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テトラ66

 舞台完成後は、予定通り1日休みを挿むらしい。

 そんな話をした後、村長の居場所についてヒヅキが女性に尋ねると、、現在は舞台の奥に設置されている簡素な小屋の方に行っているとか。

 ではそちらに挨拶にでも行ってこようかとヒヅキが考えたところで、女性に行くのを止められた。

 理由を尋ねてみると「現在会議中ですので」 という事であった。どうも乾かしている組以外は、これからの計画について話し合っているところらしい。それでも大まかな予定は、先程女性が話していた通りらしいが。

 ヒヅキは女性に礼を言うと、一応村長に狩りをする為に外に出た事を伝えてもらえるように頼んでから、村の外に向かうことにした。



「まぁ、何が居るという事もないだろうが」

 村を出て少し進んだところで、ヒヅキは手元の短剣に目を落としてそう呟く。

 村を出る時に門番に止められる事はなかったヒヅキだが、村の入り口で思いついて足を止めると、ヒヅキは門番をしている村人に声を掛けて、狩りに出る事の説明と、その際に使いやすい短剣でもないかと尋ねてみたのだ。

 門番は狩りに出てもろくに獲物が居ないよと忠告しながらも、近くにあった休憩小屋のような場所から短剣を1本持ってきて渡してくれたのだった。その際に、狩りに出るのならばこれぐらいは事前に用意しておくものだと軽く注意されたが。

 もっともな意見だと思ったので、ヒヅキはその注意を素直に受け入れ、礼を言って村を出たのだった。

 ヒヅキは手にした短剣に目を落としながら、これなら問題なく小動物程度であれば狩れるなと思う。

 モノとしては量産品で凡庸な品ではあるが、手入れはしっかりとなされていたようで錆びはなく、研ぎも鋭いようなので、ウサギの首など簡単に落とせそうだ。急遽借りた武器にしてはちゃんとした武器だった事に、ヒヅキは満足して頷く。

 今日向かうのは、村の出入り口とは反対側の平原。実はこちら側にも小さな緊急の出入り口が在るのだが、現在は閉ざされていて使用出来ない。

 ぐるりと半周して村から離れると、直ぐに動物の気配を察知する。昨日の雨の影響で動物が出てきているのかもしれない。

 まぁ狩りが出来ればなんでもいいかと思い直すと、気配を捉えている方角へと進んでいく。

(この感じは、鹿っぽい?)

 大きさとしては大型犬程度なのだが、気配察知で捉えた気配は鹿に似ている。ヒヅキは昔に何度か狩った経験があったので、間違ってはいないだろう。

 遠目ながらも、障害物のほとんどない平原なので直ぐに見えてくる。大きさはやはり大型犬程度なのだが、見た目はクマに近い。しかしながらも、気配としてはやはり鹿だ。

 どういう事だと疑問に思いながらも、ヒヅキは気配を殺してゆっくりと近づいていく。

 ある程度近づいてはっきりと視認できるようになると、それはクマを思わせる色合いの毛皮を纏った小柄な鹿。やはり気配通りに鹿のようだが、それでも今度は近づいた事によって、気配が微妙に変わったような気がした。

 何がと思いもう少しだけ近づいて鹿をよく観察してみると、どうも気配を自分で変えているようであった。鹿は鹿なのだろうが、ヒヅキの知る種類とは違うのだろう。

(前回のウサギといい、人間界とは似ているけど違う生態なのだな)

 そう思いつつ他にはまだ気配もないので、その鹿っぽいのを狩ることにする。おそらく食べる分には問題ないとは思うが、その辺りは持って帰れば門番か宿の女将が判断してくれるだろう。

 そういうことにして、少し離れた場所からこれからどうしようかと考える。平原には障害物となってヒヅキの姿を隠してくれる物は何も無い。今のままでは、近づいた段階で気づかれてしまうだろう。

(うーん、それでも問題ないか?)

 ヒヅキの足であれば、たとえ見つかったとしても追い付けそうだし、正面から向かってこられても何とか出来るだろう。そう思ったヒヅキは、とりあえず風の流れだけには気をつけながら移動を開始する事にした。

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