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テトラ73

 ヒヅキは翌日もいつも通りに目を覚ます。

 今日は待ちに待った神事が執り行われる日ではあるが、緊張するほどではないのでヒヅキは普段通りに寝て、普段通りに起きる。

 目を覚ましたヒヅキは耳を済ませるも雨音はしてこないので、神事は問題なく執り行われるだろう。

 前日に空を見上げて予想した通りではあるが、それでもヒヅキは内心で少し安堵する。

 魔力水を飲んだ後、朝の支度を済ませながらヒヅキは今日の予定を頭に思い浮かべていく。

(神事は朝から執り行われるらしいから、準備が整ったらすぐに出るとするか。舞台へ直行でよかったはず)

 そうして準備を終えると、ヒヅキは宿屋を出て舞台の前に移動する。

 ヒヅキが舞台前に到着すると、まだ朝にしても早い時間にもかかわらず、既に結構な人数が集まっていた。普段閑散とした村の様子を思えば、何処からか急に湧いてきたかのようだ。

 待っている間の暇つぶしにと近くの者と話をしている声が重ねり、そこに言葉の意味を失いがやがやと雑然とした騒音が満ちる場が完成する。

 ヒヅキはその集団から少し離れた場所で、邪魔にならないように立ったまま待機する。周囲はそんなヒヅキの存在に気づいていないのか、誰も視線を向ける者は居ない。

 それからしばらく佇むように待っていると、どんどんと村人が増えていく。気づけば結構な数になり、事前に数十人程の人口の村と聞いていたので、おそらく村人のほぼ全員が揃ったという事なのだろう。

 そうして村人のほぼ全てが揃ったところで、更に時間が経過する。空を見上げれば太陽の位置が大分高くなっていた。もうしばらくすると昼になってしまうだろう。

 朝からだと聞いていたとはいえ、これは来るのが早すぎただろうかと考えてヒヅキだが、目の前に集った大勢の村人を見るにそれはなさそうだ。おそらくこの場合、主催者側である村長達の方が遅れているという事か

 何か問題でも発生したのだろうかと思いながらもうしばらく待つと、やっとこさ舞台に村長が上がってきた。普通であれば、遅くなった村長は色々と言われるのだろうが、村人達はそんな村長を見つけるとおしゃべりをぴたりと止め、村長が喋り出すのを静かに待つ。

 その光景にヒヅキは微かに感心しつつ、同時に村長の権力が強いのだなとも思った。

 村長は場が鎮まったのを確認すると、簡単なあいさつの後に神事の開催を宣言する。

 それに喜ぶ村人達。少々激しく喜びすぎな感もあるが、それだけ待ち望んでいたのだと、ヒヅキは思う事にした。

 始まりが遅かったので、村長の挨拶が終わった頃には昼になっていた。しかし、誰も昼食を摂ろうとはせず、舞台に注視している。

 ヒヅキもつられて舞台に視線を向けるも、今は村長が下がったので誰も舞台には立っていない。

 舞台は地上から1メートル以上高いのだが、立ってみる分には問題ない高さだ。奥の方に大きめの建物が在り、先程村長はそこから出てきて引っ込んでいったので、待機室なのだろう。

 それらは舞台共々神事が終われば解体するらしいが、それにしては随分頑丈そうな造りをしている。

 これなら結構な日数を要するだろうと、ヒヅキが一人納得していると、今度は音楽が鳴り響く。笛の音や太鼓を叩く音が厳かに鳴り響くと、村人達は口を閉じて舞台に集中する。

 そうして集まった村人全員が舞台に集中しだすと、舞台の奥の方に設置されていた大きな建物から、例の仮面を付けた女性が音楽に合わせて粛々と出てきた。

 舞うような軽やかさで舞台中央に歩み出てきた女性は、何故か時間の経った血のようななどす黒い色合いの衣装に袖を通している。

 その衣装は、袖も裾も長く肌の露出はほとんど無い。おそらく巫女装束なのだろうが何とも不吉な感じで、見ていると不安になってきそうだ。

 しかし、村人達にとってはそれが普通なようで、その衣装について言及する者は誰も居ない。むしろ村人が反応したのは、女性が被っている仮面の方のようで、女性の登場と共に感嘆にも似たどよめきが軽く起こっていた。

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