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テトラ24

 村への道は特に何かある訳でもなく、ただ平原が広がっているだけ。遮蔽物は先程通った山や遠くに見える山ぐらいで、見渡す限り何も無い。

 遠くの方に何か動くモノが在るが、四足歩行だと思うので、おそらく動物だろう。

 今のところ魔族の姿は無い。上空にも目を向けてみるが、やや雲量の多い青空が広がっているだけで、鳥さえも飛んでいなかった。

 そんなのんびりとした平原を1日と少し進んでいると、村が大分近くなる。しかしその頃には夕方も終わろうかという時間になっていたので、女性の提案で休憩する事にした。このままでは村に到着するのは夜になるので、念の為にそれを避けるためだ。現在はスキアの影響で目的の村も緊張が高まってきているらしいので、夜の来訪で変に刺激しない為という配慮らしい。

 それに納得したヒヅキは、村から離れた場所で野営をする事にした。といっても、背嚢から取り出した防水布を敷くだけだが。

 荷物を降ろして、敷いた防水布の上に二人して腰を下ろす。

 その後にヒヅキが水筒に魔力水を補充する為に、水筒に半分ほど残っていた魔力水を飲んでいると、ふと女性が視線をヒヅキの荷物の方に向けている事に気がついた。

 ヒヅキは魔力水を飲みながらも、視線だけで女性の見ている先を辿る。そうするとそこには、背嚢と一緒に置いた二本の剣が並んでいた。

(ふむ……)

 魔力水を飲みながら、その視線の意味を考えるヒヅキ

 置いてある二本の剣の内一本は、女性が大切に所持していたが何故だか託された剣。もう一本は少し前にドワーフの国でフォルトゥナが見つけた中途半端な長さの剣だ。

 窺うように女性を見れば、前者の剣を懐かしげに見ている様にも見えるし、後者の剣を興味深げに見ている様にも見える。もしくはそのどちらでもあるのだろうか。

(ドワーフの国で見つけた剣を女性が知っていても不思議ではないか)

 ヒヅキが魔族の国に来る前に居たドワーフの国。そこで剣を見つけた場所からそう離れていない場所に、ここまでヒヅキを案内した男が居た空間が在った。そして、その男について女性は何やら知っているらしい口振りだったのを思い出したヒヅキは、そんな事を考える。そして、であればいっそのこと尋ねてみるのもいいのではなかろうかと思う。

 一瞬の逡巡の後、ヒヅキは女性と剣の間を視線で1往復すると、一気に水筒の中身を乾してから、思いきって口を開く。

「何か気になるモノでも?」

 そのヒヅキの問いに、女性はヒヅキの方に顔を向けて微笑みながら視線を剣の方に戻す。

「あの剣、大事に扱っていただけているようですね」

「……ええ、そうですね」

 女性の言葉に、ヒヅキは一瞬言葉を詰まらせる。確かにぞんざいには扱っていないが、それでも大切に扱っていたかと考えると、少し返答に困ってしまったのだ。

 そんなヒヅキの様子に気づいているのかどうか知らないが、女性は気にせず話を続ける。

「それに新しい剣も増えているようですし。あれは地下で……えっと、今はドワーフの国の首都でしたか? で、見つけたのですか?」

「そうですね。偶然見つける事が出来ました」

「そうでしたか。まぁ、あれは違和感を覚えても不思議ではないですからね」

「その剣をご存知で?」

 懐かしむように紡がれた言葉に、ヒヅキは出来るだけ自然に問い掛ける。

「ええ、勿論。だって、その剣をあの場所に埋めたのは私ですからね」

「そうなんですか?」

 予想外の返答に、ヒヅキは僅かに驚きを滲ませて問い掛ける。それに女性は小さく笑ってから答えた。

「ええ。私には不要な物でしたから。剣で言えば、私が所持していた剣の方がずっと格が上ですからね。新しい剣は要らなかったのです」

「では、何故あの場所に埋めたのですか? それなりの剣のようですし、売ればそれなりの額になったでしょうに。もしくは捨てるなり誰かに譲るなりしてもよかった訳ですし」

 たとえ時代は違っても、それでもあの剣は結構な業物だとヒヅキは思った。それに不要であれば、捨てるなり譲るなりしてもいい訳で。なのにわざわざ封印するように地下に埋める意味がヒヅキには分からなかった。もしかしたらこの剣はそれだけの価値が在る物か、危険な物なのかもしれない。

 そう思いヒヅキが問うと、女性は困ったように小さく笑みを浮かべる。

「理由ですか。……実はよく覚えていないのですよ」

「は?」

 またも予想していなかった返答に、ヒヅキは思わず呆けたような声を出してしまった。

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