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テトラ71

 舞台設営をしている場所まで近づくと、声も大分はっきりと聞こえてくる。それと共に、しっかりと組み上がっている舞台の様子も確認出来た。

 もう完成でもいいのではないだろうかと思うほどにしっかりと建てられている舞台だが、未だに木材を搬入しているところを見るに、見えないところではまだ完成していないのかもしれない。

 舞台前に到着すると、相変わらず何もしていないのに村人の中に上手く混じっている女性の姿が確認出来た。

 他の面々を確認してみるも、村長の姿は確認出来ない。今日も奥の方に居るのだろうか。

 まぁどうでもいいかと思いつつ、女性に進捗状況を確認してみる事にした。予定通りであれば、今日には終わるはずなのだがと思いながら。

 女性の方もそんなヒヅキに気がついたようで、ヒヅキの方に歩み寄ってくる。

 二人は話すにはちょうど良い距離で立ち止まると、軽く挨拶を済ませてヒヅキは舞台の進捗状況について尋ねた。

 それに女性は順調だと返すと、予定通り明後日には神事が催される事も付け加えた。ただし、雨が降ったら延期らしい。

 舞台設営の時を思えばそれも当然だろうなとヒヅキは頷くと、女性に礼を言ってその場を離れる。訊きたい事が聞けたので、ヒヅキは宿屋に戻っていく。

 宿屋に戻ると、女将が宿屋の掃除をしていた。

 女将と軽く言葉を交わした後、部屋に戻る。その頃には昼になろうかという時間であったので、荷物を置いた後に魔力水をちびちびと飲みながら、保存食を少量取り出して齧っていく。

 そうして軽く腹ごしらえを終えると、ヒヅキは椅子に腰掛けて明後日の神事について考える。だが詳しい事は解らないので、注意深く観察しておかないとなと思うのだった。

 それから夜まで魔法や過去視の修練をして、夜には魔法道具を少し弄る。

 夜も更けたところで魔力水を飲んで就寝すると、翌朝には大体いつもの時間に起床する。

 いつものように魔力水を飲んで目を覚ますと、少しして控えめに扉を叩く音が響く。

 こんな朝早くから誰だろうかと疑問に思うも、直ぐにそれが女性であるのを察知する。

(神事は明日だし、一体何の用だ?)

 ヒヅキは訝しみながらも、扉に近づいていく。居留守を使ったところで意味はないのだから。

 扉を開けると、そこには昨日と同じ女性の姿。ヒヅキが何か用かと問えば、女性は特に用はないと返す。大体そんな感じで毎回やって来るので、とりあえずヒヅキは女性を部屋の中に通した。

 部屋で椅子に腰掛けた女性は、座った状態で軽く伸びをする。

「明日は神事が開催される予定ですよ」

 今思い出したとでも言うようにそう告げてくる女性に、ヒヅキは「そうですか」 と頷きを返す。それについては昨日確認したばかりだし、窓から差し込む光を見る限り、外はいい天気な気がしている。

 それでもまぁ確定したという事で、ヒヅキは女性に礼を言っておいた。

 その後は村で過ごして見聞きした他愛のない会話をした後、女性はまたも思い出したと言ったように、先程からの雑談の延長といった口調で話をする。

「そういえば、明日の神事で私は巫女をやる事になりました」

「そうなんですか。それは大変そうですね」

 とはいえ、ヒヅキはそれを知っていたので、折角だからとそれに乗って軽く流す。別に女性が巫女役をやろうとも、ヒヅキにはどうだっていい事だ。ヒヅキは仮面の魔法について調べたいだけなのだから。

 女性自身も別段何かしらの反応が欲しかった訳ではないのか、ヒヅキが軽く流したその話題を再び持ってくる事はしない。

 そうして更に会話が進み、すっかり昼になった頃、女性はそれに気がついたように採光用の窓に目を向けて、「あら?」 と驚いたように小さく漏らした。

 それから椅子から立ち上がった女性は、自然な動作でヒヅキに別れを告げて部屋を出ていった。

 その背を見送った後、ヒヅキは「結局なにをしに来たんだ?」 と疑問を抱いたが、最初に用はないと言っていたので、本当に用事は無かったのかもしれない。

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