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テトラ83

 話が終わり、女性はヒヅキに背を向けると、騒がしい方へと歩いていく。

 その背を眺めながら、明日から大変なのだろうかと考える。明日話し合うとしても、もう1泊ぐらいは泊っていきそうだが。

 そうして女性が建物の影に消えると、ヒヅキは宿屋の中へと入る。その間も騒がしい音が遠くから届いていた。

 扉を閉めたヒヅキは、伸びをしながら部屋に戻り、寝台の上で身を横たえる。微かに届く音に起こされはしたが、まだ夜である。もう1度寝るだけの時間は十分にあるだろう。

 そうして意識を沈めたヒヅキが次に目を覚ました時には、いつもの時間であった。

 魔力水を飲んで目を覚ますと、ヒヅキは寝台を下りて軽く体を動かす。それから隣の部屋に移動すると、外は普段以上に暗い気がする。

「今日は曇りかな? 雨が降らなければいいが」

 今日村を発つかは不明だが、それでも可能性がある以上、雨は降らないでほしかった。雨を眺めるのはいいが、雨の中旅立つというのは気が進まないものだ。

 とはいえ一応雨具は持っているので、雨の中の旅立ちでも問題ないだろう。

「……念の為に確認しておくか」

 まだ早朝でも早い時間帯。ヒヅキは1度寝室に戻って背嚢を手にして部屋を移動すると、椅子に腰掛けて背嚢の中身を確認していく。

 その途中で取り出した小物類を机に並べつつ背嚢の中身を確認したヒヅキは、今度は整理しながら小物を背嚢の中に戻す。

 そうしながら目的の雨具だが、見つけた時に外に出して確認してみたところ問題はなさそうであった。特に雨合羽は念入りに確かめたが、何処かに穴が開いているという事もなかったので、ちゃんと雨具として機能するだろう。

 一通り背嚢の中身を確認したヒヅキは、窓の外に目を向ける。依然として暗いままだが、それでも先程よりも明るさが増していた。

 背嚢の中身を調べるだけで結構な時間が経過したようで、朝としてはいい時間になっていた。もっとも、商店なんかは何処も閉まっているし、外に出ているのも見回りをしている者程度なので、変わらず静かなものだが。

(そういえば、舞台はどうなったのだろうか?)

 静かな時間の中、窓の外に目を向けていたヒヅキは、ふとそんな事が気になった。それに特に意味は無いが、昨日の今日なので何となく。

 あの後解体したのだろうかとヒヅキは思う。もしかしたら昨日の夜の騒ぎは、舞台を解体している騒がしさだったのかもしれない。ふとそんな考えが頭に浮かぶが、直ぐにそれはないかと頭を振った。

(あの騒がしさが解体の騒がしさとは思えないし、いくら辺境の小さな村とはいえ、夜中にあれほど騒ぐというのもどうなのだろうか。魔族の習性についてはまだ完全に解ってはいないが、それでも夜行性といった感じでもなかったからな。その辺りも人間と大差ない気がした)

 そう思いながら、昨日の神事が終わった時間と舞台の大きさを思い描き、暗くなったら作業はしないだろうからと考えると、舞台は今でもそのままな気がした。であれば、今日解体なのかもしれない。あのまま残していても邪魔だろうと、村を見て回ったヒヅキは思う。

 この村は住民の数は少ないが、それでも村興しをしようとはしていないようだし、何よりもそんな物を残しておくぐらいであれば、畑にでもしているだろう。

 そういった事を考慮すれば解体されるのだろうが、その後の木材などはどうするのだろうか? 少し時間に余裕が出来たヒヅキは、無駄にそんな事を考えた。

 それから少しして、無意味だなと小さく笑ったヒヅキは、考えを頭の外に追いやって背嚢から義手の点検道具を取り出し、机に並べていく。

「これも久しぶりだな」

 そう呟いて左腕に視線を落としたヒヅキは、あまり整備をしていないというのに何の問題も違和感もなく動く義手に、改めて感心したのだった。

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