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テトラ72

 女性を見送った後、部屋に戻ったヒヅキは改めて窓の外に目を向ける。差し込む光の強さは随分と強くなってきたので、もうすぐ昼も終わるのかもしれない。そう思い、荷物を持って1度宿屋の外に出てみる事にした。

「ふむ……いい天気だ」

 空の様子を見上げたヒヅキは、明日も問題なさそうだと大きく頷く。遠方も昨日と同じで澄み渡っている。

 それを確認したヒヅキは、そのまま部屋に戻った。

 荷物を寝室に置いた後、隣の部屋に移動して椅子に腰掛ける。

(明日は神事。巫女は女性という事は、観測者とかいうのが言う通りになったということか。そして、神事はおそらく成功する)

 さて、その時はどうなるのやらと思案したヒヅキだが、答えは出ない。そもそもよく知らない神事なので、それもしょうがない事だが。

 今回関係してくるのは別の神らしいが、それでも神という存在について何か解る手掛かりになるかもしれない。そう思ったヒヅキは少々今日の予定を考え、魔力感覚を研ぎ済ませることにした。

 魔力感覚とは、そのまま魔力を感じる事の出来る力である。これを極めることが出来れば、魔力視に近いモノを手に入れる事になる。それも魔力視よりもかなり範囲が広く、死角の少ない優れたモノだ。

 もっとも、それを手に入れるのは並大抵の事ではなく、努力以上に絶対的な才能が必要であった。少なくとも、魔力に対する鋭敏さに関してのみ既に神の域にまで達しているヒヅキであっても、まだそこまでには至れていない。

 その事を知っている訳ではないが、ヒヅキは魔力感覚を磨き始める。方法はとても簡単で、周囲の魔力を感じ、流れを感じ、そこにあるモノを感じるだけだ。その果てに、魔力視の上位互換のような感覚が手に入る。

 ヒヅキは煩わしそうに服を脱いで全裸になると、椅子の上で胡坐をかいて意識を集中させる。魔力を肌で感じる為には、服があると微かな違和感があって集中しきれないのだ。これもより少し上の段階まで到達出来れば、服程度は気にならなくなるのだろうが。

 ヒヅキが集中をし始めると、周囲の空気が一変して張り詰めたようになる。肌の表面がちりちりとするような緊張感が場を満たす中、ヒヅキは周囲の魔力を肌で感じていく。

 しばらくそうしていると、今度は感覚を魔力の流れに溶かすようにしながら、室内の魔力の流れを把握する。

 そこまで終えて部屋全体の流れを把握したところで、流れる魔力が触れるモノの輪郭を頭の中に思い浮かべていく。これを完全に再現出来れば、ほぼ魔力視の上位互換である魔力触の完成である。あとはいつでもそれが出来るようになれば完成だ。

 ヒヅキはまだそこまで至れていないので、そんなことまで考えてはいないが、それでも集中状態であれば頭の中に周囲の様子を描く事が出来た。もっとも、今はそれでもそこまで広くはない部屋の8割ほどが限界ではあるが。

 神事は明日である。つまりは本番は明日なので、前日に修練したからといっていきなり出来る訳ではないが、それでも感覚を少しは掴めるだろう。

 現在のヒヅキでは、神事を観ながら魔力を把握しても、流れを理解するので精一杯だろう。しかし、そこまで出来ればある程度は状況を把握出来るので、無意味というほどではない。その為の準備運動程度には、この修練もなるだろう。

 しばらくの間ヒヅキは集中していたが、部屋の9割弱ほどまで把握出来たところで、集中力が切れる。

 呼吸を忘れていたかのように勢いよく息をすると、ヒヅキはまずは頭を落ち着かせる。

 数分して呼吸も落ち着いてきたところで、ヒヅキは脱いだ服を着ていく。その途中で採光用の窓に目を向ければすっかり夜になっていたようで、真っ暗な世界を窓が切り取っていた。

 それを確認したヒヅキは、伸びをして大きく息を吐き出すと、寝室に移動して眠る事にしたのだった。

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