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テトラ12

 少しの間思案した女性は、ヒヅキへと視線を向けて困ったように口を開く。

「その石は確かに価値のある石なのですが、件の村では需要があまりないので買い取ってもらえるかは難しいところですね。買い取ってもらえたとしても安価での買取になるでしょう」

「そうなのですか」

「はい。その石はもっと人で賑わっているような場所でなければあまり価値はないですね」

 女性の話に、今度はヒヅキが難しい顔になる。買い取ってもらえるか怪しいような物では話にならない。かといって、何かしら交換出来る品が有る訳でもない。

「何でしたら私が出しましょうか? 通貨は十分持っていますので」

 ヒヅキが悩んでいると、女性がそう提案してくる。それはとてもありがたい申し出ではあったが、ヒヅキは女性に借りをつくってしまうのに抵抗を感じて悩んでしまう。

 しかし、悩んだところで他に代案がある訳ではない。だが、やはり女性に借りをつくってしまうのには抵抗を感じる。

 そうしてヒヅキが悩んでいると、それを眺めていた女性は僅かに小首を傾げて思案した後に、ヒヅキが何を悩んでいるのか思い至ったのか、小さく手を合わせた。

「もしかして、私の力を借りるのに抵抗でも感じているのですか?」

 単なる確認といった声音で女性が問うと、ヒヅキは何処か後ろめたい感じで小さく頷く。

 それを見て、女性はいつもの優しげな微笑みを浮かべると、別の案を提示する。

「では、貴方の持っている物の中から不用な物を出してもらえませんか? 売れるかどうか調べますので。それに、もしかしたら私が欲しい物もあるかもしれません。その場合は適正な価格で買い取らせていただきますよ」

 対等な売買であれば借りにはならない。言外にそう告げられたような気がして、ヒヅキは苦笑を口元に浮かべると、他に良さそうな案も思いつかなかったので、その場に防水布を敷いて、そこに背嚢から使っていない物を並べていく。

「ふむふむ」

 ヒヅキが防水布の上に物を置く度、女性はそれを手に持ち吟味するように観察する。最初は手に取っていいかヒヅキに確認していた女性だが、今は真剣な眼差しでヒヅキが並べる物を次々と手に取っていた。

 しばらくヒヅキが物を取り出し並べる音と、それを手に取り観察する女性の声のみが場に響く。

 そんな中、ヒヅキは使用していない物を取り出しながら、結構溜まっていたなと内心で思う。何度か整理したのだが、色々と収集していると直ぐに一杯になるらしい。これでも食料を中心に一部はフォルトゥナに預けたままなのだが。

 そうして使っていない物を並び終えると、女性は全てを観察した後に不用品のひとつを手に取ってヒヅキに問い掛ける。

「幾つか価値あるモノはありますが、これは何処で手に入れたのですか?」

 女性が手に持つのは、何かの儀式にでも使用しそうな奇怪な仮面。それを見たヒヅキは、何処だったかと記憶を探る。まだ記憶が残っているのであれば、答える事も出来るだろう。

「………………えっと、確か遺跡の中でしたね」

 思い出そうと記憶を掘り返していると、何処で見つけたのかを思い出す。それは最初に水晶の欠片を見つけた時に、小箱を隠すように飾られていた仮面だった。

 確か目の部分に大きな魔鉱石が嵌め込まれていたっけと、ヒヅキは思い出した仮面に目を向ける。最初は何故かどうやっても取れなかった魔鉱石だったが、いつだったか簡単に取り外す事が出来た。それはまるで役目を終えたようにも思えたが気のせいだろう。

 そんな仮面だが、風を送る際に扇ぐのには使えるので一応売らずにとってはいた。しかし、目や鼻や口の部分に穴が開いているので、扇いでも送られる風は微風だが。とはいえ、それはそれで都合がよかったりする。

 だが、そんな仮面も不用品である事には変わりないので、こうして並べたのだが、何故だか女性はヒヅキの返答を聞いて、改めて興味深そうに仮面を観察していた。

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