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テトラ74

 その光景は、流石魔法に長けた種族である魔族だという事なのかもしれないが、魔力に対する鋭敏さが既に神の域にまで達しているヒヅキには、何故だか今でもあの仮面は普通の仮面に思えてならなかった。

 自身の魔力に対する感度の高さを知らないヒヅキはそんな疑問は抱かないが、それでも周囲の反応に改めて仮面を注視してみる。それでもやはりよく分からずに首を傾げた。

 首を傾げながらも、分からないのであればしょうがないと考え、それよりも仮面に施されている魔法を起動した時にしっかりと感知出来るように他の事は一旦排して集中することにした。

 舞台に上がった女性は、そのまま音楽に合わせて舞を踊る。それなりに広い舞台いっぱいに使った大きな動きが多く、それでいて指先まで意識した繊細でゆったりとした動きは優雅そのもの。それは観ていたヒヅキも感嘆したほど。

 その完成された見事な舞を観ながら、何時の間に覚えたのやらと思わなくもなかったが、ヒヅキと女性はほとんど一緒に行動していた訳ではないので、それぐらいの時間はあったのだろう。

 その女性の舞は思ったよりも長く、10分ちょっと続いて終わる。それから直ぐに曲調が厳かなものに変わると、女性は舞台中央で正座するように腰を下ろした。

 そのまま両手を膝の上に置いたまま、まっすぐ前を見据えて動かなくなる。

 程なくして、奥の建物から巫女装束に似た装束を着た女性が三人、それぞれ三方を恭しく持って出てきた。その三方の上には、ヒヅキが提供した剣と魔鉱石がそれぞれ一つずつ置かれていた。

 魔鉱石の方は遠目には小さくて見えないが、剣は抜き身のまま置かれている。

 女性達は建物から出て三方向に散ると、舞台中央で正座している女性の左右に魔鉱石、前方に剣を載せた三方をそれぞれ設置していく。

 正座している女性を中心に、横に広い三角形になるように三方を置いた三人の女性は、正座している女性の後方、建物の前に並ぶと、並んだままその場に正座した。そこで奏でられていた音がぴたりと止む。

 太陽がほぼ直上に輝き舞台を照らす中、中央に座している女性は僅かに顔を天上に向ける。

 するとどうだろうか。遠方まで雲の少ない良い天気であるというのに、遠くからゴロゴロと地を伝って腹に響くような音が鳴り始めるではないか。

 その変化に、周囲の魔族はどよめく。そっとヒヅキが周囲の様子を窺ってみると、そこには恐怖や混乱ではなく、畏敬の念を抱き女性に目を向ける魔族達の姿があった。皆が揃って眩しいものを見るように目を細めているが、舞台中央に目を戻したヒヅキには先程までと何も変わっていないように見えて、どういう意味かと内心で首を捻る。

 もしかしたら周囲の魔族には何か視えているのだろうか? そう疑問を抱いたヒヅキは、女性へと意識を集中させていく。

 意識を集中させたことで、周囲の状況が先程よりも鮮明に理解出来てくる。それでも、魔力の流れが女性の周囲だけ異なっているという事が何となく解る程度でしかなかった。

 ただ、その流れが周囲と比べて尋常ではなく速い。それを感じてどれだけ魔力が活性化しているのだろうかとヒヅキは驚愕する。今まで感じた事のないその流れの速さは、一瞬呼吸を忘れたほどの驚きをヒヅキに感じさせる。

 しかし、ヒヅキに解るのは結局それだけ。周囲の魔族が目を細めているのはそれが原因だとしても、何をやっているのかまではとんと理解出来ない。ヒヅキの予想以上に次元が違うようだ。

 遠雷のようにゴロゴロと鳴り響いている音は次第に大きくなり、いつの間にか太陽周辺だけ雲量が増して太陽を覆い隠そうとしている。

 ゴゴゴゴゴという遠くの山が鳴動でもしているかのような地響きも僅かに感じだし、次第に天変地異の前触れのような様相になってきた。

 ヒヅキは周囲を確認してみるも、集まった魔族は誰一人動じた様子はみられない。

 かなり久しぶりの神事のはずだが、それでもこれが普通なのかもしれない。神事を経験した事ないだろう若い魔族でさえ動じていない様子に、ヒヅキはそう思うのだった。

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