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テトラ16

 ヒヅキは手元の仮面に目を落とすと、じっと視線を固定する。

 といってもヒヅキは人間なので、エルフ達の様に魔力を視ることは出来ない。それでもヒヅキは魔力には敏感なので、先程感じた魔力の流れを思い出し、何か記憶にないかと探っていく。

「……………………」

 だが、思い当たるモノは無い。全くない訳ではないが、それは魔法ではなかった。

(別次元に居る神と交信する為の魔法。であれば、おかしな事ではないのか? この魔法から別次元を覗いた時に感じたモノに似たものを感じたとしても。それに、そもそもこの魔法は誰が創ったんだ? 付与したのもだが、もしかしたら身代わり人形の様に何かしら特別な方法や血筋が関係しているのだろうか?)

 珍しい魔法というだけでも興味はあるが、しかしそれ以上に、疑問の方が大きかった。やはり別次元と繋げられるというのが興味深い。ヒヅキにとっては神の方はどうだっていいが、もしかしたら神が交信先だからこそ成せているのかもしれないと思えば、無視は出来そうも無いが。

 そんな事を考えながら仮面を観察していく。この仮面をこんなに観察したのは手に入れた時以来だなと思うも、その記憶は朧気。それにおそらく、今の方が細かく観察していると思った。

 仮面自体は、見た目以外は何処にでもありそうな物。魔法が付与されているなど言われなければ分からないし、他に目立った特徴も確認出来ない。

 そこまで調べたところで、ヒヅキはそういえばと思い出す。この仮面を発見した時には大きな魔鉱石が目の部分に嵌め込まれていたが、あれは何か意味があったのだろうかと。それと同時に、あの魔鉱石は何処にやったっけ? と記憶を探る。

 仮面を観察しながら思案しているヒヅキの様子を眺めていた女性は、ふと村があるという方角へと顔を向けると、そのまま数秒して僅かに眉を動かした。

(追い付かれた? いえ、これは別の方ですね。それも用件はこちらではない様子……はて、あちらに何かあったでしょうか?)

 遠くを透かしてみるように目を細めた女性だが、答えは得られない。だが、現在の神とは別口の存在なので、気にしない事にした。元々ちょっかいさえかけなければ無害な存在であるのだから。

 顔をヒヅキの方へと戻した女性は、未だに仮面を観察しているヒヅキに目を向ける。何を考えているのかまでは分からないが、それでも大分元の存在が薄くなっているのが解る。

 それを憐れむ気持ちがない訳ではないが、それが器として選ばれてしまったものの宿命だろう。ただ女性でも驚く部分はあった。

(あの内に秘めたる数は異常。それでいながら未だに壊れていないのですから、一体どれ程の器をお持ちなのか)

 普通ならとうに壊れていてもおかしくない数の存在を内に宿すヒヅキに、女性はそれを視る度に素直に賞賛を贈ってしまう。何故ならば、通常であればそもそも器に収める事すら困難な数なので、それが一瞬でも容れる事が出来るだけでも賞賛に値する数なのだから。

 そんな数を全て受け入れたうえで、壊れずに存在し続けているというのは、女性の知識には無い存在であった。だからこその賞賛なのだが、それももうそろそろ限界のようで、それが女性には残念に思えた。

(せめて最期は苦痛なく安らかに終わらせたくはありますが……今の情勢ではそれも難しいですね。そもそも器とはそういうものではありますが、今回のは少し事情が異なる訳ですし……)

 器という存在は、本来は浄化の役割を担う存在であった。しかしそれを歪め、ただの玩具にまで貶めたのが現在の神。その結果、浄化が進まず世界も歪み始めた。

 しかし神はそれすら愉しみ弄ぶ。長く愉しむ為とはいえ、自分は別の世界に避難して。

 それを止めようとしたモノも無論居たのだが、それが実を結ぶ事がなかったのは今が証明している。そして現在に至っていた。

 だからこそ、女性はヒヅキに目を向ける。正確には、その中に宿る本来ならば在るはずの無い力に。それはきっと希望の光なのだから。そして、それを女性は永い間探し続けていたのだから。

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