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テトラ18

 ただ広大なだけで何も無い平原を休むことなく移動すると、森から出た時に遠くに見えていた山に一日ほどで到着する。女性の歩く速度は結構速く、普段のヒヅキよりも少し速かった。

 山には木が生えていたが、葉が少ないからか何だか寂しい光景。道は一応出来てはいたが、獣道を拡げただけのようなモノで、ところどころに草が生えていてる。山自体はそこまで高くはないので、直ぐに越えられるだろう。

 そう思いながら山の中を進む。遠くからでは分からなかったが、山の中の地面はかなり凸凹としていて悪路のようだ。平らな場所が少なく、ろくに人の手が入っていないのかもしれない。

 女性の案内で獣道のような山道を進んでいると、頂上付近まであと少しといったところでヒヅキは足を止めると、別の方向に顔を向ける。

 ヒヅキが足を止めたのを察して直ぐに立ち止まると、女性は振り返りヒヅキが別方向に顔を向けている事に気がつく。

 そして女性も同じ方角へと顔を向けると、「ああ」 と小さく声を漏らした。

「何故あんな場所に?」

 女性の零した声を聞き、ヒヅキはそちらへ顔を向けると、首を傾げて問い掛ける。

「あれははぐれの魔族ですね」

「はぐれの魔族ですか?」

 どういう意味かとヒヅキが目で問うと、女性は軽く肩を竦めて説明を始める。

「魔族というのは基本的に少数の集団で暮らしているのですが、はぐれの魔族というのは、その集団から離れた魔族の事です。離れる理由はいくつかありますが、大体は何かしらの掟を破って集団から追放されたか、自ら集団を飛び出したか辺りでしょう。特に追放された者が多いので、見つけてもはぐれの魔族には近寄らない方がいいですよ」

「そうなんですか」

 女性の説明に頷くも、ヒヅキは気になるように再度視線を向けた。

 それを見た女性は、やれやれといった感じで息を吐く。

「……まぁそれでも、理由は様々でしょうが自ら出ていった者も居ますし、追放された子孫だって外には居るでしょう。国内にはそんなはぐれの魔族が寄り集まって形成した村もありますから。魔族というのはあまり集団で生活することを好みませんが、それでも数名程度の集団では生きていけないような者達です。魔族は能力的に高いのですが、偏りすぎて補い合わなければ生きていけない種族ですから」

 小さく息を吐くと、女性は話を続ける。

「それでもまぁ、ある程度長く生きた個体の場合は生きる術というものを蓄えているものです」

「えっと、つまりはどういう意味ですか?」

「つまりは、あそこで弱っているはぐれの魔族は、おそらく集団を離れた者の子孫なのでしょう。それもつい最近親かそれに準ずる者を失ったばかりの」

「そうなのですか?」

「ええ。この辺りは食料に乏しいのですが、それでもない訳ではありません。まずは肉。これは動物を狩れるだけの技量が必要ではありますが、この辺りでは肉は御馳走です。あとは植物もありますが、周囲を見れば分かる通り、これもそう豊富ではありません。あとはこの木には果実が生っているのですが、これが味と栄養価があまりにも悪く、そのまま食べてしまうと体調も崩してしまうのです。向こうに居るはぐれの魔族の様に」

「だから最近独りになったと?」

「まぁそうですね。あとは知識がなかったという事で子孫の可能性が高いといったところでしょうか。それに、向こうの山に行けないぐらいには弱いか知識がないという事で、まだ若い魔族なのかもしれませんね」

「向こうの山?」

 ヒヅキは首を傾げる。女性が視線を向けた先は山の斜面が邪魔で先が確認出来ない。

「この先に山が在るのです。多少距離はありますが、そこにもここと似たような特徴の果実が生っているのです」

「ふむ?」

「その果実とここの果実を潰して同量混ぜた後に、それを数日置いて発酵させると、逆に栄養価の高い飲み物が完成するのです。この辺りではそれを毎日飲むようにしているぐらいには常識なのですが、それが出来ていないという事は、向こうの山に辿り着けないのか知らないのか」

「なるほど」

 女性の言葉に頷いたヒヅキは、はぐれの魔族の方へと目を向けると、考えこむように腕を組んだ。

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