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護衛任務

 シロッカスに付いていったヒヅキは、護衛の三人との顔合わせを済ませる。

 それぞれ銀髪の男の名前はロング、甲冑の男の名前がムゲン、少女の名前はシラユリという名前らしかった。

 ヒヅキ達がそれぞれ挨拶を交わし終えるころに、荷造りが済んだとの連絡がシロッカスの元に届いた。

「さて、それではそろそろ発つとするか!」

 そのシロッカスの号令の元、一行はガーデンを進発したのだった。



 透き通るような青空の下、ガラガラという音を立てながら、武器を積んだ荷台が進む。

 その音を背に、ヒヅキたち四人の護衛は周囲に目を向ける。

 ヒヅキは警戒しながらも、今回の依頼について考えを巡らす。

 砦への護衛、それはよく分かる。この辺りにも賊が出るという話は聞いていたからだ。

 しかし、しかしだ。護衛四人の内三人が冒険者、それも各人が手練れというのは、賊相手には些か過剰戦力ではないだろうか?彼らほどの手練れならば、一人居れば十分過ぎる。

 ならば、答えはひとつしかない。それは、警戒している相手が賊などという生易しい相手ではないということ。では、手練れの冒険者が三人も必要な相手というのは何か。

 ヒヅキの頭のなかには、その答えとなる相手はただひとつだけしかない。

 それはスキア。

 シロッカスのガーデンを取り巻く状況の話でも出てきた相手だ。

(スキアの集団か)

 想定しているスキアの数が単体ではないことは、手練れの冒険者三人も雇っているところから容易に推測出来た。それに、つい先日ヒヅキは名も無き村を襲っていたスキアの群れを殲滅したばかりだ。

(最近何かと縁があるな。まぁ攻めてきてるかららしいけど)

 そんなことを思いながらも周囲を見渡せば、遠くに高い山が見え、近くに目を合わせれば、膝丈ほどの高さの草がそよそよと揺れていた。

 しかし、スキアや賊はおろか、自分たち以外の人すらも見当たらず、他の警戒すべき生き物も見当たらなかった。

(平和だな)

 ヒヅキはついそう思ってしまうも、それでも警戒は怠らずに周囲に鋭い視線を送る。

 他の三人も各々の方法で警戒しながら先へと進むと、夕方になった。

「暗くなる前に夜営の準備を始めようか!」

 シロッカスのその言葉に一行は動きを止めると、テキパキと手慣れた様子で夜営の準備に取り掛かる。

 それと平行して料理の支度も始めた為に、周囲に香しい匂いが漂う。

「お腹空いたー」

 夜営の準備をしている人足たちを守るために、周囲を警戒していたヒヅキの隣で、同じく周囲を警戒しているシラユリが、見た目通りの可愛らしい声で呟いた。

「もう少ししたら料理が出来ると思いますよ」

 そんなシラユリに目を向けることなく、ヒヅキはそう告げる。

「それは分かってるけど、お腹空いたよー。いい匂いさせやがって!」

 ぷーっと頬を膨らますと、シラユリはゆらゆらと身体を揺らす。その様子はまるで落ち着きのない子どもそのものだったが、ヒヅキは見向きもしないし、気にもしない。

「ヒヅッキーはさー、真面目さんだねー」

「そうですか?」

「うん。だってこんな視界の開けたところなんだからさ、そんなに真面目に警戒しなくても大丈夫だと思うんだー」

「それはまぁそうですが」

「ロングーとムゲムゲの二人も居るからねー」

「確かに皆さん強そうですが」

「強いよー、わたしほどじゃないけど」

 胸を張って鼻でムフーと息を吐くシラユリ。その横で、ヒヅキは気にせず警戒を続ける。

「むー!」

 そんなヒヅキに、シラユリは不満げに頬を膨らませる。

「どうかされました?」

 その気配を察したヒヅキが声を掛けるも、シラユリは不満げにむくれるだけだった。

 そしてその状態は、料理が出来るまで続いたのだった。

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