には中庭に灯りとして松明が焚かれた。
パチパチと派手な音を立て燃え上がる炎を見つめながらボーッとしていると、シロッカスたちが疲労が浮かんだ表情で戻ってくる。
「どうだったー?」
そんなシロッカスたちに首尾を尋ねたシラユリに、シロッカスが疲れた声で答える。
「とりあえず、泊まるための小屋を都合してもらえたので、今日はそちらで夜を明かす。武器についてだが、後の処理は兵たちが行うので、そのままでいいそうだ。明日は朝早くにこの砦を発つから、小屋に着いたら直ぐに寝るように」
シロッカスは説明が終わると、シロッカスたちと共に建物から出てきた兵に合図を送り、「では行こうか」と、ヒヅキたちに声を掛けてからその兵の先導の後について歩き出した。その後に、少し遅れてヒヅキたちもついていくのだった。