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テトラ36

 ヒヅキは村の外縁部をぐるりと回るように移動する。あまり大きな村ではないので、周囲を観察しながらでもヒヅキの足であれば2時間ほどもあれば1周出来た。

 そうして一周してみたが結局誰かに会うという事はなく、それどころか、宿屋近くで一緒にこの村に来た女性を見つける。村人は見かけないというのに、何とも寂しく狭い村である。

 女性の方もヒヅキに気づいていたようで、女性からもヒヅキに近づいてきた。

「どうでしたか? この村は」

 数歩先まで近づいた女性は、足を止めてそう問い掛ける。それにヒヅキも足を止めると、困ったように頭を掻いた。

「長閑な村だとは思いますが、誰とも会いませんでしたね」

 苦笑気味にそう答えたヒヅキに、女性は納得したように頷く。

「そうですね。今はいつ何時スキアが襲撃してくるかと皆さん怯えていますから」

「やはりそうなんですね」

「ええ。外に出ているのは一部の戦える者達ですね。食料調達も大抵その辺りの者が担っているようです」

「他の者は?」

「家の中でも仕事はありますから。それに、たまに荷物持ちとして食料調達について行ったりもするようですよ」

「そうなんですか。それは以前からで?」

「そうですね。私が来た時には既に。おそらくこの国へのスキアの襲撃があって少しした辺りからそうだと思いますよ」

「スキアの目撃情報はその頃?」

「ええ。と言いましても、それは村人が目撃したスキアの話ではなく、村に訪れた商人の話のようですが」

「なるほど」

「それから少ししてスキアを村人が発見して、本格的に現在のような状態になったと聞きましたね」

 女性の話に頷いたヒヅキは、女性に礼を言う。

「ですので、食料の補充など必要な物があれば宿屋の主人に伝えるといいですよ。今では市どころか店もろくに開いていないので」

 その助言にヒヅキは頷きながら、そう言えば店を見なかったなと思い出す。誰も居ない事に気を取られていて、店を探すのをすっかり忘れていた。

「それで、これからどうされるのですか?」

 現在は遅めの昼時だが別段空腹でもないので、ヒヅキは考えた後に「調べ物をしようかと」 と、女性に告げる。

「図書館の類いはここにはありませんよ? 宿屋にも少しは本はあるでしょうが、そこまで貴重な物はこの村にはないかと」

 少し考えてそう教えてくれた女性に、ヒヅキはまぁ言ってもいいかと思い、持っていた剣を調べていると答えた。それを聞いて、女性は納得したように頷く。

「であれば、何かお手伝いしましょうか?」

「あの剣について教えてくれるのですか?」

 ヒヅキが訊き返すと、女性は頬に指を当ててわざとらしく小首を傾げてみせた。

「うーん、多少でしたらいいでしょうが、ご自分で調べた方がいいのでは?」

 困ったようにそう告げた女性に、ヒヅキは何かあるのかと内心で首を捻る。

「そうなのですか? 調べるにも時間が掛かりそうなのですが」

「でしょうね。あれはかなり複雑な代物ですから」

「では――」

「ですが」

 そうであれば教えてくれないかと言おうとして、普段通りに女性は微笑みながらヒヅキの言葉を遮る。

「貴方は私を信用してはいないでしょう? であれば、ご自身で調べた方が納得がいくかと」

「……まぁ、それはそうですが」

 特に皮肉を込めた訳でもなく事実として女性がそう告げると、ヒヅキは困ったようにしながらも、否定することなく頷いた。

 そんなヒヅキに、女性はいつものように微笑みつつ「ですから、多少のお手伝いぐらいはしますよ」 と告げる。

 ヒヅキは女性を信用してはいないが、しかしそれも完全に信用していない訳ではなく、警戒している程度。なので、この際女性からもたらされる情報を信じる信じないは横に措くとしても、手伝いは助かった。少なくとも、女性は能力的にはヒヅキよりも確実に上ではあるのだから。

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