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テトラ34

 ヒヅキはまぁいいかと頭を掻くと、剣に目を向ける。女性の事は今回の旅で何か分かるかもしれない。もしかしたら分からないかもしれないが、ヒヅキにとっては割と本気でそんな事はどうだってよかった。

 それよりも剣について調べる方が重要だろう。まぁ、これも女性に訊いた方が早いのかもしれないが。

 そんな事を思いつつ、まずは先程の短い方の剣の時同様に、鞘に納まったままの剣を様々な角度に傾けて観察する。

(うーむ。やはりこちらも見た目は他の剣と大差ないな)

 無論、美しさという点を除けばの話だが。しかし、それ以外は特筆すべき点が無いのもまた事実。思わず魅入ってしまうほどの美だけでも十分なのかもしれないが、存在感は大して強くはない。

 外観の確認を終えると、ヒヅキは剣身を鞘から引き抜く。短い方の剣にも負けない眩さと美しさを纏う剣身に、ヒヅキは相変わらず奇麗なものだと感嘆する。

 とりあえず引き抜いた鞘を机に丁寧に置き、剣の柄を両手で持つ。

 重量はそれなりに在るが、それでも同じ大きさの普通の剣と比べればかなり軽い。振るっても大して重さを感じなかったなと思い出しながら、魔法道具の明かりを剣身に反射させて確認していく。

 長い方の剣の性能については、全てではないが既に知っているので、ここで振るう様な真似はしない。いや、先程の短い方の剣の時も、ヒヅキにはそんな意図は全くなかったのだが。

 しばらく観察した後、剣身の側面を指で撫でてみる。指を近づけるとひやりとした冷気を感じたが、それだけ。指が切れたり凍ったりとかはなく、剣身に触れる。

 剣身の表面はつるつるしていて、まるで溶けてきた氷の様。というよりも、指先に感じる冷たさはまさに氷そのもので、本当に氷で剣を造ったと言われても信じるかもしれない。

 冷たさに指を離して、指同士をこすり合わせるようにして擦ってみるも、濡れているという事はない。剣身の表面は結露なのか薄っすら濡れだしたが、凍る事はないようだ。

「ふむ」

 キラキラと艶めく剣身を眺めながら、調査の為に柄の方に微量の魔力を流し込んでみる。そうしながら、後で短い方の剣も調べないとなと思い出す。

 柄に込められた魔力は、内部の様子を探っていく。しかし。

(何だ、この複雑極まりないモノは)

 魔力で内部を調べてみると、執拗なまでにぐねぐねぐねぐねと入り組んでいて、少し調べただけで酔いそうになったほど。

 このまま調べていたら吐くかもしれないと思い、調査を断念する。仮にこのまま調査を続行して体調に何も無かったとしても、調べ終わるのに何年必要になる事やらといった複雑さであった。

 それほどなので、体調云々がなくとも断念しただろう。ヒヅキは短い方の剣に目を向けると、これもだろうなと思い、ため息を吐いた。

 しかし、それと同時に視界に入った鞘に、ヒヅキは少し思案してそちらを調べてみる事にする。剣ほど複雑だとは思えなかったから。

 まずは手にしていた剣を鞘に納めると、それを机に置き、短い方の剣を手に取る。

(こちらの方が簡単だとは思うが……)

 それでも普通の魔法道具に比べればかなり複雑だろうが、しかし調べられないほどではないと思い、鞘に手を触れて魔力を流していく。

「………………んー」

 鞘に魔力を流して調べてみると、確かに魔力回路の様なものは在ったのだが、何だかヒヅキが知っている魔力回路とは趣が異なるような気がした。

 それでも調べていくも、ただ魔力を通している様にしか思えない。道は複雑ではあるのだが、ヒヅキには無意味に魔力回路を通している様にも思える。

(魔法道具の中にはそういった方法で調べられるのを妨害するのもあるが、これはまたそれとは少し違っているような気がするな……だが、何が異なっているのかが分からない)

 魔力回路を丁寧に調べながらも、ヒヅキは内心で首を捻る。何となく違和感を感じるだけで、明確な形にはなっていない。少なくとも、魔力回路は今までとさほど変わらない。

 このまま調べていれば何か分かるかなと考えながら、ヒヅキは引き続き鞘を調べていく。その前にと1度採光用の窓から外の様子を確認してみると、外から差し込む光は大分白んでいた。

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