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テトラ33

 抜き身の剣を様々角度から眺めた後、ヒヅキは小さく手首を動かして剣を振ってみる。

 剣を振るうというよりも剣先を少し動かした程度ではあるが、先程まで観察していた時よりも軽く感じて、思ったよりも剣先が振れてしまった。

 僅かにしか動かしていないというのにヒュッという鋭い音が耳に届き、ヒヅキは剣を目の前に持ってくる。

 次いで床に目を向けたヒヅキは、そこに在った小さな傷痕に首を捻った。

(ここにあんな傷痕あったか?)

 手入れはされているが部屋自体は随分古いようで、壁や床に小さな傷は無数にあるが、それでも足下に在った2、3センチメートルほどの真っ直ぐの小さな傷痕は、まだ新しい傷に思えた。

「……ふむ」

 ヒヅキは剣に目を向けた後、もう1度床に目を向ける。

 よく見れば、目立つ傷痕はその2、3センチメートルのものだが、その上下には傷から延びているような薄い線がつづいている様に見えた。まるで刃物で表面を軽く撫でたような細い線。

(先程この剣を振った時に出来た……のか?)

 状況的にそうとしか思えないが、しかしヒヅキは剣を僅かに動かしただけだ。おそらく剣先を1、2センチメートルほど動かしただけだろう。それだけで床に傷が出来たというのであれば、その剣をまともに振るったらどうなるというのか。

(いや、もしもそうであるならば、調べた時にも剣を動かしているのだから、その時に周囲に傷が出来てもおかしくないと思うが)

 そう考え、ヒヅキは周囲に目を向ける。しかし、傷は無数に在れど、新しそうな傷は確認出来なかった。

 気づかなかっただけという可能性もあるが、おそらく足元の傷以外は出来ていないだろうと結論付けたヒヅキは、再度剣に目を向ける。

(普通に動かす分には問題ないのか? よく分からないが)

 それでも近づけるだけで斬れてしまうのだから、扱いには十分注意しなければならないが。そうヒヅキが考えたところで、視線は机の上に置いてある鞘に向く。

(あれは剣を納めていても無事なのか? 見えない刃に触れないような構造なのか、あれも何かしらの魔法道具なのか)

 鞘を手に取り、剣と見比べる。おそらく鞘も魔法道具なのだろう。それも普通の魔法道具ではないようで、剣とは違った妙な雰囲気が漂っている。

(悪いものではないようだが……まぁいい。この剣を安全に保管できるのならば問題ないだろう)

 そもそも、長年埋まっていた壁の中から取り出しても無事な鞘が普通の鞘な訳がない。それでも鞘の役割をしっかりと果たしているのならば問題ないかと思い直し、ヒヅキは剣を鞘に納める。

 鞘に納めた剣を机の上に置き、次は長い方の剣を手に取る。こちらは女性から託された剣だ。

(次元だろうと神の力だろうと切断する剣……)

 その剣を実際に振るって行った事を思い出し、それだけでかなり異質な剣だと再認する。

 例えばフォルトゥナが神に乗っ取られた時など、剣でフォルトゥナを斬ったというのに、神の力のみを切断してフォルトゥナは無傷であった。

 実際のところは少し後遺症が残ってはいるが、それは神に乗っ取られた影響なので、やはり神の力だけ切断したと言えるだろう。少なくとも、外見上は無傷である。

 次に次元を斬った事。通常ではありえないその行為を、この剣は平然とやってのけた。それだけでも十分驚愕すべき点だが、ヒヅキは過去視で女性が剣を振るっていたと思われる場面も視ているので、おそらくこの剣は普通の剣と同じ事も可能なのだろう。その辺りの切り換えはよく分からないが。

 とにかく、それだけで短い方の剣以上に厄介な剣だろうことが容易に窺える。そして、そんな剣をヒヅキに託した女性の意図だが、ずっと考えているが、ヒヅキにはそれが皆目見当もつかない。

 しかしそれもそのはずだろう。ヒヅキは女性について何も知らないのだから。知っている事といえば、神と敵対していることぐらいか。

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