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テトラ60

 ヒヅキは山裾に到着すると、山を見上げる。

 見上げた山は、森から村までに通った丘のようになだらかな2つの山に比べれば少々傾斜が急で標高も高いようだが、それでも普通に行っても日帰りで山向こうに行って帰ってくる事が出来そうな山だ。

 木々は相変わらず結構生えているようで、木の実も多い。これだけあれば、あの村の規模ぐらいは問題なく賄えるだろう。

 山の中に入ったヒヅキは、周囲を感知魔法と気配察知で調べながら進む。今日森に来た目的は、調査と狩りだ。

 調査は主にスキアが近くに居るかどうかだが、こちらはあまり期待していない。ヒヅキの感知範囲はまだそこまで広くはないのだから。

 狩りの方は保存食作りが目的なので、狩った後は血抜きだけして持って帰るか、その場で作るかだ。ヒヅキはあまり味には頓着しないので、わざわざ熟成させてまで作ろうとは思っていない。不味いのであれば、逆に凄く不味いぐらいがちょうどいいのだろう。

 そういう意味では、木の実の吐きたくなるような不味さは適しているかもしれない。とヒヅキは一瞬思ったものの、不味いにも限度がある。流石に食べるのを躊躇してしまうほどに不味いのは求めていない。

 そんなことを考えている内に頂上に到着する。日はすっかり天上に昇り、山を登ったのも加わって薄っすら額に汗が滲む。

 ヒヅキは近くの木陰に移動すると、立ったまま魔力水を用意して飲んでいく。

 とりあえず1杯水を飲んだところで、道中で飲んだ水筒の中身も補充する。今のところ動物の反応はない。この山には動物は居ないようだ。

 さてどうしたものかと思いながらも、とりあえず予定通りに山向こうまで足を伸ばしてみる事にする。

 木々に遮られて視界はあまりよくはないが、それでも山の先が相変わらずの平原であるのは確認出来た。しかし、今回はその平原の先は山ではなく森のようだ。

 とはいえ、その森はヒヅキが魔族領に到着した時に出た森とは違い、普通の森のように思える。木々はそこまで密度が高い訳ではないようだが、細かい部分は森の木々に遮られてよく分からない。

(別に今日行くつもりもないから問題ないが……ん?)

 のんびりと周囲を散策しながら山の向かい側へと下りていると、感知範囲に動物の反応を捉える。感知場所は、山を下りたところの平原。

 ヒヅキは視線をそちらに向けるも、肉眼では確認出来ない。どうやら大型の動物ではないようだ。

 山を下りながら、ヒヅキはもう少し詳しく探ってみる。そうすると。

(ウサギ……か?)

 感知している場所には、白くてふわふわとした体毛に覆われた小動物。耳が長く、後ろ脚が発達しているのが隆起した筋肉から分かる。

 そこまではヒヅキの記憶通りの姿なのだが、ヒヅキの記憶とは違う部分が1点あった。それは、額辺りから真っ直ぐ生えている立派な角。

 角の長さは10センチメートルよりやや長いぐらいだろうか。ヒヅキからしたら小さな角ではあるが、角を除いたウサギの全長の半分近い長さなので、ウサギからしたら大きな角だろう。

 ヒヅキの知識の中には存在しないウサギなので、人間の支配する土地やその周辺では生息していない種類のウサギなのだと思われた。

 それでもウサギなのは間違いないだろうから、きっと食べられるだろう。そう思い、ヒヅキはそのウサギを狩る事にする。

 平原に到着すると、まずはウサギを仕留める武器について考える。流石に光の剣は過剰というよりも、普通の狩りでは逆に使い辛そうなので、背嚢の中から短剣を取り出す。村長の娘から貰ったものだ。

 あれから研いではいないので、刃の部分の切れ味はそこまで鋭くはないかもしれないが、それでも先端は尖っているので問題はないだろう。首元にでもそれを突き刺せば、それだけで十分殺傷出来る。

 短刀を手にしたヒヅキは、気配を殺しながら大回りで素早くウサギとの距離を詰める。そして、ある程度近づいたところで足を止めた。

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