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テトラ54

 残った青白い影をじっくりと観察すると、それが同じ影である事が解る。

 それに観察していると、その影は立ったりしゃがんだり、手を伸ばしたりと何か道具を使ったりしているようだ。それを見て、ヒヅキは何をしているのかに思い至った。

(…………これはもしかして、この部屋を掃除しているという事だろうか?)

 それにしては視える影の数や時間軸が少ないがと思うも、この宿屋や部屋が何時から在るのかをヒヅキは知らない。部屋や建物からは年代を感じさせるが、もしかしたら中古の物件とか資材を使いまわしているとか、考えようはある。それか単純に掃除の頻度が少ないだけかもしれない。客の数も元々多くはなかったのだろうし。

 何にせよ、そう頻繁に掃除している訳ではないようだ。まぁ、そこまで汚れていた訳ではないし、問題はないのだが。

 その掃除をしていると思われる幻影以外は確認出来ないので、この部屋には長いこと誰も宿泊していないようだ。

 もっとも、ヒヅキにとってはそれはどうだっていい事。自分以外の幻影が居るなら過去視の修練には都合がいいというだけ。

 まずは輪郭をはっきりさせようと、ヒヅキはその幻影のひとつに意識を集中させていく。

 幻影はほとんど途切れのない連続した像として映るので、1枚の静止画の様にはっきりとした輪郭を捉えるのは難しい。元々輪郭どころか大きな塊としか視えていないので、一場面を切り取るように見極める段階まで進んでいる訳ではないが。

 とにかく、まずは輪郭を少しでもはっきりと判るようにしなければならない。現段階ではまだ辛うじて人っぽい輪郭が窺い知れるだけだ。それについて自信があるかと問われれば、無いと断言するぐらいには曖昧としている。

(過去視の制御は大分改善出来たと思うのだが……)

 過去視は特殊なだけではなく、魔力消費量の多い魔法だ。未来視を含めてそう言った特殊な眼は、特定の種族に受け継がれているとかの一部例外はあるも、非常に珍しい魔法である。どれだけ魔法の才に溢れていようとも、そういった眼は使い手を選ぶ。

 その使い手も普段は短時間だけ視るのに用いるだけで、数時間も使用するような真似はしない。普通は使用しても数分程度だろう。

 それは出来ないからなのだが、ヒヅキは最初からそれを成してしまえるほどには適応していた。それから更に効率化を図っていき、今では映る幻影の少ない場所であれば、一日中使用出来るぐらいにはなっている。もっとも、それをしたら魔力が枯渇して倒れるだろうが。

 魔力を回復してくれる魔力水があるとはいえ、魔力の枯渇は身体に大きな負担があるので、ヒヅキとはいえそこまではやらない。

 そういう訳で、過去視の使用に際しての効率化だけはやたらと進んでいた。もっとも、それ以外はほとんど進展していないので、あまり意味は無いが。無理矢理意味を見出すにしても、修練の時間が延びたぐらいであろう。

 ヒヅキはしばらく幻影を凝視していたが、ふぅとため息を吐くと、目頭を押さえながら水筒に入っている魔力水を飲む。

「はぁ」

 それで魔力は回復したが、過去視を使用した事でやや倦怠感を覚える。

 水筒を棚の上に置き寝台に横になると、天井をボーっと眺めて少し時を過ごす。気づけば周囲はすっかり暗くなっていた。

「………………やはり難しいな」

 ヒヅキは疲れたようにそう零すと、小さく欠伸を漏らす。

(集中し過ぎると疲れるな。制御が甘くなってしまうのか?)

 思った以上に消耗した事に、ヒヅキは疑問に感じる。思い出してみても、今までも集中した後はいつもよりは疲れていた。それでも動けないほどではないが。

 とはいえ、今回はそんな時の為に寝台の上で過去視を使用していたので、ヒヅキは今日のところはこのまま眠りにつく事にする。

(明日は神事の進捗状況について尋ねておかないとな……)

 そんな事を考えながら、ヒヅキは意識を手放した。

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