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テトラ10

 しかし、その圧迫感も一瞬で鳴りを潜める。

 女性が力を制御したのだろうが、それにしても一瞬で力を感じなくなったので、それだけで女性がウィンディーネも凌ぐほどの膨大な力を完全に制御しているのが解った。

 それを肌で感じて、ヒヅキはやはり自分では勝てないなと思ったものの、別に敵対するとは限らない。女性は終始ヒヅキには好意的なので、むしろ味方してくれる可能性の方が高いだろう。そうであれば、逆に頼もしくもある。

(それでもやはり脅威だが)

 しかしそれも、信頼している事が前提であろう。ヒヅキは女性をあまり信用していないので、力を借りたとしても背中を預ける事は出来ない。

(まぁいい。今は女性の力が戻った事を素直に喜ぼう。これで神へと対抗できる手段が少し揃ったのだから)

 離れていく女性の背に視線を向けながら、ヒヅキはそう考える事にする。

 それから移動を再開させると、黒い木を避けつつ先へと進む。やはり結界石があるからか、先へと進めどヒヅキ達以外には誰も何も居ない。

(ここで暮らせるのは植物ぐらいか)

 太陽光ぐらいしかない森の中に、ヒヅキはそんな事を思う。まだ森の深い部分だからか、風もほとんど吹かない。森を形成している唯一の植物である黒い木には、見た限り実のようなものは見当たらない。ヒヅキは時期のせいかとも考えたが、何となく違うような気がした。

 枝葉で天井を形成したり、実を付けなかったり、結界石や妨害魔法の中でも平然と育っていたりとと不思議な木だが、この森もあの男が言っていた創造主が創造したのであれば、何があってもおかしくはないのだろう。この森はあの通路を隠すのが目的のようでもあるし。

 それから何度か森の中で朝晩を過ごすと、やっと遠くに森の終わりが見えてくる。外に近づくにつれ木々の密度も低くなっていた。

「妨害魔法は人体には影響がないのですか?」

 ここまで何事もなく到着した事に、ヒヅキは女性へと問い掛ける。魔法の中に居るのは何となく解ったが、何か身体に支障が出るといった様子は無い。魔法も普通に行使出来るし、疲れやすいとか身体が重いとかもない。

 しかし、外敵からの侵入を阻む魔法である以上、何かあっても不思議ではないがとヒヅキは思う。なので、もしかしたら幻惑のような類いの魔法なのかもしれない。

「特定の道を通れば影響はありませんよ。その他ですと命の危機も珍しくはないでしょうが」

 だがヒヅキの予想は、女性の軽い調子の答えによって否定される。

「特定の道、ですか?」

「ええ。その道を知る事が出来なければ普通は行き来出来ません」

「……そうなのですか」

「ああですが、道は常に変化していますから、1度通ったからとて安全ではありませんので、次ここに来るときはお気を付けください」

「忠告感謝します」

 女性に礼を言いながら、ヒヅキはここに案内した後に一方的に道を閉ざした男に疑念を抱く。

(この事を知らなかった? それとも閉じ込めるか殺す為? もしくはこうなる事を知っていたか、そもそも女性の言葉が正しくないか……)

 可能性というのであれば、どれもある事だろう。ヒヅキの印象では、人形だという男も、案内の為に前を歩く女性も、どちらもヒヅキの敵といった感じには思えなかったが。

 なので、これで罠に嵌められたのだとしたら、自分の落ち度かと思う事にした。それに両者とも敵ではないのであれば、両者が協力関係にあるのか、もしくは男がこうなると知っていて連れてきたという事だろう。

 結果としてもうすぐ外に出られるのだから、その考えが正しいと思う事にした。疑ってばかりでは疲れてしまうだけだし、これといった証拠もないので、そう思ってヒヅキはその考えを横に措く。今はとにかくこの窮屈で不可思議な森の外に出たかった。

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