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テトラ56

 村を回りながら改めて村を見ていくも、相変わらず静かなものだ。感知魔法を使用してみれば確かに村人は住んでいるのだが、引き籠ったきり出てこようとしない。

 そんな様子に、食料をはじめとした生活物資がよく続くものだと思いはしたが、女性の話では元々食料が豊富な地という訳ではなかったようだし、粗食には慣れているのだろう。木の実を掛け合わせて発酵させた物で必要な栄養を取っているようだし。

 それに村長の家の中を見るに、物を必要としない生活を普段からしていたのかもしれない。

 それでもいつかは限界が来るだろうが、村人全員が家の中に籠っている訳ではないので、何とかなっているのだろう。

 外に出ている者達は、見回りと共に狩りも行っているらしい。もっとも、成果は芳しくないようだが。

 離れたところに居るとはいえ、スキアが近くをうろついているのだ、動物達も恐くなって逃げたのだろう。スキアは動物を襲わないのだが、それでも何故か動物達はスキアを恐れる。

 そういう訳で狩りの方もだが、見回りの方も大した成果はない。現状では毎日散歩に行っているようなものだ。

 スキアが居るのはヒヅキの感知範囲外なので、動向の方はヒヅキでは分からない。それでも、何となくそう遠くない内にスキアが攻めてきそうな気はしている。

(神が催される神事を嫌うのであれば、神事の前か最中に。そうでないならその後か?)

 仮に本当に攻めてくるのだとしたら、そんな感じだろうかとヒヅキは考える。しかし、準備を始めている今でも攻めてきていないので、気にしていないのかもしれない。それか女性が居るので、気づいていないという可能性もあるが。

 空を見上げれば天上から地上を照らす太陽が見えるが、あれの視界にはここは映っていないのかもしれない。それか、女性の言うようにあまり視界は広くないのだろう。

 とはいえ、ヒヅキにはそこまでの知識もそれを知る為の技量も無いので、スキアが攻めてきたら迎撃するだけだ。

 思考を切り替えて村を見て歩く。小さな村なのでゆっくり歩こうとも直ぐに回る事が出来る。その途中で神事の準備をしている場所の近くを通りかかったが、何やら舞台を組み立てているところであった。そこで巫女が仮面を使って神との交信を行うのだろう。

 作業している魔族達に混じり、何故か女性の姿もあった。やはり観測者の言通りに巫女役として参加するのかもしれない。

(まぁ、どうでもいいが)

 ヒヅキはそこはどうでもいいかと流すと、少し離れた場所で舞台の様子を観察する。

 舞台は木組みで造られているようで、太い丸太が互いを支え合うようにして組まれている。重そうな丸太ではあるが、魔族達はホイホイと軽々持って運んでいるので、何かしらの魔法を使用しているのだろう。

(身体強化は基本としても、丸太の重量も一時的に軽くしているのか? 中々に高度な魔法だな)

 対象の重量を変化させる魔法は存在するし、ヒヅキも扱える。それ自体はそこまで珍しい魔法ではないのだが、変化させる重量によってはとても難しい魔法であった。

 ヒヅキの場合は普通の魔法の効率が悪いというのもあるが、魔力量はそれなりに多い程度なので、大人の体重を一時的に子どもの体重ぐらいまで軽くしたり、逆に子どもの体重を一時的に大人ぐらいまでに増加させるのが精々であった。この魔法は変化させる重量に応じて、必要とする魔力量が変化する。

 必要な魔力量が増えると、それを扱う技術も比例して高度になっていくので、簡単な魔法でありながら高度な魔法でもあった。ヒヅキの場合は魔力の扱いはかなりのものなので、やはり保有している魔力量と威力半減という効率の悪さが原因だった。

 そんな風に重いはずの丸太をひょいひょいと運ぶ魔族に混じりながら、女性は資材を運んだりはしていない様子。

 何をしているのだろうかと思ってヒヅキが目を向けていると、舞台を眺めているだけ。時折作業員と2、3言葉を交わしているようだが、明確に指示を飛ばしている訳でもないので、見学なのかもしれない。

 それにしては自然と作業員に混じっているなとは思うが、何であろうと舞台が完成すればそれでいいので、ヒヅキは舞台の設営を少し見学した後に宿屋に戻っていく。

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